なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

BLACK FLAG『Damaged』『My War』『Family Man』『Slip It In』

パンク/ハードコアの枠内だけはでなくロック史にもしっかりと刻まれてしかるべきLAのバンド、
BLACK FLAGの4タイトルのCDが歌詞/和訳と帯を付けた日本仕様でリリース。
第一弾発売である最初の4作のライナーを約4000字ずつ書かせてもらいました。

“詳しいプロフィールは前作のライナーを読んでほしい”みたいな書き方は怠慢だから、
1枚だけ買ってバンドをよく知らない人でも基本的なことがわかるように書いています。
でもむろんすべて別内容で思い出話の類は一切無しです。


KKCP-230_⑤ジャケット写真
『Damaged』
81年リリースのファースト・アルバム。
フック十分の曲ばかりでBLACK FLAGのオリジナル・アルバムの中で最もパンク・ロック色が強いが、
70年代のパンク・バンドとは明らかに違うキナ臭イヘヴィ・サウンドがたまらない。
後のBLACK FLAGとは違ってキャッチーな曲やファニーな歌詞も多かったことも、
当時のバンド内の状況と方向性を物語っている。
問答無用のマスターピースの約35分15曲入り。

KKCP-231_⑤ジャケット写真
『My War』
84年リリースのセカンド・アルバム。
ファンやシーンに対して宣戦布告したかのような恐るべき異色作第一弾である。
パンク・ロックの体裁を成している前半も、
背負っているものが重すぎて加速できぬ息苦しさがたまらない。
70年代のBLACK SABBATHの影響をフリーキーに拡大した長い曲3連発の後半は、
レーベル・メイトだった“パンク・ドゥーム・ロック・バンド”SAINT VITUSとの接点も見えてくる。
でもスタイル重視のドゥーム・メタルのムーディな暗黒ではなく、
ほんとに閉塞している約40分9曲入り。

KKCP-232_⑤ジャケット写真
『Family Man』
84年リリースのサード・アルバム。
BLACK FLAG初心者不可!と言えるほどの異色作第二弾であり問題作である。
前半は他のメンバー不参加でヘンリー・ロリンズ(vo)がスポークン・ワードを展開し、
“鬱屈時代”のロリンズの言葉と語り口がキョーレツだ。
真ん中にメンバー全員参加の9分強の曲をはさみ、
後半は演奏陣だけのインスト・ナンバー。
ジョン・コルトレーンをはじめとするジャズの影響はグレッグ・ギン(g)の演奏に表われているが、
他のアルバムにはないツー・ビートも入れていてBLACK FLAG史上最大の加速度のロックである。
ファンだろうが誰だろうが一切媚びないBLACK FLAGのアティテュードも一番露骨な約34分11曲入り。

KKCP-233_⑤ジャケット写真
『Slip It In』
84年リリースの4枚目のアルバム。
仲良しこよしではないからこそピリッとした緊張感が抜けない脂の乗った充実期である。
演奏者としてもソングライターとしても、
後期のBLACK FLAGを支えたビル・スティーヴンソン(ds)とキラ・ロースラー(b)の色が
いい感じで表れたスタジオ録音盤だ。
当時のUSハードコア・シーンのバンドには数えるほどしかいなかった女性のキラからは、
フェミニストとしての葛藤の鼓動も早々と聴こえてくる。
『My War』のスロー・ヘヴィ・チューンと『Family man』のジャズの要素を含みつつ、
『Damaged』についで躍動感のある“パンク・ロック・ナンバー”が目立つ約40分8曲入り。

★★★★★★★★★★

4タイトルすべてジャケットとCDは現在出回っている米国盤と同じだ。
リリース元のSST Recordsの主宰者でBLACK FLAGのリーダーのグレッグは、
80年代初頭のトラブルを踏まえているのかオリジナルの形でのリリースにこだわっているようだ。
“手を変え品を変え”のリイシューが当たり前の音楽業界の現況を考えると
その頑固(=hardcore)オヤジぶりはたのもしくもある。
というわけでリマスタリングなどで手を加えてないと思われるから
(といっても当時発売したLPはもとより以前のCDとは随所で微妙に聴こえ方が違う気も……)
今発売される大半のCDと比べたら音量レベルが低いが、
ヴォリュームのつまみをいじって上げていくことで噴き出す音の軋みに身震いがする。
この軋みは単なるノイズじゃない。

どのメンバーが書いたものでもBLACK FLAGの歌詞はさほど難しい言葉も言い回しも使ってないが、
やっぱり和訳が付いているとありがたい。
音だけ楽しんで歌詞を気に止めてなかった人でも、
歌詞の和訳を読むとまた新しいBLACK FLAGのイメージがふくらんでくると思う。
ヘンリー・ロリンズが書いた歌詞が増えていくことによって
BLACK FLAGのキャラクターも変化していったこともよくわかる。

反政府みたいなこと言ってもすべておのれに返ってくるから痛み苦しむわけで、
人間反対!みたいな歌詞は友川カズキにも通じる。
“メンヘラ・パンク”としては英国のRUDIMENTARY PENIや日本の奇形児が知られるが、
BLACK FLAGはもっと早くて肉体的だった。
鳩山由紀夫よろしくの“友愛パンク”や最近の“同好会ハードコア”に違和感を覚える方もハマるだろう。
BLACK FLAGというバンド名にはアナーキズムも象徴という意味も込められているのだが、
個人的にはCRASSに大きな影響を受けたとはいえ、
最近はBLACK FLAGに内包するアナーキーの精神性の方がしっくりくるしリアリティを感じる。
そのへんのことは項を改めたい。


★ブラック・フラッグ『ダメージド』(キング KKCP 230)CD
★同『マイ・ウォー』(同 KKCP 231)CD
★同『ファミリー・マン』(同 KKCP 232)CD
★同『スリップ・イット・イン』(同 KKCP 233)CD
すべて歌詞とその和訳付でビニール・パッキングされている。
BLACK FLAGのアートワークの特徴であるカラフルなジャケットの色に合わせた大型の“帯”付。


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コメント

ブラックフラッグ!

こんにちは!
ライナーに思い出話はないんですね。
このブログで、ぜひ思い出話を書いて欲しいですね。
行川さんのようにプロで長くお仕事されている方は、メンバーとのプライベートな交流も深かったりすると思いますが、そんなエピソードも知りたいです。

こんにちは

行川さん、いつも拝見しています。
4枚まとめてネット通販で買い、今日届きましたが、行川さんが書かれているように輸入盤CD+「帯」、ライナーだったんですね。ネット上で明記がなかったので国内プレスだと思ってました。
国内盤化したこと自体は賞賛したいと思いますし、行川さんのライナー+歌詞対訳で十分に価格分の価値はありますが、通販サイトは一応この点明示してほしかったです。
それにしても、輸入盤の、プラケースの上部をまたぐ剥がしにくい、破れやすいシールは本当にイライラします。こんなガサツなパッケージ作りをしているから、海外ではフィジカル・ソフトが急速に衰退するんだ...とか思いますが、行川さんはどう思われますか。
ともあれ、作品の内容自体はもちろん別の話で、恥ずかしながら私はこれまでファーストしか聴いたことがないのですが、これから行川さんのライナーを読みながら他の3作品を聴くのが楽しみです。

行川さんのライナー好きです。メタル者なのでそんなに読む機会は多い方ではないですが。
V.O.D.が印象に残ってます。

思い出話 etc の下りはA島氏への皮肉でしょうか?w
あの人のライナーはひどいですからね・・・
おっと、行川さんに迷惑がかかると行けないのでこの変位しておきますか。

書き込みありがとうございます。

>雅さん
 ライナーを求める方の大半はバンドと周辺情報だと思いますし、特にBLACK FLAGみたいなバンドはアルバム一枚でもネタたくさんありますから思い出話を書いたら字数が足りません。
 ブログで思い出話はいいかもしれません。

>Fripperさん
 今回の日本発売はライナーで関わっている責任もありますから、 パッケージ全体での細かいところまで伝えたかったです。最近はパンクに限らずインディ・ロックものでも、輸入盤+ライナー+帯の仕様が増えていますね。この御時勢だからでもないですが、たまたま昔のVA『No Nukes』のCDを昨日取り出して聴いて、ワーナー系の大メジャー盤なのですが、輸入盤+英文長文ライナーの和訳+帯の仕様でした。昔からあるんですね。
 プレスに関して、SSTは90年代初頭に別の日本のレコード会社が国内プレスを申し出たときも断って、破談したという話も聞きます。DISCHORDもそうですが、長いこと自分の手でやってきたこともプライドもあるでしょうし、他の会社の介在で作品が変わりかねないことも頭にあるのでしょう。実際マスタリングの問題なのか、CDでもオリジナル盤と日本盤で音が違うことも多いですから。
 バーコード付の米国盤のプラケースの上部のアレは、アバウトなアメリカンならではの発想だと思います。アメリカも両極端というか、HYDRA HEADみたいに凝るレーベルもありますね、特にLPのパッケージに。ぼくは、はがさないで、開くことができるようにシールを切るだけにして残しておくこともあります。
 糊付きのビニールではない密封パッケージも含めて今回の日本発売は丁寧な作りだと思います。

>名無しさん
 特定の人に対してではなくて、色々なジャンルに多いです。まあVODのライナーで書いた「俺俺ライナー」のパターンも、根が似たような意識だと思うのでライナーでは控えています。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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