なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

CRASS『Yes Sir, I Will』

CRASS『Yes Sir, I Will』


最も政治的だった英国のパンク・バンドのCRASSが83年にリリースした5作目のアルバム。
ジャケット等の仕様を変更した“The Crassical Collection”シリーズでの登場である。
オリジナルLPでは1枚もののアルバムだったが、
ボーナス・ディスクが追加されている。


ディスク1の本編は、
LP時代だとA面とB面で1曲ずつという印象で実際はアルバム全体で1曲だろうが、
CDだと7トラックに分かれていて今回は各々に“曲名”も付けられている。
やや組曲風だが、
やはりほとんど一続きだ。

CRASS流のパンク・ロックをベースにしつつ非常にカオティック。
他のアルバムでは意外となかった男女ほぼ均等のヴォーカルで構成されているのも特徴。
そういうところにも総力戦ということが見て取れる。
音楽的にもそれまでのCRASSの凝縮であり結集であり収斂である。
メンバー全員が次々とアイデアを放り込んでいったみたいなサウンドで、
メチャクチャになってないのはリーダーのペニー・リンボーのドラムが止まってないからだろう。
前半部で一部“ロマンチックなパート”を設けている他はスピード感がキープされているのだ。
音楽的にすごく面白い。

2009年に施されたリマスタリングの効果かLPよりも分離がよくて、
“どういうことをやっているのか”という音楽的テクスチャーが見えてくる。
よく耳を傾けると色々と面白いフレーズを演奏していて、
たとえばちょうどこのアルバムをレコーディングしている頃にリリースされた
NEW ORDERの大ヒット曲「Blue Monday」みたいなベース・ラインも聞こえてきた。
インプロヴィゼイションのパートもあるのかもしれないが、
緻密に作曲された曲ではないかとも思われる。
みんなとひとつになってコブシを振り上げてノることはできない。
立ちすくむか、
一人で踊り死ぬか、
頭を抱えて考え込むか、
あなた個人の勝手だ。

ノンストップで連射される激アジテーションの言葉は単純明快ではなく
例によって色々と引っ掛けている。
けどEXPLOITEDの『Let’s Start A Warとは違った切り口で
レコーディング前年のフォークランド紛争にも焦点を当てたアルバムでもある。
そういう重苦しい流れもあったのだろう、
「どんどんユーモアがなくなっていった」とスティーヴ・イグノラント(vo)が語っていたように、
81年頃までのハジケた音はあまり聞こえてこない。
様々な面でもう余裕がなくなってきていた。
痛々しくすらある。

だが、やりたい音と言いたいことを全部ぶちまけたようで痛快だし、
あくまでも外に向かっているのだ。


ボーナス・ディスクは2002年に“ジャズ・リミックス”されたものを収めている。
ペニーのプロデュースで、
CRASS周辺のバンドが録音したサザン・スタジオの今のエンジニアで、
本シリーズをリマスタリングしているハーヴェイ・ビレルのリミックス。
リミックスといっても、作るのも聴くのも時間の無駄としか思えないテクノちっくなやつじゃない。
聴いていって本編と大差ないじゃないか……と思っていたら中盤から異変が起こる。
ギターがあまり聞こえなくなって、
サックス、アップライト・ベース、バス・クラリネットが入ってくるのだ。
ドラムとヴォーカルと管楽器だけに解体されると、
なるほどフリー・ジャズからもインスパイアされたのだなということもわかる。
終盤はまたノイジーなサウンドも戻ってくるのであった。
CRASSの音楽性の一面が浮き彫りにされて興味深い。

“最後の一言”が本編と違うところも聴き逃さないように。


★CRASS『Yes Sir, I Will』(CRASS CC05)2CD
ディスク1は44分7曲入り、ディスク2は46分8曲入り。
例によって小箱の中に、
ペニーのライナーや歌詞などがビッシリ載ったアート性も高い64ページのブックレット、
オリジナルLPのポスター・ジャケットのミニチュア復刻、
2枚のCDが収まった二つ折りの紙ジャケットが入っている。


スポンサーサイト

コメント

まだ高校生の頃、先輩が車の中でCRASSの『PENIS ENVY』をかけてたのがCRASSとの出会いでしたが、もの凄く衝撃を受けました。それ以来せっせとバイトしてはCRASSのレコード買い集めてました。『あれ?ヴォーカルが女じゃない?』って思わずジャケを見直したりしてました。『Yes sir iwill』は当時はピンとこなかったのですが何年か後になってやっぱりカッコいいなって思いました。CRASSのコレクションシリーズはまだ2枚しか買ってないんですが今回のボーナスCDの『ジャズリミックス』はかなりソソられます。ぜひとも聴きたいですね。
それとEVEが今やっている音楽を友人の知り合いが聴いたそうなんですが『ジャズやったよ』との事でした。
不確かな情報でスミマセン・・・。

chumbaさん、書き込みありがとうございます。
CRASSはレコードによって作風が違いますからね。
ぼくはシングルの「Reality Asylum」が最初だったのですが、B面に「Shaved Women」が入ってなかったらアルバムに接するのも遅れたかもしれません。
『Yes Sir I Will』はCRASSを最初に聞く人向けではないかもしれませんが、初期作品から順に聞いていくとこうなったのもなんとなく納得できるような。ジャズ・リミックスは曲が解体されているのでマニア向けとも言えます。
Eve情報もありがとうございます。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/479-443e9bb7

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (291)
映画 (254)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (48)
PUNK/HARDCORE (413)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (95)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (121)
FEMALE SINGER (42)
POPULAR MUSIC (25)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん