なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『犬と猫と人間と』

猫


ヒトの都合でいつ死に直面するかわからない犬や猫の現状を描きつつ、
人間を見つめ直すドキュメンタリー映画である。


捨て猫を世話してきた“猫おばあちゃん”が、
映画『あしがらさん』の舞台挨拶のため劇場に訪れていた飯田基晴監督に、
「動物たちの命の大切さを伝える映画を作ってほしいの」と直訴。
あらためて会った際に満期を迎える生命保険のお金を資金として出すと言われ、制作の運びとなる。

「人も好きですけど、人間よりマシみたい、動物の方が」
「人間が地球上で最も残酷で、最も嘘つきで、見栄っ張り」といった当事者の方々の言葉が、
少なからず共鳴するぼくのはらわたに突き刺さる。
動物界で最も進化の程度が高いとされる人間の無責任性も浮き彫りにされる。
映画全体のトーンはアットホームでもあるが、脳天気なヒューマニズムめいた匂いとは一線を画す。
冷厳な現実に直面している方々に真正面から向き合っているだけに、
ナイーヴな感傷を超えてネクスト・レベルに進む意志に貫かれている。
だから恐ろしくストロングな映画だ。

まず多岐にわたる様々なポジションの方々が登場している点を特筆したい。
千葉県の行政の収容施設、
神奈川県の民間の保護施設、
行政と民間の連携が行なわれている兵庫・神戸の動物管理センター
かつて“犬捨て山”と呼ばれた山梨県の収容施設などの様子が映し出される。
2006年に“崖っぷち犬”でメディアが大騒ぎしていた一方で
同じ徳島県では処分施設反対の近隣住民の声に耳を傾けた苦肉の策の“殺処分システム”が明かされ、
同時に子供たちがお小遣いを出し合って子犬を育てるシーンも捉えている。

個人的には東京・多摩川の周りで捨て猫の世話する夫婦のライフスタイルが特に実感できた。
河川敷に住む野宿者の方々が“同じホームレス”の犬と猫の面倒を見ている光景も映し出す。
多摩川の川辺は高校生ぐらいまで遊び場だったし、
当時から猫を捨てる場所として有名だったからである。
親と多少軋轢を起こしつつ子供の頃にずっと猫を飼っていて、
捨てるのは忍びないために子猫が増え放題で野放しにしていたことの是非も考えてみた。

施設によっては致し方なく生かすか殺すかの選別を迫られる所もある。
増えすぎないように罠で猫を捕らえて不妊手術を行なうシーンも公開。
断腸の思いで行なわれる妊娠中の猫の堕胎手術も披露される。
猫は睾丸や卵巣/子宮などを取り出すから単純に比較はできないが、
いずれも強い立場の人間の都合による断種であるから、
ハンセン病の方々のことも頭をよぎった。

奮闘している当事者の方々のもとには少なからず中傷の声も届くらしい。
でも、誰もが間違ってない。
時に否応なく手を汚しつつ試行錯誤を繰り返しながら一人一人が最善の道を模索している。
机上の空論で綺麗ごとを言うような理想にもなってない“空想”を戒める声も飛び出すが、
ぼくは同意する。
ポリティカルなパンク・バンドをやっている人と飲んで動物云々の話に及んだとき、
いわゆるアクティヴィストの彼女がペットという言葉を非難していたことも思い出した。
現実的に逃れ得ぬ支配/被支配の関係をまず受け入れないと先に進めない。
なにより出演者の方々が一様に感情を抑えたクールな話し方なのも妙に説得力を強めている。

終盤には、野良猫という言葉が通じないほど“整備”されたロンドンの状況を映し出す。
現実問題として殺処分も避けられない葛藤は日本と同じだが、
自然な流れで“動物の権利”を主張する英国の団体も登場。
CRASSやFLUX OF PINK INDIANSやCONFLICTといったアナーキスト系のパンク・バンドや、
ライヴDVDにショッキングな映像を加えたモリッシー(元The SMITHS)らが出てきた土壌も見て取れるし、
賛否はともかく“動物間格差”とも言える食肉や動物実験の問題にも多少言及。
ただ、それらよりも殺処分等の問題は意外と埋もれがちだけに今回ぼくも色々考えさせられ、
一冊の本が書けそうなほどのインスピレーションを受けた。

そしてさらに話は広がり、とても残念な話を交えつつ“遺志”を受け継いだラストになっている。

犬

むろんヘヴィなシーンも多い。
試写会のときに近くで見ていた女性は終始ハンカチで目を拭っていた。
でも、愛護協会で保護している“きかん坊の犬”の成長過程をフィーチャーするなど、
笑わせながらホッとさせてくれるシーンも随所に挿入。
救われる。

監督自身が行なっているナレーションもかなりがポイント高い。
話を訊いた相手に対して時に反発を覚えつつ気持ちを感じ取ろうとするまっすぐな姿勢が表われ、
朴訥ゆえに天然のユーモアも漂っている。
動物云々に限らず親にもわからない言葉で論破しようとするような活動家体質の人とは次元が異なり、
子供やお年寄りの目の高さで語っている。
言葉も語り口もびっくりするほどやさしい。

約120分。
多角的な視点で捉えるためには必然的なボリュームだし、
よくぞこれだけのナマの“情報”を凝縮して盛り込んだと思う。
時間の長さを感じさせない編集も秀逸である。


10月からユーロスペースにてロードショー、他全国順次公開予定とのことだ。



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コメント

あーあ

自分の知識の広さをひけらかそうとして、かえって馬脚をあらわしてますね
正直もうちょっとマシかと思ったのですが、がっかりしました。
あまり無理せずに、自分の丈にあったパンクハードコア解説でもしてた方がいいんじゃないですか?

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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