なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

井上侑 at渋谷gee-ge. 8月7日

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1987年8月9日愛媛県松山市生まれで東京都練馬区育ちのシンガーソングライター、
井上侑の“LOVEPOTION”と題されたコンサート。

昨年も147本のライヴを重ねることで鍛えてきて細身の見た目とは裏腹にタフな女性である。
この晩は6月リリースのアルバム『LOVEBIRD』に参加した石井マサユキ(g)と榊原大祐(ds)を含む
一夜限りのスペシャル・ワンマン・ライヴだ。
ちなみにTICAでの活動で知られる石井はCHEMISTRYやハナレグミ、元ちとせなどのバンド・マスターも務め、
『LOVEBIRD』ではベースも演奏した他に曲のアレンジや音のプロデュースもした奇才である。

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『LOVEBIRD』のジャケット(一番上の画像)の撮影時のワンピースのブランドである
LOKITHOが新しく作った衣装を着て井上が登場。
いつものように裸足で電子ピアノを弾き語るところはさりげなくワイルドな井上だが、
落ち着いたデザインの黒のワンピースが大人を演出していたし、
それがまた非常に似合っていた。
『LOVEBIRD』で一皮も二皮も剥けた井上侑がそこにいた。

もちろんリュックに熊のぬいぐるみを付けるような子供っぽいところは随所で顔を出し、
井上真那美(チェロ)とのデュオの序盤では
「チョコレート」「さようなら」といったウブな曲が中心だった。
井上独演の第二部はCD購入やライヴ来場の特典のCD-R等で発表したレアな曲をやったが、
アドリブで歌詞を入れていくところはファニーだし
一曲ごとに明かしたエピソードはじめとしたMCも無邪気
(けどMC嫌いなぼくでも楽しませるのだから天性のエンタテイナーと言える)。
そして一人弾き語りコーナーの最後に披露した
井上が独自で行なっている“支援”の大震災チャリティの曲「あなたの街へ」は、
すべてを包容する人間・井上侑のスケールの大きさを感じた。
その流れのまま一段と成長した姿にぼくが息を呑んでいるうちに後半に突入する。

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この晩のメインと言える後半はまず井上と石井マサユキ(g)のデュオ。
まもなく井上が一旦引っ込んで、
前述した榊原大祐(ds)と井上のライヴでお馴染みの日高真夢(b)と石井でインストを演奏し、
『LOVEBIRD』のジャケットのワンピースに衣装替えして井上再登場。
『LOVEBIRD』の曲中心のここからぼくは目が覚めた。
井上にはCDアルバムに入れてない名曲もたくさんあるが、
彼女を引き上げた『LOVEBIRD』の曲は格別なのだ。

特に「会いたい」「君のシチュー」「Colorcorn」「東口で」といった“手拍子が打ちにくい系”の曲、
つまりローラ・ニーロや70年代のジョニ・ミッチェルといった北米の女性シンガーソングライターや、
Hall & Oatesを井上流にポップ展開したかのような曲は、
スリリングかつエキサイティングでもあった。
そういう洋楽を聴かずにいい意味で本格的な洋楽ポピュラー・ソングを日本語でやっており、
ユニークなピアノのリズムと線が細めながらもダイナミックな歌唱にゾクゾクしたのであった。

個人的には3年前にたまたま初めて観たとき以来の緊張感あふれるステージで、
引き締まった空気感が井上の歌を研ぎ澄まされたものにしていた。
その一因は静かに井上を盛り立てたスペシャルなバンド・メンバーたちだろう。
特に終始飄々として時折愛好を崩して弾く石井は、
能ある鷹は爪を隠すとばかりに少ない音数で曲をふくらませていた。
寡黙にして雄弁なやわらかいギターを弾きながら
ステージでもプロデューサーとして井上を見守っているようであった。
このメンバーで是非またやってほしいと思ったのはぼくだけではないだろう。

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目を閉じているのか薄目を開けているのか不明だが、
歌の世界に没頭しまくっているのか歌うことがうれしくて楽しくてしょうがないのか、
顔をくしゃくしゃにしながら弾き語る井上はますますイイ顔をしていた。
ぼくが知る限り必ずしもオフステージとオンステージのノリが同じではないように思える井上だが、
ステージでは確実に解放されている。
完全にハジけているのだ。
歌の世界に選ばれたとも言えるほど歌によって加速する。

だから、いくらわずかばかり大人っぽくなったといっても特にステージでは容赦なく愛嬌がこぼれおちる。
この2日後に迫った誕生日の前祝として
アンコール前に特製バースデイ・ケーキを手渡されてからは特に饒舌になる。
2年前のライヴでのバースデイ・ケーキ代がライヴ会場限定販売のCD-Rの売り上げの中から引かれていた、
というディレクターに怒られそうな裏話まで暴露。
おちゃめなんである。


たおやかでありつつ骨っぽくすらある。
ぼくはネクスト・レヴェルに進んだ井上を観た。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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