なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

BLACK FLAG『The First Four Years』『Live ‘84』『Loose Nut』『In My Head』

パンク/ハードコアとしてだけでなくロック史にもしっかりと刻まれてしかるべきLAのバンド、
BLACK FLAGのCDが歌詞/和訳と帯を付けた日本仕様でリイシュー。
第二弾発売である4作のライナーも約4000字ずつ書かせてもらいました。
みなバンドをよく知らず1枚だけ買って人でも基本的なことがわかるように書いたと同時に、
むろん第一弾分も含めて全部別内容です。


KKCP-236_⑤ジャケット写真
『The First Four Years』
83年リリースの初期音源集。
78年から81年の前半にEPやシングル、オムニバス盤で発表した曲をまとめてある。
ヘンリー・ロリンズ(vo)が81年の夏に加入する前のシンガーが流動的だった頃の記録だ。
だらしない歌い方にもかかわらず従来のパンク歌唱よりワイルドで
USハードコア・ヴォーカル・スタイルを開拓したキース・モリス(後にCIRCLE JERKS)。
“BLACK FLAGのナンバーワン・シンガー”と推すファンも多いチャヴォ。
ベーシストとしても精神面でも前期BLACK FLAGを支えて1曲だけ歌ったチャック・ドゥコウスキ。
本来はギタリストであるにもかかわらずリード・ヴォーカルをとって野生児ぶりを発揮したデズ・カデナ。
4人がリード・ヴォーカルを取っているにもかかわらず散漫にならずビシッ!としているのは、
この頃から縦横無尽にアナーキーなリーダーのグレッグ・ギン(g)のギターが荒くれているからだ。
最初からパンク・ロックの異端でありハードコアの異形だったのである。
プリミティヴなパンク・アティテュードの歌詞も含めてパンク・ロック色の強い名曲だらけだし、
ツー・ビートのハードコア・パンク・スタイルとは一線を画すUSハードコア黎明期の熱量むんむん。
『Damaged』と共にBLACK FLAGの聴き始めに最適の一枚で、ほとんどが1分前後の約26分16曲入。


KKCP-237_⑤ジャケット写真
『Live ‘84』
84年8月に録音されて当時カセットのみで同年末にリリースした約76分19曲入りの初のライヴ作品。
世に出すことを想定してしっかりしたレコーダーで録ったものだから音質は完璧だし、
過酷なツアーでタフになった後期BLACK FLAGのピークの名演をしっかり捉えているからオススメだ。
BLACK FLAGがこのステージでヴァイオレンスを働いているわけではなかろうが、
ここでもやっている代表曲「My War」の歌詞が象徴するに突き放したような空気感が充満。
スタジオ録音のテイクより生き生きしていて生命感いっぱいで曲のフックも鮮やかでキャッチーだし、
レコーディングでは内に向かっていた『My War』の曲も外に突き抜けているが、
みんなで一緒に盛り上がるノリとは違う。
誰もが独りであることを熱く冷ややかに突きつける。
楽しむだけで終わらない触発のライヴがBLACK FLAGだった。


KKCP-234_⑤ジャケット写真
『Loose Nut』
85年の春にリリースした5作目のオリジナル・フル・アルバム。
世で言うメタリックな音ではないが、
80年代初頭のBLACK SABBATHやパワー・メタルの楽曲と一瞬ニアミスしている。
それでいて意外とキャッチーな曲が多くパンク・ロック路線だから畸形は当たり前。
80年代頭ぐらいまではそうでもなかったとはいえ
ファースト・アルバムの『Damaged』リリース後のBLACK FLAGは、
既成のパンク/ハードコア・シーンから距離を置いていった。
そういったことは音楽にも表れてヘンリー・ロリンズのニック・ケイヴ趣味も滲み出し始めた。
初期USハードコア・バンドの解散をはじめとして当時は米国のシーンの転換期だったが、
元から自己保身の“パンク”にツバを吐いていたBLACK FLAGはますます我が道を行く方向性を取る。
メンバー全員がソングライティングを行なって歌詞も最も多彩なアルバムだ。


KKCP-235_(SST_045).jpg
『In My Head』
85年秋にリリースしたオリジナル・アルバムとしては6枚目の最終作である。
オリジナルLPは9曲入りだが、
解散後に出した同時期録音のEPの3曲も加えた約47分12曲入りで、
“これが最後のレコーディングだから書いた曲はすべて録ろう”と思っていたかのようなヴォリュームだ。
非メインストリームのメタルがBLACK FLAGから受けた影響がわかる曲、
フリー・ジャズを絡めつつリフ主導のロックの音でくっきりした曲、
後のドゥーム・ロックやオルタナティヴ・ロックのヒントになった曲、
ますますおかしいパンク・ロック・チューン、
というわけで90年代以降のハードコアすべての原型も未完のままここで鳴っている。
USハードコアを切り開いたバンドだが、
イノヴェイターだからこそ最期までフリークスだった。
本作収録曲の「Retired At 21」はグレッグ・ギン自身のことを綴ったのかもしれないし、
超精力的な創作活動と馬車馬の如くツアーを繰り返していたにもかかわらず当時過小評価だった
疲弊感と苦渋も充満してリアリティ十分だ。

★★★★★

今回の日本仕様のCDリイシューであらためて聴いてトータル3万2千字ライナーを書かせてもらって、
怪物BLACK FLAGの深みにますますハマった。
フリー・ジャズも応用した守りに入らぬ音楽的な探求も含めた自己向上心と錯乱した自己の解放、
永遠に見えるわけがないのが当たり前な“敵”に対する闘争心がCDからも浮かび上がる。
そうやってBLACK FLAGは
“善意の共犯者”になることを拒否するような非情なるコミュニケーションを続けた。

BLACK FLAGの後期の頃になると、
グレッグ・ギンはイアン・マッケイ(MINOR THREAT~FUGAZI)のことも良く言ってなかったという。
二人のベクトルの違いは明らかだから当然にも思えるが、
“ファミリー”みたいなのができた一方でシーンの“仲間”と馴れ合わずに孤立しようが我を貫き、
身内も含めて敵を作ることを厭わずにパンクの伝統を破壊する行動を取った点では“同志”だ。

独自の“労働者倫理”に貫かれた音楽やツアーへの取り組みは
ある意味“働かざるもの食うべからず”みたいで、
それがBLACK FLAG流の自主独立のハードコアだった。
必ずしも裕福ではないグレッグ・ギンの親から多少援助されていたとはいえ、
新品の服も買えないほど極貧ツアー生活を続けたBLACK FLAGは、
稼がないとやっていけない現実生活と幅広い視野に根ざしたアナーキーの精神だからこそタフだ。
自立心がなくヒモで生活していて反権力!と唱えられても土台はひ弱だし、
無責任と甘えの連続だと説得力は落ちる。
自分の手を汚して汗水垂らして動いてきた一種のハングリー精神。
今にまで至るグレッグ・ギンの頑固な姿勢がそういう経験で培われてきたことも伝わってくる。

まずは聴いて楽しみ、
さらに音からも言葉からも意識を感じ取りたい作品群だ。


★ブラック・フラッグ『ザ・ファースト・フォー・イヤーズ』(キング KKCP 236)CD
★同『ライヴ’84』(同 KKCP 237)CD
★同『ルース・ナット』(同 KKCP 234)CD
★同『イン・マイ・ヘッド』(同 KKCP 235)CD
日本独自のブックレットはしっかりした紙で作られて歌詞/和訳も読みやすいデザインになっている。
全体がビニール・パッキングされ、
BLACK FLAGのアートワークの特徴であるカラフルなジャケットの色に合わせた大型の“帯”付。


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コメント

BLACK FLAG!!

最近国内版のライブDVD(字幕付)も出てますね(まだ観てませんが)。
第一弾のシリーズでは持っていないファミリーマンだけ買いました。
しかし行川先生のライナー読みたいで
す。ファースト4イヤー等は何度も聴いていたのでレコード盤面が白くなって
しまってます。
行川先生はロリンズ以外のボーカルは誰が気に入ってますか?
ちなみに私はデズ・カデナが好きです。

Chumbaさん、書き込みありがとうございます。
あのDVDはもともと持っていますが、MCの内容は気になります。レコードが白くなるまで聞き込むのはすごいですね・・・さすがに最近はそこまでなるレコードはなくなりました。
ぼくもデズのヴォーカルが好きです。ロリンズ以外はほとんどシンガーとしてのバンド経験がない人がヴォーカルになっていますが、特にデズはもともとギタリストなのに歌ったという点で、ギターに連動したリズムとワイルドさを感じます。

あのDVDは前から出てたんですね。
知らなかったです。
80年代から現在までの色んなバンドのレコードを買ってますがやはりBLACK FLAGの凄さというか偉大さを再認識す
る事が多々あります。
行川先生のライナー読みたいので買ってみます。

Chumbaさん、書き込みありがとうございます。
『Damaged』までの曲はそうでもないかもしれませんが、特に『My War』以降のBLACK FLAGは簡単にわからないところが魅力ともいえますね。最初に聞いたのが『My War』だったということもあり、ぼくも困惑しました。でもNIRVANAをはじめとしてオルタナティヴ・ロック勢は後期からの影響が大きそうですし・・・でもグレッグ・ギンはそういうオルタナに対して複雑な気持ちを持っているみたいです。
音楽は単に楽しむだけのものでもないですしフラストレイションを発散させるためだけのでもない。考えさせる音楽も触発のための音楽もあるということ。こういう音楽が癒しになるのもご存知ですよね。
だからBLACK FLAGに触れるとどんどん言葉も湧いてくるのです。聴く音楽の幅や世界観も広がっていきますね。

ありがとうございます。

BLACK FLAG SPECIAL TALK EVENT

行川和彦様

キングレコードのSST販促担当の者です。
この度ブラック・フラッグにちなんだイベントを下記の通り開催します。
差し支えなければ、このままコメント欄で告知させて下さい。
何卒宜しくお願い申し上げます。

”BLACK FLAG SPECIAL TALK EVENT”イベント開催!!

8月10日発売のブラック・フラッグCD&DVD作品を中心に、ブラック・フラッグの魅力を存分に語ります!

【出演者】
 サイトウ"JxJx”ジュン(YOUR SONG IS GOOD)
 酒井大明(THE BITE/ex.BREAKfAST)
 KENJI RAZORS(RAZORS EDGE) ※映像出演

【日時】
 2011年8月28日(日) 20:00 スタート

【会場】
 ディスクユニオン下北沢店
 東京都世田谷区北沢1-40-7 TEL:03-3467-3231
 ※小田急線/京王井の頭線 下北沢駅下車 茶沢通り北沢タウンホール前

【参加方法】
 観覧フリー

【参加特典】
 オリジナル・ポスターをもれなくプレゼント!!

 ※ディスクユニオン下北沢店で8月10日発売の下記対象商品をお買い上げのお客様に「ポスター引換券」を
  お渡しいたします。この引換券をご持参の上、イベントにご来場戴きましたお客様に、終演後オリジナル
  ・ポスターをもれなくプレゼントします。

  ・CD 「ルース・ナット」 ブラック・フラッグ (KKCP-234)
  ・CD 「イン・マイ・ヘッド」 ブラック・フラッグ (KKCP-235)
  ・CD 「ザ・ファースト・フォー・イヤーズ」 ブラック・フラッグ(KKCP-236)
  ・CD 「ライヴ'84」 ブラック・フラッグ (KKCP-237)
  ・DVD 「ブラック・フラッグ ライヴ」 ブラック・フラッグ (KIBM-279)

 ※イベント当日に対象商品をご購入戴いたお客様にもオリジナル・ポスターを差し上げます。

【お問い合せ】
 ディスクユニオン下北沢店 TEL:03-3467-3231

【注意事項】
 *「ポスター引換券」は、紛失・持参忘れなどのいかなる場合においても、再発行できませんので、ご注意
  下さい。
 *「ポスター引換券」とオリジナル・ポスターのお引換えはイベント当日のみ有効です。後日のお引換えは
  お受けできません。
 *やむを得ない事情により、イベントの内容を変更・中止させて戴く場合もございますので、ご了承下さい。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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