なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

TRIVIUM『In Waves』

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山口県岩国市で86年に生まれたマシュー・キイチ・ヒーフィ(vo、g)が中心になって
99年に米国フロリダで結成された新世代ヘヴィ・メタル・バンドが約3年ぶりに出した5作目。
CARCASSや90年代のNAPALM DEATHやFEAR FACTORYをはじめとして
エクストリーム・メタルを緻密に仕上げたことで定評のある、
コリン・リチャードソンが中心になってプロデュースとミックスを手がけている。
EARACHE Recordsとしては異色のミクスチャー・ロック・バンドだったDUB WARの元ドラマーの、
マーティン“ジンジ”フォードが共同プロデューサーなのも興味深い。


ぼくの中ではTRIVIUMも間違いのないバンドで何をやっても間違いがない。
しっかりと音楽や自己表現に精魂を傾けているバンドだから根っこにブレはなく、
その時々の意識やフィーリングで様々な曲が生まれている。
『In Waves』も一般的にメタルのイメージからすればエクストリーム・メタル以外の何物でもない。
メロディック・デス・メタルとスラッシュ・メタルで武装し、
伝統的なヘヴィ・メタルで潤ったハードコア以降のメタルである。

マットと共にTRIVIUM創設メンバーだったオリジナル・ドラマーが去り
新たに加わったニック・アウグストがビートを打っているが、
グラインド・コア出身者だけにアグレッシヴなプレイで加勢している。
ドラマチックな構成で展開しつつダイレクトな曲が続くが、
民俗音楽を絡ませたり半ば遊び感覚で楽器をいじったりして細部で様々な音を挿入したのもポイント。
聴くたびに発見ありありだ。

ブラスト・ビートをブレンドした曲もやっているが、
獰猛なサウンドのうねりの中でキャッチーと言えるほどのフックを随所に設け、
80年代のMETALLICAも思わせる楽曲構成力を3~6分の間で実践しているかのようだ。
決してファン媚びを売っているわけではなく、
むしろ挑戦的なほどヴィジュアルも含めてリスナーに引っかかるフック十分で迫る。
現在進行形のメタル・シーンを見た上でそういった“フック”はマットも重視していた。
確かにとりわけアメリカから出てくるメタルコア系のバンドは、
いつも書いているように色々な意味で単細胞かつ力任せな“ヤリ捨て”サウンドが多い。
メタルコアに接触する音楽性のTRIVIUMとはいえ、
ギター・ソロも適度に挿入して自己完結せずに創造する。

IN FLAMESのところでも書いたが、
“生粋のアメリカン”ではなく母親がジャパニーズなマシューならではのバランス感覚と言えよう。
だが歩み寄るのとは違う。
世の中に切り込んでいくのだ。

2003年発表のデビュー作『Ember To Inferno』のライナーを書くときに初めてTRIVIUMを聴き、
“17歳でコレかよ!”とびっくりしたことを思い出したが、
さらにさらに進化&深化している。
“日本が誇る”なんて手垢にまみれたフレーズなんか超越して
どこの国どーのこーのなんか飛び越えてカッコいい。

ヴォーカルはダミ声の咆哮は吐かずにナチュラルな発声で歌ってスクリームする。
マットは歌詞の解釈をリスナーに委ねているが、
このアルバム制作において一番影響を受けたのは映画らしい。
特に自分の人生を変えるほどの映画『アンチクライスト』は自分の人生を変えるほどの作品だったらしく、
初めて映画芸術というものを理解したという。
そういった感じでジャケットも含めてトータル・アートとして仕上げられているアルバムだ。


また“スペシャル・エディション”には計84分のDVDも付いている。

まず“スタジオ・ライヴ編”では『In Waves』の4曲とそれ以前の4曲を披露。
ギタリスト(スクリーム)とベーシスト(歌唱)のバッキング・ヴォーカルの比重の大きさがわかるし、
伝統的なメタルともメタルコアとも違うTRIVIUMのメンバーの特異なヴィジュアルも堪能できる。
観客を前にしてないとはいえライヴ演奏であることには変わりないし、
ファンが惚れ直すこと必至なほどクールだ。

“『In Waves』のアルバム・メイキング・ドキュメンタリー映像”は約40分収録され、
適度に章立てされていて見やすい。
ジャケット写真のような自然をモチーフにしたアート映像や静かなアンビエント音楽も適宜挟み込み、
すべてモノクロで全体が落ち着いたトーンの映画のような仕上がりになっている。
メンバーや関係者の発言も興味深く、
NAPALM DEATHやBRUTAL TRUTHなどもタイトな仕事ぶりに対して賛否両論を吐いてきた、
コリン・リチャードソンの言動からは耳も目も離せない。
マシューをはじめとして、
ワイルドなインテリジェンスと伝統的なロックンロール・アティテュードとは一線を画す
ビシッ!とした姿勢も伝わってくる。
もちろん日本語字幕付だ。

さらにアルバム・タイトル曲「In Waves」のミュージック・ヴィデオもDVDで見られるのであった。


★トリヴィアム『イン・ウェイヴズ~スペシャル・エディション~』(ワーナー・ミュージック・ジャパン WPZR-30399/400)CD+DVD
日本盤は24ページのオリジナル・ブックレットの封入はもちろんのこと、
約69分18曲入りCDと計84分のDVDとの2枚組の3面デジパック仕様で、
SEPULTURAの「Grave New World」のカヴァーを含む5曲のボーナス・トラックが追加され、
歌詞の和訳付だ。
トータル・パッケージで素晴らしい。


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コメント

行川さんとも親交のある奥野高久さんは「TRIVIUMみとうなヘッポコバンドのレビューをワシに回してくるとは一体どがいな仕打ちですか? 適当でええですか? ええですか?」と言っていましたね。

岩国市は広島県ではなく山口県ですよ。

奥野は最低です。ぼくと同じく一回死んだ方がいい。ピャウ

タケさん、ご指摘ありがとうございます。
手直ししました。
心から感謝します。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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