なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『パレルモ・シューティング』

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『パリ、テキサス』(1984年)や『ベルリン・天使の詩』(1987年)などの作品で知られる、
1945年8月14日ドイツ生まれの
ヴィム・ヴェンダースの監督/脚本による2008年の映画。

主演の写真家フィン役は、
ヴェンダースの生誕地デュッセルドルフで結成されドイツで一番有名なベテラン・パンク・バンドの、
DIE TOTEN HOSEN(ディー・トーテン・ホーゼン)のシンガーであるカンピーノ。
“死神”フランク役は昨年他界した説明不要の“映画仕事人”デニス・ホッパー。
映画のカギを握る謎の女性のフラヴィア役はイタリアの女優のジョヴァンナ・メッゾジョルノ。
さらに本人役として、
音楽家ルー・リードと米国の女優/モデルで当時妊娠中8ヶ月のミラ・ジョヴォヴィッチも出演している。

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メインの舞台はドイツのデュッセルドルフ。
写真家のフィンは撮った写真をデジタル加工した鮮烈な作品で売れっ子になっているが、
片時も携帯を手離せないほどの忙しさ。
オープンカーで運転している時間を含めて、
アートなオルタナティヴ系ロック中心にいつでもイヤホンで音楽を耳に流し込み、
落ち着きをキープする日々だ。
そんな最中、
偶然ライン川で見かけた船に書かれていた地名のイタリアのパレルモにアンテナが指向し、
前述のモデルのミラ・ジョヴォヴィッチの撮影のためにもパレルモに出向く。
撮影後もパレルモに残ったフィンは古典的な殺傷手段の矢で狙われるが、
そんな最中に巨大壁画の修復の仕事に汗をかく運命の女性フラヴィアと出会う。
フィンが狙われ続けていることを直感したフラヴィアは、
彼女が唯一安心できる地のガンジにバイクでフィンを連れ出す。
だが、そこでフィンは自分に付きまとっていた“死神”と対峙するのであった。

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一種のロード・ムーヴィーとも言えるが、
主演のフィンが写真家として忙しすぎたからこそムズムズ生まれた妄想と夢想が交錯する。
死に憑かれているかのように夢と“うつつ(≒現実)”と幻覚が日々まぐわっている。
それはフィンが世に出す作品が、
デジタル技術による現実とコラージュの“ファック”ということと共振している。
と同時に旧来のアナログ写真の“ネガ”と“ポジ”も引っ掛けているように思える。
そんな“死”と“生”の間でティーンエイジャーのように苦悩するフィンの前で現れる水先案内人は、
“矢”で命を狙うデニス・ホッパー扮する“死神”と、
距離を置かれつつも運命の女性になるフラヴィア。
交わることのない二人が仕事に追われた写真家フィンを操って別世界へと誘っているようなところも、
見どころだ。

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言葉数が多くて含蓄のある知的なセリフの比重も大きい映画だが、
過剰な説明はない。
音速で突っ走る前半も落ち着いた趣の後半も、
欧州ならではの角張った建築に象徴される荘厳な映像力で持っていく。
映画を見ている最中に何が起こっているのかわからない時間にも巻き込まれるが、
終わってみれば“ああ、そうだったのか”と思わせるサスペンス。
気づかないうちにヴェンダースの仕掛けと罠に幻惑されていく。

本作のキー・ワードの一つは矢である。
人気者にもかかわらず出口無しの煩悩を抱える人間の代表として選ばれたかのように、
写真家フィンは矢に狙われる。
だが矢はプリミティヴな殺人“兵器”であると同時に、
矢はキューピッドにとって恋のサポートの“武器”にもなるという、
あまりにも純情で古典的なことに気づかされるロマンチックな映画でもある。

カンピーノは個人的にDIE TOTEN HOSENでの大メジャーなバントのイメージが強いが、
精悍な男をクールに演じ切っていてジェラシーすら覚える。
他の出演者も熱演だし、
特にフィンを制御する女性フラヴィアの突き放したような態度にゾクゾクさせられる。

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ほぼ非パンク/ハードコア/メタル系オンリーとはいえ、
ヴェンダース映画は個人的に馴染みの音楽がたくさん使われるからどんな作品でも突っ込まれる。
本作もPORTISHEADやそのシンガーのベス・ギボンズ、
ヴェンダース作品とは切っても切れないニック・ケイヴのバンドのGRINDERMAN
ボニー“プリンス”ビリーなど欧米のオルタナティヴ&アート系ミュージシャンの音楽がいっぱい。
知っている曲で判断する限り歌詞も映画のストーリーに考慮した挿入のようだ。
今もライヴの定番ナンバーでVELVET UNDERGROUND時代の「Satellite Of Love」の音楽とともに
ルー・リードが登場するシーンはシリアスな場面だが、
だからこそ試写会では“KY”にならないように失笑をこらえるのが大変だった。
なんせほとんど幽霊役なもんで。
巨匠でありながら何気なにお馬鹿なことが好きそうなルーならではの“名演”である。

ルーリード

むろんヴェンダースの映画だから音楽の入れ方はかなり極端で意識的だ。
ナチュラルな挿入とはいえノンストップDJみたいにあまり間髪無く自意識強い音楽が流れる前半に対し、
後半はクラウト・ロックを代表するCANの鍵盤楽器奏者で中核だったイルミン・シュミットの音が
緊迫感を増幅している。
ビートの効いた音楽がほとんど流れないその後半のサウンドは、
主人公のフィンが多忙な写真家であることから解放されて
フラヴィアとのクールなロマンスを発熱させる磁場にもなっている。
たとえベッドを共にしようがセックスはしてないように思える二人の関係はめちゃくちゃクールで、
“死が唯一の出口”とのたまう死神に抗う一番の一撃だろう。

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映像と物語と音楽で幾重もの層を成す謎めいた作り、
さすがヴェンダース。
“ああ楽しかった!”で終わらないが、
不意な終焉はドイツならではの硬質な叙情で期待が込められているように思える。
すったもんだで残った色恋に余韻を残すような仕上がり、
相変わらず心憎い。


★映画『パレルモ・シューティング』
9月3日(土)より、東京・吉祥寺バウスシアターにて3週間限定!爆音レイトショー!
他、全国順次公開。
http://www.palermo-ww.com/


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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