なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

DEATH『Human』(リイシュー盤)

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デス・メタルの創始者の一つである米国フロリダ出身のバンド、
DEATHの4作目がリリース10周年を記念して2枚組CDでリイシューされている。
DEATHもハズレがないバンドだが、
転換期ならではの音の軋轢がまぶしい『Human』は個人的にも彼らの中で最も好きなアルバムの一つだ。
デス・メタルとしてだけでなく
ヘヴィ・メタルとしてもロックとしてもグレイトな作品である。

リマスタリング効果もさることながら、
レコーディングしたモリサウンド・スタジオの設立者の一人であるジム・モリスが
今年1月にリミックスしているのがポイントだ。
もちろんテクノなリミックスできないから御安心を。
ぼくはこれまで『Human』をLPでしか持ってなかったから違いが目立つのもかもしれないが、
特にベースとドラムの音が大きくなって迫力五割り増しである。


グラインド・コア・バンドのASSUCKも手がけていたとはいえ
基本的にはフロリダの“デス・メタル仕事人”のスコット・バーンズが。
リーダーの故チャック・シュルディナー(g、vo)とプロデュースした本編は約39分9曲入り。
人事異動が激しいDEATHのこのレコーディング時のメンバーだがチャックの他は、
ポール・マスヴィダル(g)、スティーヴ・ディジョルジオ(b)、ショーン・ライナート(ds)。
ポールとショーンはCYNICの主要メンバーとしても知られ、
スティーヴはSADUSなどで活動している。

曲はチャックが書いているが、
プログレッシヴ・ロックやジャズ、民俗音楽も好む他のメンバーのテイストも多少活きていると思われる。
粘っこく不穏なデス・メタルからプログレッシヴな方向性に舵を切る分岐点になったアルバムだ。
もともとブラスト・ビート無しでブルータルなデス・メタルとは一線を画していたDEATHの、
内に秘めていたテクニカルな要素が自然に露呈し始めたわけである。
テクニカルといってもDEATHの場合はパズルみたいな曲の展開をするわけではなく、
音が刺々しくても曲は滑らか。
複雑なリズムのパートとスラッシーなパートが転換しようと加速度は止まらず、
クール極まりない。

リフがまたカッコいいのだ。
いわゆるノイジーな響きと違うとはいえ残虐なトーンに研ぎ澄ましている。
ギター・ソロにも痺れるしとろける。
単なる早弾きのギター・ソロではなく、
痛みの音であり傷みの音にも聞こえる。
即物的なサウンドとは違うのだ。
単に楽しむだけではなく身から紡いだ自己表現としての音楽なのである。

チャックのヴォーカルもいわゆるガテラル系とは次元が異なり、
喉から血が出そうなほど生々しいシャウト、
いや87年のデビュー・アルバムのタイトルになぞらえればこれぞ“Scream Bloody Gore”。
しかもバンド名がDEATHでアルバム・タイトルが『Human』なのだから究極の作品である。
もちろん歌詞はホラー映画系デス・メタルの対極で、
音同様に研ぎ澄まされたインテリジェンスが光るリアリスティックな内容。
やはり思索的だ。

純情なロック・ファンということが伝わってくるカヴァーをよくやるDEATHが
本作のボーナス・トラックで追加したのは、
KISSの「God Of Thunder」。
基本的には原曲どおりのアレンジだが、
ヴォーカルやギターなどの音色はDEATHならではの刺々しい仕上がりになっていてイケるのであった。


一方の約70分20曲入りのボーナスCDは2つの“パート”に分かれている。
13トラック目までは “ベーシック・インストゥルメンタル・スタジオ・トラックス”で、
『Human』収録曲のインスト・ヴァージョンが続く。
2テイク収録された曲もあるし断片みたいなトラックも“一曲”含まれている。
さらに14トラック目以降は91年3月25日録音のデモ・テイクで、
このうち2曲はインストで収められている。
特にデモの方は緻密に仕上げる通常のアルバムとは一味違うワイルドなDEATHが聴けて興奮する。
いずれも音質はまったく問題なく、
ディテールが気になるDEATHファンにはうれしいCDだ。


★デス『ヒューマン』(リラプス・ジャパン YSCY-1220)2CD
ロゴとアルバム・タイトルがエンボス加工の紙のケースにプラケースが収まった仕様。
日本仕様版は、
28ページのオリジナル・ブックレットに載った歌詞と
ポール・マスヴィダルとジム・モリスによるライナー(前者は様々な人の発言も挿入)の和訳が、
読みやすいデザインのインナー・シートで封入されている。


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コメント

また二枚組ですね(笑)
欲しいのでオリジナルのを売ってリイシューを買いたいと思います。


そろそろ行川さんの単行本が恋しくなってきました。
宜しくです(^O^)

ITOさん、書き込みありがとうございます。
ぼくみたいにもともと持っているアルバムがLPだったらCDで買いなおす気持ちにもなりやすいですが・・・・これもファンならもっておきたいです。
単行本は簡単に出せるものではないのですが、そう言っていただける励みになります。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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