なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

CORRUPTED『Garten Der Unbewusstheit』

CORRUPTED.jpg


2009年の12月から2010年の12月にかけて地元大阪のLMスタジオでレコーディングしたCD。
「garten(ドイツ語。英訳するとgarden)」
「against the darkest days」
「gekkou no daichi」
という最近のCORRUPTEDらしいフレーズで彩られたタイトルの3曲で構成しつつ
一続きの約64分の作品だ。

レコーディング・メンバーは
chew(ドラムス)、
hevi(ベース、ヴォーカルズ)、
mark y(アコースティック/エレクトリック・ギター)、
talbot(アコースティック/エレクトリック・ギター、シンバル)、
そしてLMスタジオのippei(クラシック・ギター)である。


本作の担当パートのクレジットとして“conductor(指揮者)”ともクレジットしたように、
CORRUPTEDはchewのバンドだ。
とはいえライヴを観てきて感じたが、
絶対的と思えたオリジナル・メンバーの4人の体制が崩れてからケミストリーが変わった。
メンバー・チェンジとは関係なく方向性は定まっていたと想像できるが、
アートワークが死体や瓦礫などから一種の風景写真を使うようになったことも象徴する。
このアルバムをエモともポスト・ロックとも言わないが、
ある時期から東京周辺でライヴをやるときによくENVYと対バンするようになったのも納得できる。

一般の音楽リスナーが聴いたら、
パンクとかハードコアよりもプログレッシヴ・ロックをイメージするのではないだろうか。
じっくりとじっくりと歩んでドラマチックに持っていく、
いわば“ハードコアなプログレ”だ。
ただしこの99年以降のアルバム『Llenandose De Gusanos』や『El Mundo Frio』よりも
凝縮されている。


1曲目の「garten」は途中で轟きも響くとはいえ穏やかなトーン中心で進行し、
緑の多い野外の空気感がたゆたう。
アコースティック・ギターが重なって時折ドラムが加わり、
やさしいトーンの現代音楽~ミニマル・ミュージックのようでもあるが、
もちろんロック。
灰野敬二の静かなギター・パートやセカンドから70年代初頭までのPINK FLOYDもイメージする。
静謐な音のさざなみの中にダミ声で日本語の語りが入る。

2曲目の「against the darkest days」は4分ほどのインスト。
アコースティック・ギター主導でトラッド系のプログレのような調べが奏でられる。

そこからの自然な流れで、
3曲目の「gekkou no daichi」へと連なる。
しばらくして轟きの反復がゆっくりと加速していき、
歌詞はここ数年の“CORRUPTED節”の(メタル・)クラストと接点があるニュアンスだが、
それも含めてポジティヴであり力強い鳴りは勇壮にも感じる。
終盤は感動的な轟きの調べで覚醒に至るのだ。
2003年録音の『Se Hace Por Los Suenos Asesinos』に収録された
「月光の大地」のニュー・ヴァージョンとも言える。
でも曲の長さが倍近くになっているしアコースティックな響きは基本的に最初と最後の数分間だけだし、
音の渦の中でグロウルする歌詞が
意識の変化か多少言葉を加えてより深層をえぐる表現になっているのも興味深い。
“激昂の大地”という日本語にしたくもなるが、
ねじれながら激しいフィードバックが響き渡りながらも
たおやかな表情をたたえているから、
まさに“月光の大地”である。

昔はゆっくりとゆっくりと崖を這い上っていくようなイメージのCORRUPTEDだったが、
このCDはゆっくり舞い上がって音速で彼岸に突き抜けていくかのようだ。


少なくても2000年の初来日公演の際に対バンする頃まではTシャツを着るほどchewが好きだった
NEUROSISの2000年代の路線とも音の佇まいが多少ダブった。
DISCHARGEBLACK FLAGの両方からも音楽を導き出した者同士だから、
2000年代のNEUROSISがとったアプローチをCORRUPTEDならこうやる!みたいな風情でもある。
だが現時点でCORRUPTEDが凌駕していることは言うまでもない。
決して耽美には向かわないのだ。

CORRUPTEDの大ファンのアーロン・ターナー(元ISIS他)主宰の
HYDRA HEAD Recordsからリリースされても違和感がない重い美しさすらたたえている。
だがやはりレーベル・カラーを逸脱するだろう。
クラストもスラッジもドゥームも研ぎ澄ました感覚なのだ。

楽曲と演奏もさることながら緻密な音作りも光る。
CORRUPTEDがスタジオ・レコーディングの音の仕上がりに猛烈に気を遣っていることは、
ライヴ音源をほとんど発表してないことも象徴的だ。
いわゆるコンプかけまくって作った昨今のヘヴィ系CDとは対極の
彫りの深い音像はいい意味でアートですらある。
ナマの輝きなのだ。


このCDを最後に17年間ヴォーカルを取ってきたheviと17年間ギターを弾いてきたtalbotが去り、
オリジナル・メンバーはchew(ds)一人となった。
それもうなずける一つの到達点に至っている。

様々な人に体験していただきたい逸物だ。


★CORRUPTED『Garten Der Unbewusstheit』(NOSTALGIA BLACKRAIN cold ashes-002)CD
約64分のヴォリュームにもかかわらず税込み1500円。
歌詞の英訳付。
アートワークには元GREENMACHiNEのdatsu撮影の写真も使われている。

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月光の大地はSe Hace Por Los Suenos Asesinosに入ってるのとは別の曲なのですか?

行川さん こんばんは。
コラプテッドからheviさんが抜けたとは・・・
heviさんのまさに獣のようなグロウルがあってこその
コラプテッドだと思っていたのでショックです。
アルバムの冒頭の絶望感漂う語り→轟音で炸裂!の流れにしびれました。

書き込みありがとうございます。
>かっこさん
歌詞がほぼ同じだから(でも意識の変化か多少言葉を加えてより深くえぐる表現になっている点に注意)同じ曲と言えますが、録音時期とメンバーが違いますのでもちろん別テイクです。全編アコースティック・ギターと歌だった『Se Hace Por Los Suenos Asesinos』の17分ヴァージョンとはまったく違って、30分強のこちらは最初と最後以外はほぼいわゆる轟音でヴォーカルもその中でグロウルしています。そのへん+αを本文に細かく書き加えておきますね。重ねてありがとうございます。
>松浦さん
メンバーと話やメールのやり取りも何年もしてなくて詳細は何とも言えませんが、
周りの色々な話やここ数年間のメンバーの変遷を考えるとバンド内も大変だったのかと想像できて、その集大成というか結晶がこのCDかと思います。
本文にも書いたようにぼくはオリジナルの4人体制が崩れた時点でちょっと違った印象なりましたが、
ヴィジュアル的にもhevi脱退でやはりかなり印象も変わるでしょうし残念ですね。
ここはひとつ編成のCORRUPTEDを楽しみにしましょう。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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