なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

DREAM THEATER『A Dramatic Turn Of Events』(スペシャル・エディション)

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80年代の半ばからコンスタントに活動を続ける、
ニューヨーク出身の“メタル”プログレッシヴ・ロック・バンドの2年ぶりの11作目。

移り変わるトレンドなんて知ったこっちゃないビッグネームならではの威風堂々の音楽であり、
おのれを律して自分が成すべきことをビシッ!とやった表現の強さに圧倒される。
スポーツのような鍛錬も思わせるが、
それを感じさせない涼しげな風情も心憎い。
浮世の“喧騒”に曝される精神の安定にもいいから何気にヘヴィ・ローテーションになっている。

個人的にDREAM THEATERは、
かつてNAPALM DEATHのヴォーカルのバーニーがフェイヴァリットの一つとして挙げていて、
だったら聴いてみるべ!とテクニカル云々の偏見を殲滅した上でチャレンジしてイケたバンドだ。
バーニーはいい意味で変態な音楽趣味もポイント高く、
知性と良識を気取った連中がマトモに相手しないJOURNEYも大好きで好みが合う。
バーニーは作曲には関わってないが、
彼が加入した90年代以降のNAPALM DEATHの楽曲がプログレっぽくなったのも偶然ではない。
DREAM THEATERは多方面に影響が大きく、
獰猛パンク/ハードコア畑にもミュージシャンシップの人は高い人は好んだりするし、
それこそNAHTなどの熱い“エモ系”やカオティック・ハードコア系にも直結するバンドだ。


単なるオリジナル・ドラマーではなく10年以上アルバムのプロデューサーの一人でもあった
中核メンバーのマーク・ポートノイが脱退してからの初のアルバムでもある。
必然的に本作のプロデュースはジョン・ペトルーシ(g他)一人になった。
バンドとしては一大事だ。
バンドはドラマーで決まる。
ドラマーがリーダーだとユニークなバンドになる。
DREAM THEATERはマーク・ポートノイのバンドだったわけではないが、
歌詞も書いてバンドの中核を担っていた一人だから空気感の変動は必然だ。
新ドラマーのマイク・マンジーニは、
元ANNIHILATORで90年代はEXTREMEやスティーヴ・ヴァイとの活動でも知られている。
鉄壁の布陣を再構築したためか“遊び”の音はないが、
小気味いい演奏で今回の楽曲のクリアーなムードを高めている。
いい意味で誤解を恐れずに言えば“ポップ”にハジけている。

例によってスキがないのは当たり前。
だが特筆したいのはアンディ・ウォレスのミックスである。
NIRVANAの『Nevermind』(91年)は彼のミックスがなければ別なものになっていたし、
SLAYERも『Reign In Blood』(86年)で彼のミックスがなければ別の人生を歩んでいた。
ノイズをタイトなメジャー感とともに提示する人で、
ノイズじゃないとはいえモダンな感覚でスッキリと複雑怪奇な音を仕上げている。

メンバーの演奏技術は猛烈にテクニカルなはずだが、
“能ある鷹は爪を隠す”ってな様相でテクニカルに見せない演奏は風格である。
基本的には乾いた“アメリカン・プログレ”だし、
80年代後半のMETALLICA meets 70~80年代のKING CRIMSON & 70年代のPINK FLOYD“。
むろんメタリックな音がキー・ポイントだが、
ロマンたっぷりに展開している。

70年代からRUSHのジャケットを手がけてきていることで知られるヒュー・サイムによる、
ヒプノシス直系のアートワークも毎度素晴らしい。
CDという限られた枠内のパッケージでどこまでやれるかの挑戦にも思える。
RUSH直系のDREAM THEATERの心をしっかりとヴィジュアル化している。

マークの脱退によって2曲を除き歌詞はすべてジョン・ペトルーシが書いているが、
ポリティカルなニュアンスが滲む歌詞も健在。
言うまでもなく政治は日常だし、
そういう歌詞はパンク/ハードコアの専売特許でもなんでもない。
もちろん活動範囲の広いバンドならではの内向きにならない内容は示唆に富み、
サウンドを聴けばわかるようにどの大陸にも開かれている。


以上は通常版と同じCDについての話で、
“スペシャル・エディション”のみに付くDVDは、
新ドラマーのオーディションの模様のドキュメンタリー映像が主体だ。
全参加者のインタヴューも含みつつドラマーをキーワードにして、
DREAM THEATERがどこにポイントを置いて音楽をやっているかも浮き彫りにする。
テクニカルなだけじゃダメなのはロックな証拠であり、
オーディションだけで約62分のドラマになっているのもDREAM THEATERならではだろう。
むろん全編日本語の字幕付だ。

さらにDVDには日本盤特典として、
全曲分のインストゥルメンタル・ヴァージョンのMP3音源が追加収録されているのであった。


メタルとかプログレ以前に
スケールがでかいドラマチックなロック・バンドということを再認識させる快作である。


★ドリーム・シアター『ア・ドラマティック・ターン・オヴ・イヴェンツ~スペシャル・エディション~』(ワーナー・ミュージック・ジャパン WPZR-30410/1)CD+DVD
20ページのオリジナル・ブックレット封入の三面デジパック仕様の約77分9曲入り。
DVDに関しては上記のとおり。
日本盤は、
染谷和美によるアルバムのニュアンスをしっかり反映した日本語による歌詞の和訳と、
毎度リスナーを盛り上げつつバンドの近況から歌詞まで言及した伊藤政則執筆の“読ませる”ライナー付。


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コメント

Dramatic Turn of Eventsの感想

初めまして、ヒロチェリと申します。
いつも、楽しく拝見させて頂いております。

Dream Theaterの最新作、
「Dramatic Turn of Events」
は予想以上に素晴らしかったですね。
ドラマーがマンジーニに変わり、
どうなる事やらと心配していたのですが、
全く杞憂に終わりました。

私はマイアングが大好きなので、
ベースの音がちゃんと聴こえる点は、
非常に嬉しかったですし、
新鮮でした。

ただ、前作、
「Black Clouds & Silver Linings」
収録の「The Count Of Tuscany」
のようなキラーチューンがなかったのが、
残念と言えば、残念です。
(「Breaking All Illusions」は
素晴らしい曲だと私も思うのですが、
「The Count Of Tuscany」と比較すると、
少し印象が劣るように思います。)

ただ、総合的に見て、
非常にクオリティの高いアルバム
ですので、大満足とは言わなくても、
非常に嬉しく思います。

ヒロチェリさん、書き込みありがとうございます。
普段聴く音楽の8割ぐらいはパンク/ハードコアやアウトローな音楽なのですが、DREAM THEATERは精神安定に良いです。ぼくは彼らのダイハードなファンではないので、脱退の真相まで調べていません。ただデラックス・エディションのDVDでわかりますが、新ドラマーにどういうものを求めていたのかと言えば、人柄+熱くシンプルにロックする心かと思いました。ポートノイの存在が重かったわけではないでしょうが、すっきりして視界が開けたアルバムですごく気持ちいいです。
 マイアングは、某バンドの人から「行川さん、顔が似ていますね」と言われて親近感があるからではないですが(単に髪型だけのような・・・もちろん彼の方が髪は綺麗ですし男前です)、気になるミュージシャンで、クールなベースっすよね。何気に出たがりのメンバーが多い中で地味ですが、ますますDREAM THEATERの音の核になったアルバムだと思います。マンジーニが入ってそういう面でも彼としては精神的なバランスが良くなったのではないかと。
「The Count Of Tuscany」は名曲ですね。あの長さも彼ららしいです。そう考えると今回はコンパクトにまとまった印象もありますが、新しいファンがまた付くかなと想像します。主要メンバーの脱退をプラスに転じたわけですが、デラックス版に付いていたDVDでもわかるように彼らの曲作りや音楽への取り組み方ゆえのこととも思いました。個人的には色々いい意味で考えさせられたアルバムです、バンドのあり方に関して。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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