なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

OPETH『Heritage』

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スウェーデンのみならず現代“プログレッシヴ・ヘヴィ・メタル”を代表するバンドの10作目。
パンク/ハードコアも含めて相変わらず面白い音楽がどんどん出てきているスウェーデンの奥深さも
個人的にはまたまた感じ取れた作品である。
“進化”と書くと“化けた”ということで“変わった”というニュアンスになるが、
あえて言えば変わってない。
望ましい方向に前進したという意味でやはり“progress(≒進歩)”と言いたいアルバムだ。


世界的にこれまでにないチャート・アクションを見せた3年前の前作『Watershed』の路線を、
一気に推し進めて完全に一線を超えている。
クリーンな歌声オンリーのヴォーカルをはじめとして、
初期のデス・メタル色はドラマチックな曲の中に吸収されてほとんど聴こえてこない。
このブログの“ジャンル分け”では便宜上“EXTREME METAL”にしてあるが、
エクストリーム・メタルどころかヘヴィ・メタルですらない曲も多いから、
全体の流れを考えれば今回デス・ヴォイスを一掃したのは自然なことと言える。
20年前に結成した頃からデス・メタルとプログレの間を彷徨っていただけに、
ヘヴィなプログレッシヴ・ロックに照準を合わせたアルバムを作ることは必然だった。

唯一のオリジナル・メンバーで全曲書いているミカエル・オーカーフェルト(vo、g)のプロデュース。
ジャズや現代音楽をチラリと覗かせるアレンジには彼の変態なキャラが顔を出しているが、
変拍子と叙情性のバランスがよく取れている。
70年代半ばまでのKING CRIMSONが70年代半ばにYESに渡したバトンを、
今OPETHが受け継いでいるかのようだ。
リフ主体のロックではなかったとはいえ
そもそも多くのプログレッシヴ・ロックは実のところヘヴィなロックでもあったわけだし、
同時にプログレとも接触していた非ロックンロール系の70年代のハード・ロックの感触にも通じる。
むろんサンプリングなんかでお茶を濁さずに自分たちの中から紡ぎだしているが、
かといって往年のロックへのノスタルジーに酔いしれてカビの生えた音質を再現することはなく、
ナマの音を大切にしつつ現在進行形のコーティングで仕上げている。

ピアノ中心のインストで始まりアコースティック・ギター中心のインストで締める構成で、
アコースティックな音がポイントになっている。
申し遅れたが、
SPIRITUAL BEGGARSと掛け持ちしていたペル・ヴィバリがレコーディングの佳境の段階で脱退した。
とはいえアコースティック・ギターと共に彼の鍵盤楽器の静かなる調べが本作の鍵を握っている。
まどろみのパートが多いのは事実だが、
静謐な響きを大切にした水のしたたる音のドラマチックな“ヘヴィ・ロック”と言いたい。
ヘヴィ・メタルとリンクする前のハード・ロックが根っこなのは隠しようがないからだ。
KING CRIMSON時代のグレッグ・レイクやジョン・ウェットンが
たそがれたような調子のヴォーカルにも磨きをかけ、
OPETHの“体温”が常に“微熱”で不動であることを示す。

1年前にリリースしたライヴCD+DVD『In Live Concert At The Royal Albert Hall』は、
DEEP PURPLEへのオマージュのパッケージだったが、
今回のジャケットでもDEEP PURPLEを思い出すのはぼくだけだろうか。
メンバーの顔をデザインするジャケットは70年代のDEEP PURPLEのお家芸だったが、
特に『Fireball』、いや『Come Taste The Band』のファニーなテイストとイメージがダブる。
ちなみに「Slither」はロニー・ジェイムズ・ディオへのトリビュートとして録音された曲だから、
DEEP PURPLEの「Fireball」というよりはRAINBOWの「Kill The King」の残像とも言えよう。


全体からすればプログレだが、
結局ロックと言えばいいんじゃないか。
パンクもハードコアもロックンロールも全部ロックだ。
要はどれだけ言い分けせず表現に誠実か、だから
胸がすくほど威風堂々の域に達した一枚。


★オーペス『ヘリテイジ』(ワーナー・ミュージック・ジャパン WPCR-14191)CD
本編約57分10曲入り。
先行発売の日本盤は、
本編の歌詞(英語)の和訳付で、
さらにCD-EXTRAでボーナス・トラック2曲が聴ける。
本編の流れを損なわないための“別枠”で追加されたその2曲は
どちらも前作の流れをくむムードながら“歌もの”とも言える佳曲だ。
なお↑の画像はレコード会社から提供してもらったもので(ジャケット・デザインの原案だろうか)、
実際のアルバムのジャケットは茶色の縁取りやロゴが入ってないから注意。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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