なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

EXTREME NOISE TERROR、SLANG、鉄アレイ、WORLD BURNS TO DEATH、SYSTEMATIC DEATH、KRIEGSHOG、九狼吽~2009年8月15日 at恵比寿LIQUIDROOM

ENT.gif


英国のEXTREME NOISE TERROR(以下ENT)とSLANGとの日本ツアー、
“Hardcore Attack Of The Low Life Dog Tour 2009”の最終日に行ってきた。

トータル5時間でもちろんずっと観ていたが、
リキッドルームは観る場所や居る場所が色々たくさんあってわりと楽に過ごせた。
ハードコア・パンク・バンドばかりとはいえ音楽的にも見た目にもバラエティに富んでいたし、
遠くのお客さんにも自分らを届かせようとしていたバンドばかりだから疲れなかった。


まずは九狼吽。
16時半過ぎにスタートで広めの会場内にまだお客さんが集まり切ってなかった状況を逆に活かし、
ヴォーカリストはフロアーをステージにしたダイナミックなパフォーマンスを展開した。
典型的なジャパニーズ・ハードコア・パンクのようで実は楽曲にひねりが効き、
バッキング・ヴォーカルの入り方をはじめとしてユニークなアレンジにも惹かれる。
未完なところも持ち味だが、さらに演奏を繰り返していくと各楽器の音のリズムが強化されそう。

ENTとファン層もダブるのかフロアーに少しずつ人が集まってきて、
KRIEGSHOGでは拳を上げて盛り上がるお客さんが目立っていった。
クラストと呼ぶにはタイトな音だが、魅力の一つはそこにあるのだろう。
ビシッとしたリズム隊をはじめとして飛ばす音はまさに“D-beatスラッシュ・パンク”。
何気に音はモダンでステージングも含めて完成度が高かった。

SYSTEMATIC DEATHもほぼ休み無しで立て続けに曲をブッ放った。
終始加速度が落ちないのは、
叩き出したら止まらないマサアキ“コバ”スウェーデンのドラミングが特に大きい。
80年代の初期から末期までフォローかる現在4人は当時一緒にステージに立つことはなかったが、
ぼくにとってはこれがシステマのベスト・メンバー。
年輪を刻んだ今の彼らの方が断然好きだし、新譜もホント期待している。

米国テキサス拠点のWORLD BURNS TO DEATHは、
BLOWBACKやPAINTBOXとの日本ツアー開始前夜のステージになったが、
ハードコア・パンクにしては長めの凝った曲を繰り広げた。
ジャンル問わずアメリカのバンド全般に言えるがフツーのヴィジュアルが潔く映り、
特にヴォーカルの声量と体全体での表現力が印象に残った。

いくらメンバーが替わろうが、たとえいつもとは違う布陣だろうが、
鉄アレイも音の核のドラムがビシッと引き締める。
大きなステージも似合うのはバンド自体のスケールが大きいからだ。
活動25年間の中で小ぢんまりとまとまったライヴとは今も昔も無縁であり、
この日も、MCで繰り返し終戦記念日に言及しつつハードコアなロックでお客さんを確実に熱くしていた。

札幌シーンの核のSLANGは、
2008年の目下の最新作『Immortal Sin』でDISCHARGE的なアプローチも感じさせたが、
やっぱりSLANGはSLANGで変わり無しということを再認識。
曲もヴィジュアルもフック十分で、
内外の様々なハードコアを吸収したSLANG流のハードコアへのこだわりを感じさせるライヴだった。
伝統的な日本のハードコア・パンクもニューヨーク・ハードコアもミックスした気合十分の前のめりの演奏と、
ステージ運びも含めてベテランならではの巧さを感じさせるヴォーカルで、
多彩なパンク/ハードコア・ファンが集まった若いお客さんをノせていったのである。


そしてENT。
初期からリアルタイムで追ってきたバンドだけに、
観る前は正直……今のENTはどんなもんだろう……と思っていたが、
以前の2回の日本ツアーに匹敵する。
いや時間が経っていてもなお変わらず、かつ深化していて驚いた。

フロントに立つヴォーカルの二人の存在感でもうオッケー!だった。
カリスマとまでは言わないが、やはりずっとヤってきた者は何かが違う。

85年の結成時からずっとENTのステージに立つ唯一のメンバーのディーン・ジョーンズは、
金髪スパイキーの頭もクラスティー・パンツもひっくるめて、
一時期わずかに“浮気”していたが前回の来日公演時とヴィジュアルがまったく変ってない。
妙にオヤジ臭く見えないところもうれしい限りだ。
かたや一時バンドを離れていた相方のフィル・ヴェインは頭丸めて作業ズボン姿だったが、
むろん声はバリバリの現役。
ディーンとフィルの鉄壁ツイン・ヴォーカルを18年ぶりに体感し、
フォロワーを一切寄せつけぬ不変のヴォーカリゼイションの妙味に少しばかり目頭が熱くなった。
漫才じゃないしボケとツッコミとも違うが、ある意味“芸”とも言えるし、
彼らの強烈なオリジナリティをあらためて目の当たりにしたのだ。

当時ENTのイメージを形作った動物云々がテーマの極初期の代表曲「Murder」はやらなかったが、
これぞクラスト・コア!と言うべき80年代のお馴染みの曲も多かった。
けどむろん懐メロに終始したわけじゃない。
ノスタルジーは敵!とばかりに最近の曲もたっぷり披露し、
彼らは昔のENTにしがみついてはいない。
90年代後半から2000年代初頭にかけてのEARACHE~CANDLELIGHTレコード時代の、
激烈グラインド・コアのアプローチを経た上での“エクストリーム・クラスト・コア”であり、
“カオティック・ハードコア・パンク”とも言えるコワレ方が音楽的にもたまらなかった。
ソングライティングがしっかりしていることも再認識した。

メタル的なカッチリ感はなくて芯の太いノイズ・コアの趣もあったツイン・ギターの必然性も感じ、
ザクザクジャキジャキのギター・リフとギター・ソロも絡みも見事だったし、
はっちゃけたドラミングとほとんどグラインド・コアなベースも高ポイント。
いい意味でまとめあげようって気がないサウンドは今でも素行不良であった。

一曲やるごとに休むステージングも、ガツガツしてないまったりしたクラストならでは。
あと決して彼らはオシャレではなかった。
妙に田舎臭い。
ありのままだ。
そこにも不思議と感動覚えた。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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