なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ちづる』

千鶴_sub3[1]_convert_20110920112252


重度の知的障害と自閉症を持った妹・千鶴と母を1年に渡って撮り続けたドキュメンタリー。
立教大学現代心理学部映像身体学科在籍中に
赤崎正和が卒業制作として撮った監督作品である。
中国残留日本兵のドキュメンタリー映画『蟻の兵隊』の監督として知られ、
赤崎の指導教授でもある池谷薫がプロデューサーだ。


小学生の頃から妹のことをどう友達などに説明したらいいのかわからず、
妹の話題を避けるようになっていった赤松が一念発起し、
覚悟を決めて撮影に挑む。
登場人物は基本的に千鶴、赤崎、母親だけ。
舞台はほとんどが横浜の赤松の自宅。
撮影は赤崎が中心に行なって母親も時折カメラを握り、
その二人を捉えたシーンはカメラをどこかに設置して撮っていると思われる。

母親との会話の中で赤崎の気持ちが漏らされていく。
いらだちも見え隠れする赤松が、
父親が不在になって真正面から千鶴に向き合う決意の映画にも感じた。
“運命的に背負う家族”と“自ら作った家族”とでは違う。
だが責任に向かい合った人間ならではのちからで押していくのだ。


赤崎の2歳年下で90年生まれの千鶴は、
14歳のときに極度の緊張状態に陥って不登校になって以来、
しばらく家からほとんど出られなくなった。
長い時間かけて少しずつ回復したとはいえ一筋縄ではいかない。
映画の制作を決意した頃の赤崎は一人暮らしをしていて、
千鶴と一日中一緒にいるのは母親だけだったという。

母と千鶴_main[1]_convert_20110920112120

コミュニケーションが上手くとれなかったり、
状況の変化に対応するのが難しかったり、
物事に強いこだわりをもったりする千鶴。
微笑ましいシーンもいっぱいだが、
千鶴と母親との“戦い”も絶えない。
金をくすねたということで母親と千鶴の取っ組み合いも見応えがある、
と書くと語弊があるかもしれないが、
事実だからしょうがない。
なにしろ全編3人とも真剣勝負なのだ。

当初は専門家にインタヴューするなどして自閉症をテーマにしたドキュメンタリーを目指していた赤崎だが、
回りくどい方法論は無しでダイレクトに勝負。
自閉症ということを否応無しに浮き彫りにされていく事実として
本人と身近な人間だけをありのままを捉えて軋轢もそのまま刻んだ、
“愛with抗争”とも言いたくなる家庭内ドキュメンタリーに仕上がっている。
卒業制作という店も含めて個人的には映画『アヒルの子』を思い出した。


家族だからこそ容赦なく捉えている。
家族だからこそカットしたい場面も多かっただろし、
特に母親は削ってほしい場面だらけだったと言う。
でもホームドラマの女優さんのような存在感のお母さんである。

それにしても千鶴は“役者”だ。
母親によれば千鶴はナルシストらしい。
さもありなん、である。
過剰な女優はすべてナルシスト。
そしておんなはすべて女優に成り得る。

実際、千鶴は女優になるのが夢だった。
まさか千鶴、意識的に“演じた”部分も・・・いやそこまで器用とは思えない。
私小説あるいは自分で自分のことを歌うシンガーのような適度な脚色を天然で施しているようにも見える。
最初はカメラを向けられるのを嫌がったらしいが、
やはり天性の女優である。
自分をかわいく見せる術を心得ている。
演技ではなく天然なんである。

初々しいのは千鶴だけではなく映像もだ。
千鶴をはじめとしてエネルギーの熱量がそうさせている。


結論はわからない。
なぜならまだまだずっと“ing”。
そう現在進行形だから。


★映画『ちづる』
2011年/日本/カラー/HD/75分/ヴィスタ
10月29日(土)より、ポレポレ東中野、横浜ニューテアトルほか全国順次ロードショー。
http://chizuru-movie.com/
(c)2011「ちづる」上映委員会


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コメント

軽度知的障害

突然のコメントで申し訳ありません。
男性25歳です。
私は、重度知的障害では、ありませんが
軽度知的障害と言語障害を持っています。
今、私は、就職活動を頑張っていい処を探しているが
中々就職先が決まりません。

お時間がつけばご返事を頂ければ幸いです。
一緒に頑張って行きましょうね。

失礼しました。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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