なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

WOLVES IN THE THRONE ROOM『Celestial Lineage』

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リベラルな気風で知られる米国北西部ワシントン州オリンピア出身で、
新世代のブラック・メタルを代表するバンドの4作目。
2004年にトリオで結成されたが、
現在は兄弟のデュオ・バンドになっている。
ヴォーカル、ギター、ドラム、パーカッション、シンセサイザーなどの楽器に
フィールド・レコーディングの音源を適宜加え、
多数のゲストが参加したアルバムである。

ブラック・メタルと呼ばれるバンドだけにブラスト・ビートも使っているが、
伝統的なヘヴィ・メタルの“極悪スピリット”と一線を画すことは響きに表れている。
四方八方を殺すクラスター爆弾みたいな音じゃない。
最近のBURZUMのアルバムのような静かなる殺意とも違う。
シューゲイザーとも耽美とも言いたくないが、
ある意味COCTEAU TWINSあたりの80年代の4ADレーベルが内包した祈りの音楽にも聞こえる。
いや後期JOY DIVISIONの音源、
アルバムでいったら『Closer』の“ice age(氷河期)”の感覚だ。

雰囲気はシンフォニック系のプログレッシヴ・ロックにも近いが、
不思議とキャッチーなのはアメリカンならではと言える。
これまでのアルバムに収めた曲よりは短めだが、
10~12分の曲も3曲やっている。
フォーク・ミュージック風でありながらも厳粛な佇まいで中世音楽風でもある女性ヴォーカルも、
前作に引き続き要所で引き締めている。

菊池純平執筆のライナーによればラジカルな環境保護団体のEARTH FIRSTと深い関係にあるバンドだ。
エコといっても坂本龍一みたいなセレブの寝言の音楽じゃない。
かといってEARTH CRISISをはじめとするヴィーガン・ストレート・エッジ勢の血気とも違う。
歌詞も“ブッ殺せ!”みたいなトーンではなく、
俗世間から隔絶した香り、
たそがれたヘヴィネス、
他で聴けない響きが連なっている。

SUNN O)))やEARTHを手がけたことで知られるランドール・ダンの共同プロデュースも
浮世離れした感覚を記録するに一役買っている。
ヴォーカルもギターもブラック・メタルの意匠ではあるが、
むしろそのへんのバンドと共振している。
自給自足のライフ・スタイルをキープしているとのことだが、
旧来のヒッピーのロックとは違って研ぎ澄まされている。
すべてが自分次第のUSAの自由システムと広大な大地だからこそ生まれ得た他で聴けないアルバムだ。

桃源郷が見えてくる。


★ウルヴズ・イン・ザ・スローン『セレッシャル・リニイジ』(デイメア・レコーディングス DYMC-145)CD
3面デジパック仕様で16ページのブックレット封入の約49分7曲入り。
日本仕様版は歌詞の和訳付。


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コメント

フィールドレコーディング導入してるっていう所ですでに興味津々です。またコクトーツインズっていうのも気になります。以前、DOOMBANDのESOTERICの2枚組で4ADの香りを感じました。JOY DIVISIONのCLOSERはトラウマに近いぐらいの内容(誉め言葉です)で怖くて滅多に聴けません。これはチェックさせていただきます。JOY DIVISIONの影響ってホントに図りしれないですね。色んな音楽に対して。個人的に「STILL」の"NEW DAWN FADES"のライブの絶唱は今聴いても鳥肌が立ちます。行川さんは新しいAMEBIXはもう聴かれましたか?

かくさん、書き込みありがとうございます。
このアルバムはいい意味でアートといえそうです。ESOTERICは英国のそのへんの伝統も感じさせますね。
もちろんJOY DIVISIONほど重くはないですが、特にマーティン・ハネットのプロデュースの影響が強い曲(パンク・ロック色の薄い曲)に近いものを感じます。個人的に『Closer』は気持ちを高めるのにいいんですよ。強制的なお祭りムードの音楽を聴かされるほうが死にたくなります。最近はあまりしてませんが、JOY DIVISIONは一時期ブートのライヴ音源もよく買っていました。
AMEBIXのニュー・アルバムはまだです。ここでも書いた12"EPから想像するに、間違いないと思っています。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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