なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『人喰い猪、公民館襲撃す!』

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巨大イノシシが人間を襲う2009年の韓国の映画。
これまたエキサイティングなスペクタクル・エンタテインメント作品に仕上がっている。
馬鹿馬鹿しい頓知とともにシリアスなテーマも屠殺場のフックの肉みたいに引っかかっていて、
韓国ならではのバイタリティあふれる肉食パワーで加速していく。
監督はこれが2作目となるシン・ジョンウォンである。


酔っ払い運転での“殺人”など不条理を許せない正義感たんまりの青年巡査が、
事実上死刑がなくなっている韓国ならではの義憤がエスカレートして“一般市民”から苦情が殺到し、
犯罪が頻発するソウルから犯罪が10年以起きていない山奥の小村に左遷される。
身重の妻と認知症の母親と共に田舎に移って生活を再開するが、
人間技とは思えぬ死体が発見される。
それが人喰いイノシシの仕業ではないかということなり、
女性生態研究員、老練の元ハンター、スター級のハンター、刑事とともに、
探検チームを結成して探索。
だがやがて巨大イノシシに追われる立場に急転換し、
すったもんだで青年巡査と女性生態研究委員の二人だけが追い詰められていく。

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エンタテイメントがブッとい筋肉を成す映画だが、
端々に社会的/政治的な問題も染み込ませている。
ある意味サブリミナルな“隠しメッセージ”とも言いたくなる。

たとえばこの映画における中央の都市と地方の田舎との関係を深読みすれば、
この半年ほどの間に原子力発電所云々で浮き彫りになった日本の問題ともダブる。
けどそれはアフリカでも中央/東南アジアでも北中南アメリカでもヨーロッパでも中国でも共通の問題だ。
権力を悪者にして免罪符を得る映画ではなく結局人間個々がダメというように読める。

さらに“肉”がキーワードになっているようで、
肉食光景が多いのは“焼肉国家”の韓国だから自然とはいえ意識的にも思えるし、
善悪抜きにして環境保護や動物愛護のことも問うように見える。
結局すべて人間の驕りであると同時に、
植物を含む他の生き物とそれらを食らう人間の間だけでなく
結局は人間同士も食うか食われるかじゃないかと。
そんな“共食いの連鎖”の思いを込めているようにも感じた。

むろん自分を棚に上げて“正義の味方ヅラ”した映画じゃない。
それこそが人間の一番の驕りであり、
○か×の二元論で解決しようとする身勝手な人間の心臓を巨大イノシシが怒りと悲しみで食いちぎる。
そんなヒトという種(しゅ)対して巨大イノシシが獰猛な牙を振り下ろしているように見える。
アニメ映画『動物農場』や『バッタ君 町に行く』 も頭をよぎった。

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・・・ってなことは後で振り返ってみて思うことで、
映画を見ている最中は蚊が止まって血を吸われて毒を入れられた感覚で瞬間的に終わる。
何しろポップと言えるほどのテンポに良さがお見事。
しょーもないユーモアで真面目な話をことごとく台無しにしていくズッコケ・パワー。
何しろ登場人物の大半が胡散臭く、
どいつもこいつも真剣なのに素敵に阿呆である。
エクストリームに針が振り切れている。
もちろん完成度やスタイルは全然違うが、
映画『アンダーグラウンド』にも近いノリも感じた。

ホラーな要素も強いが、
臓物ドロドロの露骨な映像は抑えられている。
おそらくそういった面にポイントは置いてないからだろう。
のうみそとはらわたでびっくりしてこしをぬかされたらこまる。
肝要なのは加速度だ。
適度に背景で鳴っている音楽とは別に映画全体でビートが脈打つからスピード感が格別なのだ。

人喰いイノシシはCGと被り物とアニマトロニックス(ロボットを使用した撮影方法)を駆使し、
この世のものとは思えない動きと凶暴性を演出。
その“裏主人公”の巨大イノシシのように牙を剥く映像力にファックされる。
田舎町と山奥の匂い立つ映像美もクサみたいだ。
映像は理屈を超える。


★映画『人喰い猪(ひとくいイノシシ) 公民館襲撃す!』
2009年/韓国/121分/デジタル上映/原題『Chaw』
10/22(土)より、シアターN渋谷にてモーニング&レイトショー 他全国順次公開
(C)2009 BIG HOUSE / VANTAGE HOLDINGS and LOTTE ENTERTAINMENT .All Rights Reserved. 
http://www.kingrecords.co.jp/inoshishi/


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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