なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

Jad Fair & TENNISCOATS『Enjoy Your Life』

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HALF JAPANESEのリーダーとして知られる米国の奇才ジャド・フェアと
TENNISCOATSによるコラボレーション盤。

今年ジャドが行なった日本ツアー中の3月7日と8日に東京でレコーディングした
約61分16曲入りのCDである。
担当パートは以下のとおり。
●ジャド(vo、エレクトリック・ギター、ストンプ・ボックス)
●さや(vo、kbd、アコースティック・ギター、メロディカ、バラフォン[木琴の一種])
●植野隆司(アコースティック・ギター、vo)

全体的にはアコースティックな感触で
ジャドとさやがリード・ヴォーカルを半々ぐらいで担当していると思われる。
ネックとボディを輪ゴムで留めたジャドの特製ギターも活躍。
さやと植野の演奏と歌は愛らしくも味わい深い。
さりげなくリズミカルな音の自己主張も実は強く、
惹かれあってイイ意味で中和して両者のポピュラーなところが引き出されているように思う。

ジャドは7曲で作詞を行ない、
さやと植野がオリジナル曲のすべてを作って日本語の歌詞も書いている。
双方の音楽性を多少とも知っている方の期待を裏切らないサウンド・ワールドとはいえ、
ジャド得意のパンクなローファイ・チューンというよりは、
どちらかというと作曲者のTENNISCOATSのムードが強い。
何をやるか始まってみないとわからないライヴでも話題のTENNISCOATSだが、
しっかりしたソングライティングに裏打ちされ、
まずミニマル&ミニマムな曲とサウンドにくすぐられるのだ。

レコーディングのときは
1週間以内にこれほどしっくりくる時が日本に再び訪れるとは思われなかったであろう、
戦前の有名な歌の「隣組」の6分強にも及ぶ“ドキュメンタリー・タッチ”の砕けたカヴァーは、
やっぱり目に染みる。
エリック・サティの“「星たちの息子」への三つの前奏曲”にジャドが歌詞を付けた
「Overjoyed」も素晴らしい。

二つ折りの紙ジャケット仕様だが、
開くと“飛び出す絵本”みたいな作りになっている。
一枚一枚手で貼り付けていったらしいが、
デザイナーのジャドとレーベル主宰者のこだわりと愛に満ちあふれており、
歌詞カードなども含めて毎度SWEET DREAMS PRESSレーベルならでは丁寧な作りだ。


それにしてもシンプルだが個人的には実にヘヴィなアルバム・タイトルである。
けど歌詞も音もささやかにポジティヴだし、
そういう気分になる佳作だ。


★ジャド・フェア&テニス・コーツ『エンジョイ・ユア・ライフ』(スウィート・ドリームス・プレス SDCD-008)CD
さやと植野隆司のセルフ・ライナーが6つ折り歌詞カードと、
英語の歌詞の和訳カードを封入。
E式紙ジャケット+特殊加工。
オススメ。


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コメント

誰よりも自分自身の人生をエンジョイしてきた感じのジャドフェアのアルバムタイトルはぼくも実にヘビィだと思います。長年、オリジナリティそのものの音楽と活動を黙々とやってきた人だからこそ。こんな時に働いてる場合じゃねえと言われてる気もします。ジャドフェア、日本のイシマルー氏、フランスのCOSTESはぼくの中では繋がっています。

かくさん、書き込みありがとうございます。
レーベルのサイトに書かれた3月のツアーの文章からも当然へヴィだったことが伝わってきますが、「隣組」のカヴァーをあえて通常とは違う形で入れたのも思いをこめてのことだと察します。
イシマルーvsコステスのライヴも思い出しました。イシマルーさんはジャドのジャケットのカセット作品を毎月のように送ってくれて、90年代にミュージック・マガジンで苦闘しながらレヴューしたことも思い出しました。

カセットのリリースの数がハンパじゃないですよね。かなり紛失しましたが、イシマルーさんのカセットもコステスのカセットもまだ大事にとってあります。アウトサイダーミュージックっていう言葉は好きではありませんが、独創性でいえば彼らはそれらのジャンルの中でももっと評価されていいと思います。アウトサイダーミュージックって言われてるものはただ下手なだけとかいう基準のものが多くどうかという思いもあります。

かくさん、書き込みありがとうございます。
カセットも所持されているとは、さすがです。90年代はミュージック・マガジン編集部経由でぼくのインディ・コーナーに回ってきた作品はそのまま自分のものになっていたので、イシマルーさんのたくさんのカセットは大切に取っておいてあります。
当時毎月のように送ってもらっていたジャドがジャケット画の膨大な数のカセット作品は、確かほぼすべてが80年代前半の録音のテイク違いを作品のテーマごとに振り分けた感じで、さすがに毎月のように書くとなるとヴォキャブラリーに苦労したのですが、埋もれて惜しい音楽家ですね。コツコツとレコーディングを続けていた80年代はもちろんのこと、ジャドをはじめとして評価していた方もいるとはいえ90年代も不遇で、イシマルーさんは90年代もフラストレイションが大きかったと想像します。
ミュージック・マガジンのインディ・コーナーで出会った方にはそういうミュージシャンが山ほどいます。それは自分がいわゆるメジャー/インディ問わず音楽に向き合う際の意識に大きな影響を与えています。幸運にもそういう方々にたくさん出会えていそういう音楽をたくさん知っているから、やっぱりぼくはほとんどの同業者の人にはない視点になっていると思います。内外問わず埋もれていて残念な人をフォローしたい気持ちが大きいです。ネット時代になっても基本的に状況は変わってないと思います。
パンク・ロックと同じく、もちろん上手ければいいなんてことは全くないですが、下手とかローファイとかで“それっぽい”だけで評価されるのはぼくも嫌です。やっぱり志だと思います。

その頃、毎月行川さんのコーナーだけはチェックさせてもらっていました。あの限られたページの中でなるべくたくさんの作品を紹介したいという思いが伝わってきていました。連絡先も書かれているものもありました。行川さんのそんな実績は著書数でも表れていると感じます。出版社も片寄った見方や現行バンドも追求していて把握していない方にはお願いしないはずです。売れないものをあえて出版するほど景気も良くないですからね(笑)。ぼくの好きな音楽はジャンルレスにまさに鳴りです。鳴りに志が聴こえます。その鳴りをいつも探しています。いよいよルーリード/メタリカが出ますね。トムウエイツの新譜は鳴っていないCDを売ったお金で買いました(笑)。

かくさん、書き込みありがとうございます。
90年代前半の“自主制作盤”コーナーは、当時の編集担当の方の方針で、すべて現物でやってボツにせずすべて取り上げるということになっていたので、送られてきた作品数が多くなるにつれて個々の字数はどんどん減ってページ内が窮屈になっていきましたね。ミュージック・マガジンのバックナンバーであのコーナーを見ると、そうそうたる顔ぶれになっていると思います。
歌詞よりも鳴りは正直です。ちなみにたまたまですが、ホントこれからちょうどトム・ウェィツの新作、レヴューのために聴くところです。

ありがとう

2年ぶりにこのページにたどり着きました。

Jadが帰った後に、東北大震災。歳をとると月日の
過ぎ去るスピードが速いこと。

80年代の頃と今の2013年では違う音楽嗜好になってしまいました。
去年11月にオースチンでJadとライブやった時も
お互い「違うんじゃないか?」みたいで。

どんどん自分に正直に変化していこうと思っています。

これからもよろしくお願いします。

イシマルー さん、書き込みありがとうございます。
御本人ですよね・・・・恐縮です。お久しぶりです。健在そうで何よりです。
このCDを買って聴いたとき、カセット作品をガンガン送っていただいた90年代をやっぱり思い出しましたが、進化し続けてらっしゃるようですね。今後も期待しています。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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