なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ホーボー・ウィズ・ショットガン』

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“怒りの弾丸をダニ共にぶち込め!”という宣伝文句そのままの2011年のアメリカ映画。
これまた見るのにある種の覚悟が必要な“R18+”指定の“エクストリームな作品”だが、
非道と義憤のヴァイオレンスが極端だから悪も正義も突き抜けたカオスにヤられる。

カナダ生まれのジェイソン・アイズナー監督の初作である。
デビューのきっかけも面白い。
映画『グラインドハウス』の北米公開に合わせて行なわれた
“フェイク予告編コンテスト(本編がなくても映画の予告編だけを作って公開するコンテスト)”で、
グランプリを獲得して“本編”である本作の長編映画化が実現。
そんな新鋭を盛り立てるべく、
『ブレードランナー』のレプリカント役で知られるルドガー・ハウアーが主演をOKしたのであった。


ルドガー演じる初老のホーボー(hobo:職を求めて街から街を渡り歩く“渡り鳥労働者”)が
職を求めて新たに流れ着いた街の“ホープタウン”は、
その名とは裏腹に度を越した“ヴァイオレント・タウン”。
大人は大人でショーアップした公開殺戮を行ない、
子供は子供でカツアゲ程度の弱いものイジメは序の口で流血暴力は日常茶飯事だ。
ゲーム感覚で傷つけて命を奪うことに対して何の感覚も持ち合わせていない。
街を支配するのは粘着極悪親子。
正確には狡猾オヤジとバカ息子+ダメ息子なのだが、
住民はもちろんのこと警察も“事なかれ主義”で逆らわない無法地帯である。

そんなある日初老のホーボーはバカ息子に誘拐されそうになった娼婦を助けるも、
即座に逆襲される。
ゴミ捨て場に捨てられていたホーボーはその娼婦に助けられて仲良くなるが、
仕事用の芝刈り機を買うために口内が血だらけになる“バイト”を引き受け、
それで得た金を持って質屋に入る。
だが強盗たちが押し入ってきて買い物に来ていた親子を殺そうとしている現場に直面。
殺されそうになっている人たちを目の前にして見て見ぬふりはできないから、
質屋の中でたまたまそばにあったショットガンをホーボーは手に取るのであった。

それからというものしばらく初老のホーボーは“街の清掃”にいそしみ、
ストリート(≒路上)から世直し。
マスコミにも取り上げられて街の住人にも一時歓迎されるが、
極悪親子は黙っちゃいない。
想像を絶する手法で子供たちを含む一般住人をヤっていく。
初老のボーボーも黙っちゃいない。
かくして“世直しハードコア”と“残虐デス・メタル”との永続抗争みたいな世界に突入する。

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息子二人が発する俗悪な言葉のセリフも笑っちゃうほど育ちの悪さを想像させてキョーレツだ。
scumなクソガキの一人が「俺の犯罪はコミックになる」とうそぶくが、
設定を始めとして漫画のように現実離れしたエクストリーム感覚に持っていかれる。
暴力親子はマッチョ体型と対極で、
殴打や蹴りといった汗をかく体育会系の暴力というよりは、
どちらかというと文化系の手法でドラマチックと言えるほど死に直結するヴァイオレンス。
全編テンポがよくてハジケており、
70~80年代のB級映画から大いに触発されたという
馬鹿馬鹿しくもエネルギッシュでアナーキーな映像展開なのだ。
処刑シーンもショーアップ精神でパワーアップさせており、
ほとんど祭りに仕立て上げていて残虐なエンタテインメント映画とも言える。
こんな痛めつけ方や処刑方法があるのか!と感心もさせられるし、
殺し方などがコミカルにも描かれていて試写会で笑っている人がいたのもうなずける。

だが笑えないほどリアルな作りでもある。
必ずしもメッセージ性を重要視している映画ではないと思うが、
社会性を帯びている。
JOJO広重(非常階段)が歌う「生きてる価値なし」という曲名そのままの連中をホーボーは撃つ。
「どんな場合でも人殺しはいけません」と唱えるのんきな“人権屋”の頭も吹き飛ばしそうな勢いだ。
さすがに今こういった町は世界中で実際に存在はしないだろうが、
個々の残虐行為に関しては、
政治的/宗教的/民族的な理由での処刑や集団リンチで現在も行なわれているものと想像するに難くない。

初老のホーボーは殺人者だけではなく
ヤクの売人もポン引きも幼児愛好者も標的である。
人一倍道徳心に燃える男にも映るが、
「ハゲタカが善人からむしりとる」ことが許せない義憤が根源的なモチーフである。
だが自分もクソガキにヤられたとはいえ、
なぜホーボーの男は自分が直接害を与えられてない連中まで相手にするのか。

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初老のホーボーが助けた娼婦は言う。
「ホーボーはストリートが自分の家。
その家が汚されたらゴミ掃除をする。
ほうきで掃けないぐらい汚されたからショットガンで掃除するしかない」。
シンプルかつ明快で説得力満点の正義の論理である。

チャールズ・ブロンソン主演の一連の“復讐映画”にも通じるが、
初老のホーボーがやっていることはリベンジではない。
自分の身内や知り合いが殺された仇討ちではないのだ。

ホーボーは“仕事を求めるホームレス”だ。
“homeless”は住居がないというだけでない。
初老のホーボーの初老の男の詳しいプロフィールは映画の中でぼかされているが、
家庭を持ってないということを意味する“homeless”でもあると思われる。
大切に思う家族もない。
独りである。
失うものがない人間はヤるときゃ一人。
覚悟を決めた人間は一人でヤる。
“罪”をなすりつけあって傷を舐め合う“共犯者”は必要としない。

だが初老のホーボーにとって、
助けた娼婦は特別な存在になったように映る。
部屋の写真立てに飾る写真がないほど過去に楽しい思い出がない一種の“homeless”な娼婦にとっても、
初老のホーボーが特別な存在になっている。
二人は恋愛関係には見えないが、
心の大切な部分で激しく共振した強靭なソウルメイトであることは間違いない。

気がつけば“同志”になった二人の微妙な切ない関係を味わう間を与えることなく、
最期に向かってものすごい勢いで憎悪が加速する。
ブラスト・ビートの連打の如き最後の最後のスピード感は特に格別。
ラストで何が起こったのか見逃さないように。


★映画『ボーボー・ウィズ・ショットガン』
2011年/アメリカ/86分
シアターN渋谷にて11月26日(土)よりロードショー。
他、全国順次公開
© 2011 HOBO INC. / 3243988 NOVA SCOTIA LIMITED


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コメント

「何も打つ手がないとき 一つだけ打つ手がある。
勇気をもつことである。」って ユダヤのことわざが浮かんできた。
血吹雪も肉塊も受け入れるよ。
行川さんの ネタばれなんじゃないの?! って思うほどのスウィングが 納得できた一品だ。
シアターN渋谷のチョイスはいつもいい。行川さんにも感謝だ。

311の見えない子どもには ショットガンじゃないよね
なんならいいんだろう
この星を守るための血を表現してくれたんだね

書き込みありがとうございます。
>三休さん
そのことわざは知らなかったですが、「スウィング」って言葉を持ってきているのがイイですね。シアターNは支配人が古典的なパンク美学を持っている方で、「シアターNに行けば何かがある!」と思わせる異形の館です。
>そうそうさん
「この星を守るための血を表現」・・・カラダに響く言い回しですね。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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