なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

FIDDLER’S GREEN『Wall Of Folk』

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アイルランド民謡のテイストをまぶした音で走るドイツの“アイリッシュ・フォーク・パンク・バンド”、
FIDDLER’S GREEN(フィドラーズ・グリーン)の11作目。

結成は90年。
現VANQUISH SOUND ENTERPRISEの射延篤史が率いた大阪のGRIFFINが
既にアイリッシュ・テイストのパンク・チューンも披露していた頃だが、
FIDDLER’S GREENがスタートした頃やっていたバンドは世界的にあまりいなかった。
この系統の中で早くから活動していたバンドの一つと言える。

CLASH、POGUES、SOCIAL DISTORTION、DROPKICK MURPHYSとも楽曲的な接点を持ちつつ、
90年代以降のメジャーなメロディック・パンクのわかりやすいテクスチャーの曲も多い。
と同時にヴァイオリンとアコーディオンの専任メンバーも擁し、
アコースティック・ギター、ブズーキ、マンドリン、バンジョーもふんだんに使い、
曲をふくらませている。

ぼくはこのアルバムで初めてFIDDLER’S GREENを聴いたのだが、
奥村裕司執筆の長文ライナーから察するに、
以前よりも“スピード・フォーク”と呼ばれるゆえんの速い曲が減ってヘヴィになったようである。
けど、ぼくはこの方が好みかもしれない。
特にコシの効いたベースの音がヘヴィだ。

20年以上活動しているためか多彩で、
いかにものアイリッシュ・パンクに留まらない。
ちょっとアレンジを変えれば“フォーク・メタル”になる曲もいくつかやっており、
トラッドを取り込んだドイツのフォーク・メタル・バンドIN EXTREMOのメンバーの参加も象徴的だ。
スカ・テイストの強い曲もはさみこみ、
じっくり聞かせるスローな曲もあり、
のんびりした曲あり。
もちろんトラッドのカヴァーもやっており、
アメリカのルーツ・ミュージックをミックスしたバンドと同じような喜怒哀楽の大衆音楽である。

ボストン・ハードコアの血を引くDROPKICK MURPHYSのようなマッチョ・テイストはなく、
メンバーのルックスどおりにヨーロッパの労働者の香りがする。
親玉のPOGUESを筆頭にアイリッシュものというとアルコール浸りのイメージも強いが、
そういう匂いとも一味違う。
とはいえドイツだからビールは欠かせないわけで、
ビール主体の低アルコールがエネルギー源とも想像できる爽快なサウンドだ。
硬質&重厚に聞こえるのは、
普段酔っ払っていてもビシッ!と背筋を伸ばして演奏するイメージのドイツのバンドならでは。
パーティで踊ってもよし、
じっくりスピーカーに向き合ってもよし、
なのである。

歌詞はほぼすべて英語で平易な単語と言い回しを使い、
ストーリーテラー的でありつつ勇気を与える内容になっている。
中でも「Fields Of Green」が一番好きだ。
ボーナス・トラックの方では英語のみのヴァージョンで録音されているが、
アルバム本編では英語とドイツ語を絶妙に混ぜており、
ドイツ語とアイリッシュ・メロディのブレンドでストロングな艶やかさが醸し出されているのだ。


さらに初回生産分には、
昨年8月のドイツのフェス“サマー・ブリーズ・オープン・エアー”におけるライヴを
約45分11曲収めたDVDが付く。
今回のアルバムとは一味違い、
紳士的ながらもイケイケのパフォーマンスを展開していて実にフェスに似合うバンドだ。
お客を左右に分けて曲が始まったらぶつかりあってモッシュするノリも見られる。
激しいメタル系のライヴで行なわれる“ウォール・オブ・デス”ならぬ、
これぞ“ウォール・オブ・フォーク”!である。


★FIDDLER’S GREEN『突っ込め!スピード・フォーク!WALL OF FOLK』(UNCLEOWEN HUCD-10102)CD+DVD
日本盤は、
海外盤のデラックス・エディションのボーナスCD収録の7曲を追加した約69分21曲入りCDと、海外盤のデラックス・エディションのDVD(初回生産分のみ)付きで、
ボーナス・トラックも含む歌詞が載った24ページのブックレット封入のデジパック仕様。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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