なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

STEEL PANTHER『Balls Out』

UICU-1214.スティールハ゜ンサー 鋼鉄の玉!


米国グラム・ロックンロール・メタル・バンドの2年数ヶ月ぶりのセカンド。
前身のカヴァー・バンド時代も含めれば10年以上活動しているだけに筋金入りである。

まず確かな美的感覚をお持ちの方であればジャケットを見ただけで間違イナシ!と確信するであろう。
それは正しい。
エモな風景写真のジャケットの百万倍血湧き肉躍る。
AVのDVDをレジに持っていくより恥ずかしいとも言われるメタルのジャケットだが、
そうであればあるほどメタルとして誇りに思うべきだ。
STEEL PANTHERも、いかがわしさこそがロックンロールであることをわかっている。
インディ・レーベルならまだしも、
メジャー・レーベルでここまでヤるとは大したタマだ。
股間にぶらさげた二つの玉は睾丸を意識したとしか思えない。
タマにこだわるAC/DC直系のアートワークとも言える。
だが日本では金玉なのにここでは銀玉。
なんだかんだ歌っていてもやっぱり女性こそが“金メダル”!と賞賛しているようにも思える。

アルバム・タイトルの『BALLS OUT』は、
“balls-out”だと“ものすごい”“サイコ~~~~の”という意味になるらしい。
これまたグレイト極まりない一貫したセンスである。


愛すべきお馬鹿さん全開の歌詞のテーマは言わずもがな“セックス、ドラッグ、ロックンロール”である。
ヤりすぎ感モリモリのロックンロール・ライフの王道を突き進む。
一日23時間“セックス”がグルグル頭を回っているみたいな内容で、
肉食ヤリチン・ソング・オンリー。
セクシストすれすれというかセクシストど真ん中の“確信犯”だが、
ポルノ・グラインドの先駆者MEAT SHITSみたいに妄想が肥大化して猟奇的に屈折したわけでなく、
露出狂のフルチンみたいにストレートだから音もひっくるめてリアルである。
要はブルースの時代から脈々と流れる“ロックンロールの体液”に忠実なだけで、
パンク/ハードコアを含めてロックのスタイルである限り逃れようがない真実。
理屈で否定しようがカラダが反応するのは性欲と同じようなもんだろう。
多少“fuck”などの言葉を絡めてはいても、
四文字言葉をあまり使わない猥褻ソングをいかにエキサイティングに書くかにも情熱を注いでいる。

んでSTEEL PANTHERの音楽はどうなのかといえば、
この手のイメージのバンドならではの
“気のいいアンチャン”ならぬ“気のいいハード・ロックンロール”である。
地獄の底までキャッチーだ。
JUDAS PRIESTのロブ・ハルフォードが一時やっていたバンドのFIGHTのメンバーだった
サッチェル(g他)をはじめとして演奏のパンチもリズム・センスも言うこと無し。
むろんいわゆるテクニカルなバンドとは違って楽曲重視のプレイだが、
メンバー4人の担当パートのクレジットが
“リード・ヴォーカル”“リード(&リズム・)ギター”“リード・ベース”“リード・ドラムス”
となっているのもハッタリじゃないほど全員がバランスよく目立っている。

単純明快だが手垢と恥垢にまみれた音楽スタイルを古臭く聞かせないためにはかなりのセンスを要する。
STEEL PANTHERはそれをやってのけている。
いきなり激しい前戯で始めてノリノリノリノリで攻め続け、
ソフト・バラードの後戯をしてからもなおボーナス・トラックで休ませない絶倫ぶり。
30年間中古レコード店のLPの100円均一のダンボールに放り込まれていじくられつつも売れず、
レコード盤の形が付いてしまった表裏のジャケットそのままの美学なのだ。

AEROSMITH、MOTLEY CRUE、TWISTED SISTER、RATT、GUNS N’ ROSESといった
この手の王道バンドを押さえつつ、
MOTORHEADとVAN HALEN(デイヴ・リー・ロスのヴォーカル時代オンリー)の精を宿している。
特にデイヴ・リー・ロスのトゥー・マッチな“お祭りスピリット”からの影響が大きいようで、
昔ATOMIC PUNKという名でVAN HALENのトリビュート・バンドをやっていたセンスも人を喰っている。
そんでもってセクシズムを上手にもてあそぶフェミニストのジョーン・ジェット率いる
Joan Jett & the BLACK HEARTSに通じるパンク・ロックンロール感覚があるのも重要。
ヤっちまえ!ってな“男根ソング”のオンパレードと違って突っ込みどころ満載で実は情けなく、
逆に“ファック・ユー!”と中指を立て返されそうなところも実は強みだ。

根っこのテーマはしょーもないものかもしれんが、
「笑わば笑え!」ってな確信に満ちた意志がみなぎっている。
歌詞にはヤバイほど固有名詞も乱発し、
プロゴルファーの“同志”タイガー・ウッズをコッテリと歌い込んだ曲も馬鹿馬鹿しさに満ちている。
このへんの感覚はアメリカンならではの大らかさでジェラシーすら覚える。
12ページのブックレット裏表紙を彩った、
色とりどりのブリーフ姿で“待ち受ける”メンバーの4人の雄姿も実に見事なものだ。


BURRN!誌最新号掲載のインタヴューも実に愉快である。
フールズメイト誌に掲載されるバッドボーイズ・ロック系の日本のバンドのインタヴューに通じる。
いつ何時でも欲望に忠実なエンタテイナーに徹する感覚は万国共通。
“目には目を、歯に歯を”ってな具合に、
死ぬほど馬鹿馬鹿しくなったら死ぬほど馬鹿馬鹿しいコレを聴くといい。
重い鎖から解き放たれる。
知的な観点ではエクストリームに“どーしょーもないブツ”からこそ、
音楽の根源的な力がみなぎる逸物。
感動した。


★スティール・パンサー『鋼鉄の玉!』(ユニバーサル・インターナショナル UICU-1214)SHM-CD
日本盤は本編の歌詞の和訳と2曲のボーナス・トラック付き。
IRON MAIDENのファースト・アルバムの邦題“鋼鉄の処女”に引っ掛けたと思しき
実もフタもない今回の邦題も悪ノリぶりがグッド・ジョブ!である。


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コメント

面白い文章で笑わせてもらいました(笑)
勿論最高な盤ですね。

歌詞的にもちょいと遅い〇ックスマシンガンズを妄想していました(^-^)

こんばんは

僕も「BURRN!」の記事を読ませていただきましたが、
『馬鹿馬鹿しいことを真剣にやっている』彼らの姿が想像できて日頃の鬱憤が吹き飛びそうな面白いインタビューでした。
今度彼らのCDも聴いてみようと思います。

書き込みありがとうございます。
>ITOさん
やっぱり作品の力が文章を書かせるのです。~マシンガンズはエロエロではないかもしれませんが、取り組み方には近いところがありそうです。ぼくも好きですよ。
>JADEさん
「無知」な十代の頃は受け入れられなかったかもしれませんが、真剣に「表現」に取り組んでいるバンドは何か動かすものがあります。彼らはインタヴューもエンタテイメントの一つとして考えてそうです。あなどれません。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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