なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

KORN『The Path Of Totality special edition』

ThePathofTotality Cover_DC


昨年の『Korn Ⅲ: Remember Who You Are』から1年4ヶ月ぶりという、
ビッグ・ネームにしてはハイ・ペースで出したニュー・アルバムの10作目である。
「KORNがこれからも目指す道」とジョナサン・デイヴィス(vo)が言うところの
“エレクトレックなヴァイブのヘヴィ・メタル”がコレだ。
むろんインダストリアル・メタルとはまったく違い、
『See You On The Other Side』(2005年)や『(Untitled)』(2007年)とは似て非なるアルバムである。


統括プロデューサーがジョナサンとはいえ、
曲ごとにSkrillex、Datsik、Feed Me、Excision、12th Planet、Downlink、Kill the Noise、Tylias、Noisiaという、
ダブステップ/ハウス/ドラムンベース畑の面々がエンジニアのジム・モンチと共にプロデュース。
ドラムやベースなどの加工に留まらず、
そのプロデューサーたちも曲作りに関わっていてDJならではの“飛び道具”の音もブチ込んでいるようだ。
当初は一種の企画盤的にEPのヴォリュームでリリース予定だったものを、
それではもったいないとばかりに大胆にもアルバム・サイズに拡大したという。
挑戦的なサウンドにしばし唖然としたが、
ねじふせつつもとろけさせる作りでみるみるうちにハマっていった。

ネズミ花火みたいなアルバム冒頭のリズムにはビックリするが、
もともとビートに対してアグレッシヴな意識のバンドだけにKORNの根本のグルーヴ感は変わってない。
ジョナサンはグルーヴがあるダブステップに惹かれていると言う。
むろんダブステップそのものというよりは
ダブステップのニュアンスを音作りに反映させたサウンドで、
中低音の弾力や“伸び”はダブにも近い。
引きつったエレクトロニクスに導かれたミゾオチ突きの粘っこくもドライな重低音がフィットしている。

ビートがでかくてヘヴィな音だがポップにハジけている。
あくまでもヴォーカル主体の作りだから、
しなるビートが強調されたことで逆にポピュラーな歌メロも浮き彫りになっているのだ。
サードの『Follow The Leader』(98年)が出た頃はぼくも
“変わった!”“セルアウト!”だのと騒いでいたクチだが、
いわば勝てば官軍。
これがKORNだ!と言わんばかりの威風堂々ぶりである。
陳腐な言い方だが何をやってもKORNになる。

スタジオではない様々な場所で録ったヴォーカルもアルバムに使ったのが面白い。
12ページのブックレットのクレジットには、
ツアー中に韓国のソウル、フィリピンのマニラ、日本の東京と大阪のハワイのホノルルなどの
宿泊先でも録音したように書かれており、
ホテルの名前と部屋の番号も記されている。

昔からヒップホップと積極的に交わってきたファットな重低音バンドである一方、
ゴス/耽美系ニューウェイヴの流れもくむわけだが、
元BAUHAUSのピーター・マーフィーから“ゴスっ気”と“イギー・ポップさ”を抜いたような
艶っぽいヴォーカルも冴えわたる。
昔みたいな妖気は吹っ切って
まっすぐ前を見て歌っている声に確信を感じるのだ。

オリジナル・ブックレットには載ってないが、
最近は歌詞を公表するようになったことも大きな変化だろう。
今回のアルバムも挑発的な物言いをキープしつつ意志が宿る実にいい歌詞だ。
息苦しい狭い世界で愚痴垂れている卑屈バンドとは百万光年かけ離れた開放感。
“皆既食が見られる範囲”というスケールが大きい意味深なアルバム・タイトルも妙にハマっている。



以上は通常盤の『The Path Of Totality』も同じだが、
ある程度熱心なファンであれば迷わずDVD付のスペシャル・エディションを買うことをオススメする。
『The Encounter』というタイトルが付けられたこの112分のDVDは、
アルバム本編のメイキング映像や近況インタヴュー、自分の子供と戯れるシーンなども含みつつ、
5つのジャム・セッションを含めて21曲を披露したライヴがほとんどを占める構成だ。
ライヴといってもフツーのステージではなく、
だだっ広い小麦畑に地平の高さの“特設ステージ”を設置した観客ゼロの野外ライヴなのだ。

PINK FLOYDの『Live At Pompeii』に触発されたとのことだが、
しかも場所はKORNの故郷のカリフォルニア州ベイカーズフィールド。
ビルが立ち並ぶ地域もある街だが、
“パン屋さんの野原”という地名どおりに見渡す限り小麦一色の畑でのライヴで、
KORNがどういう“土壌”から産まれたのか感じ取れるだけでもかなり興味深い。
様々な意味で国の大半が田舎とも言えるアメリカを象徴する光景だし、
こういうビッグ・スケールのバンドはこういうところだからこそ生まれ得たとも思える。
さらに上空から見たら遺跡みたいな“ミステリーサークル”までこしらえて気分を高める。
以上の設置過程も映し出している。

決行は夏至の日。
太陽の照らし方も奏功して土も含めてまさに小麦色で一色になった夕刻近くに演奏をスタートさせて、
陽が沈んだら満月の光も味方につけてライヴを続行というドラマチックな展開も心憎い。
ヘリコプターからも撮影するなど多彩なカメラ・ワークでKORNを捕らえている。
コーラスも取るサポート・キーボード・プレイヤーとサポート・ギタリストを加えているが、
観客がいなくても、
いやもしかしたら観客からのフィードバックがゼロだからこその自由なパフォーマンスにも思えるほど、
本編とは打って変わってナマな仕上がりだ。

『Korn Ⅲ: Remember Who You Are』の曲が多めだが、
まんべんなく曲をセレクト。
まさに自分たちのために組んだセットリストである。
『Korn』の曲も「Need To」「Clown」「Shoots and Ladders」はやって「Blind」はやらず、
セカンド『Life Is Peachy』の曲もやってない。
前作の曲「Are You Ready To Live?」の最後が、
ファーストの最後みたいな状態にジョナサンが突入するシーンも見逃さないように。

ジョナサンもギターを手にし、
人前で披露するのは初めて繰り広げたKORNのジャム・セッションも興味深い。
これまたPINK FLOYDの影響でやったとのことだが、
ややGRATEFUL DEAD風でもあり、
ゴシック・ロックやノイズやダブも混ぜた初々しくもストレンジなインプロヴィゼイションが楽しめる。

それにしても王者の風格が漂っている。
98年にインタヴューした際に「なんだコイツ!?」と思わせたマンキィ(g、vo)もフィールディ(b)も、
凄みのあるロックな風貌にシフトしている。
怪物ぶりに惚れ直した。
音響的にもパーフェクトで、
でかいスクリーンでも見たい記録映画とも言うべき作品のDVDである。


★KORN『ザ・パス・オブ・トータリティ~スペシャル・エディション』CD+DVD
CDと約112分のDVD(日本語字幕を出すことも可能)の2枚組の3面デジパック仕様。
全体の流れを損ないそうだから外したと思われる捨て曲ではない限定盤用のボーナス・トラック2曲に加え、
日本盤CDはさらに1曲本編のリミックスを追加した約48分14曲入りで、
リミックス以外の13曲分の歌詞と和訳付。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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