なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

PASTELS/TENNISCOATS『Tow Sunsets』

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イギリスのPASTELSと日本のTENNISCOATSが作ったアルバム。
うたた寝して眠っているうちに意識が覚めていくような秀作である。


PASTELSは英国北部スコットランドのグラスゴー拠点のバンド。
80年代初頭から活動していることを思えば、
TEENAGE FANCLUBやMOGWAIを呼び込んだひんやりしたグラスゴー・シーンの“裏番長”だ。
曖昧模糊とした“インディ・バンドのジャンル”のバンドと思われていることに辟易しているようだが、
ギター・ロックとも言えない自由な音楽活動のアティテュードだからこそ、
あの界隈のシーンの象徴にもなっているのだろう。
硬質なハードコアとは逆のベクトルで70年代のパンク・ロックの音や姿勢を極めているとも言える。
悠々自適なバンドだけに、本作はPASTELSの12年ぶりの“新作”としてもちょっとした話題である。

TENNISCOATSは日本だとカタカナで“テニスコーツ”と表記されることが多い東京のデュオ。
90年代の後半からゆっくりとゆっくりとその名が広まっていった。
さやとウエノで構成されているが、
さやは米国を拠点とするDEERHOOFのサトミとのデュオ・ユニット“わんわん(ONEONE)”で、
佳作『アオーン』をリリースしたばかりである。

PASTELSと日本との関係は、
自分たちのレーベルのGeographicから、
MAHER SHALAL HASH BAZの作品を何枚もリリースしている流れでゆっくりと加速し、
東京の“とあるシーン”とはここ10年ぐらいの間に交流を深めているようだ。
だからスコットランドをツアーしたTENNISCOATS側からアプローチしたという今回のCDも、
自然な成り行きにも見える。


“PASTELS/TENNISCOATS”という名義が示すように、
コラボレーションとは言い切れないアルバムで、
かといってスプリット・アルバムというわけでもない。
曲によってプレイしているメンバーや作曲者が異なるし分かれて作った曲も多いが、
それも自然の摂理に思える溶け込みようだ。

半数の曲でさやが歌うからけっこう日本語が目立つ。
いい感じでおぼつかない彼女の歌いまわしが聴きどころのひとつである。
楽曲的にはVELVET UNDERGROUNDの『Velvet Underground』や『Loaded』、
ルー・リードの70年代のソロ・アルバム(特に『Rock And Roll Heart』までの静かな曲)の、
“sad rock’n’roll”をも思わせる。
むろんローファイを狙ったわけではない。
むしろ秀逸なマスタリング効果も相まって音は研ぎ澄まされているし、
ルーズなパフォーマンスとは完全に一線を画している。

PASTELSと同郷のTEENAGE FANCLUBのノーマン・ブレイクとジェラルド・ラヴも参加。
このへんのバンドはまったりしたイメージもあるが、
ゆったりしているとしてもゆるいとは言い切れない。
なにしろ静かなる緊張感がじわじわとからだのなかにはいってくる。
なぜなら音楽にしっかり向き合っている人たちだから。

同じスコットランド出身のJESUS AND MARY CHAINの「About You」もカヴァー。
「Sodane」には工藤礼子が参加している。
このあたり人たちの固有名詞が違和感なく並べられるのもPASTELSとTENNISCOATSのCDならでは。

わざとらしいギミックや作為がない。
だから二組の息遣いがそのまま伝わってくる。
ポップかつソフトでありながらサイケデリックといえるほどディープな表現に、
はっとさせられるのだ。


●パステルズ/テニスコーツ『トゥー・サンセッツ』(Pヴァイン PCD-93259)
日本盤独自のアートワークで、
ざらついた手触りの紙ジャケット仕様で緑色の発色が素晴らしい。
紙にすればいいってもんじゃないけど丁寧な作りに目を見張るし、
手元に置いておきたくなるさりげない存在感がある。
それもまたパステルズとテニスコーツらしい。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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