なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『断絶』

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最新作『果てなき路』と日本同時再公開となる、
米国生まれのモンテ・ヘルマン監督による71年のロード・ムーヴィー。
今回はニュープリント版での上映である。
原題は“Two-Lane Blacktop”。
その“2車線のアスファルト舗装の道路”というシンプルなイメージのハードボイルドな映画で、
原題のハードコアな響きどおりの作品だ。

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主な登場人物は4人。
●当時脚光を浴び始めていたシンガーソングライターのジェームス・テイラー。
チャールズ・マンソンとの交流や泥酔溺死でBEACH BOYSの“黒の歴史”の数ページを彩った、
ドラマーとしても知られるデニス・ウィルソン。
●役柄そのままのヒッピー少女で、
79年に当時別れていたアート・ガーファンクルと暮らしていたアパートで自殺したローリー・バード。
●『さすらいのカウボーイ』(71年)などで知られ82年に心臓発作で急死したウォーレン・オーツ。

今となってみればとも言えるが、
少なくてもジェームス・テイラーとデニス・ウィルソンが両脇を固めた映画というだけで、
ヤバイ匂いが天から降ってくる。

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人物それぞれの名前は前述の上から順に、
“ザ・ドライヴァー”“ザ・メカニック”“ザ・ガール”“GTO”。
そのまんまである。
記号的な名前を付けることによって一人一人の過去も人格も削ぎ落とされている。
余計なキャラや情緒を強調もしない。
今現在の肉体しかない。

レース用に改造された55年シェビーに乗ったザ・ドライヴァーとザ・メカニックが
深夜のストリート・レースで儲けた掛け金を手にLAを飛び出し、
途中で乗り込んできたザ・ガールと共に
賭けレースの相手を探して南東へと走る。
まもなくガソリンスタンドでボンティアックGTOに乗る中年男性と出会い、
お互いの車を賭けた長距離レースに突入。
決してコメディではないが、
中年の車には様々な人生を歩んできた人間が短時間乗っては降りるなど、
すったもんだで話は進んでゆく。

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『イージー★ライダー』の商業的な成功の勢いに乗ってアメリカン・ニューシネマの流れをくんで
大メジャーのユニヴァーサル映画が仕掛けた映画らしい。
いわば車が主人公でスピード命の映画とも言える。
車に乗る人、
特にカー・マニアならばアドレナリン噴出打ち止め無し必至の専門用語頻発で責めてくる映画でもある。
でもいわゆるハリウッド映画の王道の単純明快な内容ではなく、
車は登場人物たちと同じく一種の“素材”だ。
当時商業的に失敗したという。
それは抽象的とも言える不確実なストーリーゆえにも思えるが、
もやもやした画質も相まって終始嗅覚もくすぐるサイケデリックな映像美が際立ち、
爆音の轟きが肝という点も含めて90年代以降のストーナー・ロックに直結する。

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『イージー★ライダー』のテーマは、
最近だとEDDIE AND THE HOT RODSもカヴァーしたようにロック・スタンダードになっている、
STEPPENWOLFの曲「Born To Be Wild」に集約されていた。
主に使われている音楽がカントリーなのは監督の趣味なのかもしれないが、
『断絶』はそういう観点ではストレートなロック映画とは言い切れない。
走りのシーンはスピーディーで
リメイクされるのであれば是非FU MANCHUを音楽に使ってほしいほどだが、
合間合間のまったりタイムはカントリー・ミュージックの風情。
その侘び寂びの具合は、
ベトナム戦争末期の泥沼から抜け出られなかった当時のアメリカの“たそがれ”にも感じられる。

だが手口ナシではない。
そこを突破する。

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一つ一つの事物ののんびりした佇まいで当時のアメリカの田舎や地方都市の風物詩も堪能できる。
たとえばコカコーラのレギュラー・サイズ(死語)をボトルのままゴクゴク喉を潤す光景は、
あの時代だったら日本でもフツーとはいえ今となってみれば素朴でクール極まりない。
もっと言えばアメ車自体もアメリカン・ドリームと併走した古き良きUSAのロマンチックな象徴で、
そういった点も含めて今となってみればアメリカとして“行き先のわからない道”の映画である。

つまり冒頭で言及したヘルマン監督の最新作『果てなき路』の原題のフレーズである
“Road To Nowhere”を30年前に体現していた映画と言える。
その主なロケ地になったノース・カロライナ州で主演のジェームス・テイラーが育ったことも、
むろん偶然ではない。

すべてはつながっているのだ。


★映画『断絶』
71年/アメリカ/カラー/102分/シネマスコープ/35mm
2012年1月14日(土)より、
渋谷シアター・イメージフォーラムにてモーニング&レイトショー公開。
www.mhellman.com
(C) 1971 Universal Pictures and Michael Laughlin Enterprises Inc. All Rights Reserved.


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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