なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

DEATH『Individual Thought Patterns』(リイシュー盤)

DEATH『Individual Thought Patterns


米国フロリダ出身のデス・メタルの先駆者であるDEATHの93年リリースの5作目が、
2枚組CDの体裁でリイシュー。
エンジニアの言葉を借りれば、
「rawで密度の高いアレンジにハイライトをつけるように
オリジナル・プロダクションの意図を維持したまま」リミックスとリマスタリングが施されている。
プロデュースは前作『Human』(91年)に引き続き、
フロリダのデス・メタル・サウンドを作り上げてきたスコット・バーンズである。


本編ディスク1のチャック・シュルディナー(vo、g)以外のメンバーは、
『Human』でも弾いていたSADUSのスティーヴ・ディジョルジオ(b)、
KING DIAMONDでお馴染みのアンディ・ラロック(g)、
元DARK ANGELのジーン・ホグラン(現FEAR FACTORY)。
人が流動的なDEATHの中では比較的パーマネント・メンバー的だったジーンの加入は特に大きい。
いわゆるプログレ系のテクニカルな演奏者というよりは豪腕ドラマーだから、
テクスチャーの複雑さを増したチャックのソングライティングが上手く中和しているのだ。
テクニカルな路線に本格進化したアルバムとも言えるが、
入り組んだリズムを随所に噛ませながら約40分10曲に凝縮されている。

デス・メタルがメロディアスに進化した形としては
中~後期のCARCASSや AT THE GATESなどが代表的だが、
ハードコア・パンクの直情性も糧にした彼らとは“生まれ”が違う。
中期以降のDEATHがDARK TRANQUILLITY以降のメロディック・デス・メタルとも一線を画すのは
既成のロックのフォーマットに留まらないリズムの多用ゆえのことだ。
だからバンド名は知られていても音楽的にマニアックなイメージも湧くが、
それはDEATHをDEATHたらしめる気高い存在に推し進めた一因でもあったし、
デス・メタルを遠ざけるようなヘヴィ・メタル・ファンをも引きつけてきた主因でもある。

メロディの強化も著しいアルバムだ。
リーダーチャックのルーツは
あくまでもオーソドックスなヘヴィ・メタル/ハード・ロックだから、
複雑な展開を組み込んでもそのラインから外れて迷子にさせるような曲ではない。
音の透き間を活かした作りにより、
高速の綱渡りみたいな緊張感のデリケイトな演奏も露わになっている。
まさに内側から紡ぎ出しているストイックな音。
前よりも流麗なギター・ソロが目立ち、
研ぎ澄まされたスラッシーなパートとのブレンドが素晴らしい。
そこにジャズ風のうねりを内包しながら浮遊するフレットレス・ベースが絡み、
腕っ節の強いドラムもナマの音で手足を駆使しつつ風通しのいい空間を作り出している。

内面と向き合って掘り下げる歌詞も多いDEATHだが、
このアルバムは“業界”との軋轢がモチーフの曲も含むようだ。
とはいえ普遍的に言葉を綴っているから社会的ですらあり、
血へドを吐くように喉を振るわせて嫌悪を吐くデリケイトな響きは世のデス・ヴォイスとは違う生々しさ。
秀逸なアルバム・タイトルも、
“individual(個人)”と“mass(集団)”の関係を例年以上に考えさせられた年にふさわしい。
全体が自己を研ぎ澄ました気高さ。
いい意味でアルバム全体がアートとしても評価されてしかるべき作品である。
だが上辺しか見てない世の音楽シーンから黙殺されることで逆に、
他のデス・メタル・バンドと同様にDEATHも強度をキープしてきたのであった。


ディスク2は93年4月にドイツで行なったライヴ10曲と、
本作のレコーディング中でアルバムから漏れた曲「The Exorcist」を収録した約51分11曲入り。
前者はリリース2ヶ月前のライヴだから『Individual Thought Patterns』の曲は3曲だけで、
セカンド『Leprosy』(88年)のアルバム・タイトル曲から始めて
『Spiritual Healing』(90年)の2曲と『Human』(91年)の3曲をはさみ、
デビュー作『Scream Bloody Gore』(87年)の「Zombie Ritual」で終える。
ざっとDEATH史が俯瞰できるセットリストだからこそ、
根本的に大きく変わってないことが体感できるライヴだ。
スラッシュ・メタルも元とはいえ何もない地平からデス・メタルを創造した粘っこい音の息吹が、
生々しく伝わってくる。
むろん音質良好。
ギターをFORBIDDENのクレイグ・ロンセーロが弾いているのも興味深い。

最後に入れているアウトテイクの「The Exorcist」はインスト・ヴァージョンだが、
ジーン・ホグランがギターを弾いたPOSSSESSEDの必殺カヴァーである。


★デス『インディヴィジュアル・ソート・パターンズ』(リラプス・ジャパン YSCY-1231)2CD
ロゴとアルバム・タイトル部分が光る特殊加工のスリップケースにプラケースを収納。
ジーン・ホグランの音楽的でファニーな長文も含む3者によるたいへん興味深いライナー、
歌詞、メンバー写真、フライヤーで彩った24ページのオリジナル・ブックレットに加え、
日本盤は膨大な英文ライナーと歌詞の和訳付。


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コメント

このCD、もう手に入らないみたいです。
HUMANの時も思ったのですが、廃盤(?)になるのが早すぎます。

774さん、書き込みありがとうございます。
米国のRELAPSE Records発売のものは入手可能みたいですが、リラプス・ジャパンの人に訊いてみます。

リラプス・ジャパンの人によれば、現在(国内で)品切れ状態が続いており、これ以上オーダーが来ないように一時生産中止の状態になっていて(厳密には廃盤状態ではないとのこと)、再入荷次第生産中止ではなくなり通常販売されるらしいです。ただ、まだ再入荷が未定の状態なので、そのような処置をさせていただいるとのことです。

わざわざお調べして頂き本当にありがとうございます。
なんとかして手に入れる事が出来ました!
サウンドがかなりクリアになっていますね。音の分離も良くなっているのが嬉しかったです。

774さん、書き込みありがとうございます。
入手できてよかったですね。DEATHのようなバンドはクリアーな仕上がりが似合うかと思います。クリアー=クリーンではないですから。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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