なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

BURZUM『From The Depths Of Darkness』

From the Depths of Darkness


あらゆる意味でブラック・メタルの象徴と言えるノルウェーの男性のユニットBURZUMの再録音盤。
92年にレコーディングした最初の2作のフル・アルバムである
『Burzum』から6曲と『Det som engang var』から2曲を抜粋して昨年3月にリレコーディングし、
3曲のミニマルな“イントロダクション”を加えて作品化した約63分11曲入りである。


狙ったのか偶然だったのかは不明な極端にrawなオリジナル・ヴァージョンとは当然まったく違い、
現在進行形の鳴りになっている。
むろん一般の音楽の基準からすれば凶暴極まりないサウンドだが、
かつてのBURZUMの音源を知る者であればこれでも十分洗練ってことになる。
基本的なアレンジはほとんど変えず、
さすがに今年リリースした最新オリジナル・アルバム『Fallen』で大幅に導入した
“非スクリーミング・ヴォイス”もほとんど使ってないが、
音質がクリアーでどの曲も格段に聴きやすくなっていて“リメイク”と呼ぶのがふさわしい。
新たに流れを作った全体の構成も含めて新しいアルバムと言ってもいいだろう。

プリミティヴなオリジナル・ヴァージョンが内包した近寄っただけで抹殺されそうな妖気はない。
19年前のアルバムが切れ味の悪いノコギリでギザギザに切り刻むような音だったのに対し、
こちらは鋭く磨ぎ抜いたサーベルでまっすぐ切り落とすような音。
要は惨殺される側の痛みの質が違うだけである。

メランコリックなトーンに覆われ、
この8ヶ月後にレコーディングした『Fallen』を作る前の“助走”のような研ぎ澄まされた佇まい。
言うまでもなく刺々しい金属音でビリビリ痺れる曲も含まれているが、
少なくても“ブルータル・ブラック・メタル”ではない。
“シューゲイザー・ブラック・メタル”との接点も見えてくる音も聞こえてくるし、
ドゥーミーなパートも聞こえてくる。
後身バンドのNEW ORDERと共にナチ周辺の言葉のバンド名で接点もうかがえるJOY DIVISION、
さらにサード以降のKILLING JOKEやAMEBIXなどの非メタル系ダーク・サイドのバンドの薫りもする。

ブラック・メタルと言われてはいても
BURZUMはもともとコテコテのヘヴィ・メタルな曲ではなかった。
だが本作は構築的な音のテクスチャーのためメタル度も高くもなっており、
ギターはトレモロだけでなく昔のヴォージョンよりリフも目立つ。
英語のタイトルの曲に焦点を絞ったのも
セカンドの「Snu Mikrokosmos Tegn」を「Turn The Sign Of the Microcosm」という曲名に変えたのも、
英語圏との接点狙いを感じさせる。

当時の音質は劣悪だったが緻密に作られていて実はフック十分の昔の楽曲を
まったく違ったプロダクションで録音してみたかったという、
ミュージシャンシップの表れとも思える。
その結果、
浮き彫りになった切なくも潔癖なメロディ・ラインをはじめとして楽曲の良さを再認識もさせる。
“ピューリタン”なほどの美しい旋律が逆に怖くもある。
音楽をヤリ捨てにすることはない。
音楽に対する誠意に満ちている。


今夏ノルウェーの島で極右の男が一人で
80人近くの少年少女を1時間かそこらで次々と射殺した事件が起きたニュースを知ったとき、
同国のNS(National Socialist~国家社会主義者)ブラック・メタルを想起したのは
ぼくだけではないだろう。
その事件と関係あるわけではないが、
本作も遠くない荒涼とした冷気に覆われている。

付和雷同の集団に個人は押しつぶされる。
だからBURZUMも“共犯者”を求めない。
だからBURZUMも一人でヤる。

鬱であればさせるほど外に向かいたくなる。
そこを突き抜ければ気力が湧いてくる。
これは曲名から引用すれば“Key To The Gate”であり“My Journey To The Stars”の音楽だ。
殺意を鎮めて気持ちを落ち着かせるヒーリング・ミュージックであり、
ぼくにとっては希望のアルバムである。
アルバム・タイトルどおりに
“暗黒感情のどん底から”這い上がってきたかの如き肯定的な響きをたたえているからだ。


いつのまにかヘヴィ・ローテーションになっている一枚。


★BURZUM『From The Depths Of Darkness』(BYELOBOG PRODUCTIONS BYE009CDS)CD


スポンサーサイト

コメント

いつの間にかヘビーローテーションって凄いと思いますよ(笑)
ヘビーローテーションしたことは正直、ないです...。


私事ですが、最近のヘビーローテーションはMEGADETHの新譜ですね(^-^)

ITOさん、書き込みありがとうございます。
レコードはじっくり向き合って聴くことも多いですが、CDはリピートで流しっぱなしのことも多いです。ルー・リードの『Metal Machine Music』やSLEEPの『Jerusalem』もそうですが、これもそういう聴き方できます。
MEGADETHの新譜も良作ですね。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/639-1c53d6f2

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (295)
映画 (262)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (48)
PUNK/HARDCORE (420)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (99)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (124)
FEMALE SINGER (43)
POPULAR MUSIC (27)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん