なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

Keiji Haino, Jim O’Rourke, Oren Ambarchi『またたくまに すべてが ひとつに なる だから 主語は いらない(in a flash everything comes together as one there is no need for a subject)』

keiji-haino_jim-orourke_oren-ambarchi.jpg
以下の文章は当初このブログで紹介しようと昨年5月に書いたにもかかわらず、
急遽ミュージック・マガジン 2011年7月号の“輸入盤紹介”コーナーに別の内容で書いたため
お蔵入りにしていたもの。
ページを割いてもらっている他の媒体に対する敬意と礼儀もあって
同時期に同じものに関する文章を露出させることは原則的に控えていて、
そんなこんなでupを見送っているうちにすっかり忘れてしまっていた。
まだどうにか入手できそうなレコードでもあるから、
8ヶ月のタイムラグの部分を手直しした上で蔵出しさせていただく。
昨年の年間ベスト・アルバムの一つでもある。

★★★★★

灰野敬二、ジム・オルーク、オーレン・アンバーチによる、
一昨年1月の六本木スーパーデラックスでのライヴから抜粋してまとめた2枚組LP。
むろん2009年の同地でのライヴが入っている『Time Formosa』とはまったくの別内容で、
そのCDと同様にSUNN O)))の初来日公演にも胎動したオーレンのレーベルもリリース元のひとつだ。


灰野はギター、ヴォイス、ラップ・スティール、エアー・シンセ、
ジムはベース、
オーレンはドラムを担当。
この日ぼくもこの現場で観ていたが、
編成からして“あー、また不失者をやろうとしている……”と思った。

不失者は70年代の末にギターを手にして灰野が始めた“ロック・バンド”。
たくさんのプロジェクトをやってきている灰野の正真正銘のリーダー・バンドが不失者で、
メンバーの脱退と死去も重なって2000年代半ばから実質的に不失者が活動停止状態だった。
一昨年9月に工藤冬里と高橋幾郎とともに大阪で
昨年7月にはAKRON/FAMILYのサポート・アクトでナスノミツルと高橋幾郎とともに東京で
不失者名義のライヴをやってはいるが、
今回みたいな一種のセッションでも“withベース+ドラム”の編成だと、
本人が無意識だとしても不失者を意識しているように見えることがよくあった。
“これ不失者にしてもいいのでは?”と提言したくなるセッションもある。

ただしこの夜は昔からお馴染みの灰野の“キャッチーな曲”の数々はやってない。
リフで進める“ハード・ロック”風の歌ものはなく、
フリー・ジャズ的な加速度の曲と静かなパートを活かした曲で進める
だがもちろんブルースが震えている。
かつて灰野が不失者に名づけた“ロックの逆襲”という呼び名がふさわしい。

日本の年下のミュージシャンが一緒にやると灰野に気後れして、
否応なく妙な駆け引きをしながらのプレイを強いられるように見えることも多い。
仕掛けようとする灰野が結果的に従わせているように見えてしまうライヴも見受けられるが、
年上や外国のミュージシャンとのプレイにグレイトなパフォーマンスが目立つ。
細かいニュアンスまで言葉がストレートに通じないからこそホントに音だけで対話するというのも大きい。
ジムもオーレンも灰野とそれなりに共演してきている間柄だし、
だからこのステージはセッションというよりは“バンド”に見えたとも思う。

大半のライヴと同じくジム・オルークはこの晩も椅子に腰掛けて演奏していたが、
たとえロックな音楽がやられていたとしても
最近は彼が関わるとポスト・ロックな匂いがしてくることが多い。
“エコなプロデュース”が得意でロック感を消す“潔癖症”の坂本龍一に通じる。
だがこのライヴは灰野とオーレンが濃いからそうはなってない。
ナマで観たときも思ったが、
特にオーレンのドラミングがカッコいい。
レコーディング・レベルが高くて音質も良好。
音に命が宿り得ることもわかる。

SUNN O)))の主要メンバーの一人として知られ
“灰野ヲタ”でもあるスティーヴン・オマリーによるデザインの二つ折りジャケットは、
厚手の紙の質も味わい深くて和風の画も活きている。
その内側のモノクロのライヴ写真がちりばめられ、
2枚のLPを収めたインナー・バッグは一人一人のライヴ・カラー写真で彩られ、
ビッグ・サイズだから見どころ十分でトータル・ワークとして素晴らしい作品だ。
灰野が昨年4月にSUNN O)))とRoadburnで合体ライヴも決行した直後に会ったとき、
「音がでかかった(笑)」とうれしそうに話していたことも付け加えておく。

真正のサイケデリックなのは当たり前。
最高にカッコいいヘヴィ・ロックである。


★Keiji Haino, Jim O’Rourke, Oren Ambarchi『またたくまに すべてが ひとつに なる だから 主語は いらない(in a flash everything comes together as one there is no need for a subject)』(A BLACK TRUFFLE/MEDAMA BT05/mr02)2LP
灰野が付けたタイトルがA~D面に付けられているが、
何曲入りかの断定は不可能な約75分間である。


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コメント

あけましておめでとうございます!

はじめまして、音楽文士志望の淳子といいます。
短大に通いながらライター講座を受けていますが、あまり役に立つとは思えません。
もし行川さんが文士講座を開催するとしたら、どんなカリキュラムを組むでしょうか?

淳子さん、書き込みありがとうございます。
考えたこともないのでなんとも言えないです。スイマセン。原稿の締切日には遅れるな!ということはスパルタで叩き込むかもしれませんね。遅れておごり高ぶっている人が多いんで。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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