なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『アニマル・キングダム』

『アニマル・キングダム』メイン


『メタルヘッド』の脚本を書いたデヴィッド・ミショッドの初の長編監督作品であり、
自ら脚本も書いた2010年のオーストラリア映画。
クエンティン・タランティーノが年間ベスト3に選んだ映画とのことだが、
それはともかく否が応でも
BRUTAL TRUTHの97年のアルバムのタイトル『Sounds Of The Animal Kingdom』を思い出すし、
テーマは違えど入り組んだテクスチャーでは相通じる映画だ。
主人公のジョシュアを演じるのは本作でデビューしたジェームズ・フレッシュヴィル。
“極悪祖母”の役はオーストラリアを代表する女優のジャッキー・ウィーヴァー、
その長男の役はオーストラリアの名優のベン・メンデルソーンが熱演している。

『アニマル・キングダム』サブ02

母を亡くして17歳のジョシュアが引き取られた祖母の家は、
母の3兄弟が住み出入りしていたが、
彼らが繰り広げる強盗や麻薬取引の“拠点”でもあった。
祖母は直接関わらないにしろそういった犯罪をフツーの職業のように半ば認知し暗黙のうちに支援。
そんな環境でジョシュアはマトモな生活を送りようもなく、
叔父と伯父の犯罪に囲まれていく。
警察は一家に目をつけていて容赦ないが、
ジョシュアの不遇を案じて保護して味方につけるも、
それは一家に悟られる。
復讐が復讐を生み、
疑心暗鬼が疑心暗鬼を生む中、
恋人も巻き込まれたことでジョシュアは一念発起。
ストーリー重視の映画だから“ネタバレ”はここまでにしておく。

“身内”の強い絆が罪と“もろさ”をはらむことも示す映画だ。
甥だろうと伯父だろうと信頼関係が崩れて不実が発覚したら銃弾が黙ってない。
親の“愛”は、
身内以外のことなんか知ったこっちゃないだけでなく必ずしも本人のためにもならないことも示唆する。
それは真正面から向き合わずに結局は“個”を抹殺しているに他ならない。

『アニマル・キングダム』サブ01

そんな中でも、
いやそんな中だからこそ“個”を磨き上げたのが主人公のジョシュア。
17歳とは思えぬ雰囲気のジョシュアの落ち着いた佇まいが見どころの一つである。
彼を演じたジェームズ自身も『アニマル・キングダム』の撮影当時17歳だったというから驚きだ。
この映画の中でジョシュアの生い立ちは詳しく語られないが、
ハードな母子家庭の中で鍛え上げられたがゆえか甘えと無縁で、
ガキっぽさを売りにした幼稚なティーンエイジャーとは別世界の人間に映る。
静かなる、
しかし強靭な生存本能に突き動かされているのだ。

誰もが犯罪に巻き込まれ得るわけで、
それぞれの立場、
特にジョシュアのシチュエーションに置かれたらどうなのかも考えさせられる。
身内の思惑に囲まれた中で意思は貫けるのか。

ホラーな残虐シーンはほとんどなく、
サスペンスものとしても楽しめる映画だ。


★映画『アニマル・キングダム』
2010年/オーストラリア/英語/カラー/ 113分/35mm/シネスコ/ドルビーデジタル、ドルビーSR/
配給:トランスフォーマー
公式HP:www.ak-movie.com  公式twitter:twitter.com/#!/AnimalKingdomJP
1月21日(土)より、TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか、全国順次ロードショー。
©2009 Screen Australia, Screen NSW, Film Victoria, The Premium Movie Partnership, Animal Kingdom Holdings Pty Limited and Porchlight Films Pty Limited.


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コメント

ぶらぶらと近所のレンタルショップの新作コーナーを物色していたところ『あっ!やっと出たか。』発見して即レジへ。身を正してじっくり観ました。
まず、主人公のジョシュアの目が印象的でした。感情が無いような、しかし時折見せる憎しみに満ちたあの目。
もちろん役の演技なんでしょうが、それが逆に凄いと思いました。ハードな環境で育った青年役を完璧に演じていたと思います。
最後は自らの手で復讐を遂げますがその後が気になります。あの家に留まってあの祖母と暮らしていくのかな・・・。
文中にもあるように確かにあの環境に自分が置かれてしまったら・・・、考えてしまいますね(私はアル中の漁師集団の中で十代を過ごしたのですがその環境が嫌で嫌で・・・)
今回もこのブログのおかげで素晴らしい一本に出会うことが出来ました。本当に感謝です。
今後も楽しみにしております。

chumbaさん、書き込みありがとうございます。
ブログで書いて、時間が経ってから見てコメントいただけるのも格別なものがあります。
やっぱり目ですね。極限までいった人間の目という感じです。終盤のリアルなシーンを思い出しました。最後の続きは御想像におまかせしますなのでしょうが、それも映画の楽しみですね。
chumbaさんが育った環境も凄まじそうですね・・・。自分から望んで入った集団ではなく、否応なしに置かれた環境がクレイジーだと様々な意味で<闘い>になりますね。と同時にそこで鍛えられる部分も大きいかと思います。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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