なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

CRIPPLED BLACK PHOENIX『The Resurrectionists & Night Raider』

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これまたリリースされてから多少時間は経過しているが、やっと聴いた。


英国のスラッジ・コア/ドゥーム・メタルとポスト・ロックは、
犬猿の仲とまで言わなくても水と油かもしれない。
邪悪系とオルタナティヴ系のお里の違いは種族の違いにも通じるほど厳然として存在するから。
ただそういうジャンル名はロックの細胞分裂に伴って半ば致し方なく便宜的に付けられたもので、
表現意欲が旺盛で誠実なミュージシャンであればどんな場だろうが一人一人が“個”として屹立する。
だからこういうケミストリーが生れるのだ。


元IRON MONKEYでELECTRIC WIZARDの二代目ドラマー(2003年の『We Live』の頃)だった、
ジャスティン・グリーヴスが中心のバンド。
元NAPALM DEATH/現CATHEDRALのリー・ドリアンや、
SUNN O)))他のグレッグ・アンダーソンとスティーヴン・オマリーとのプロジェクトの、
TEETH OF LIONS RULE THE DIVINEで不朽のスラッジ名盤『Rampton』を作った人でもある。
CRIPPLED BLACK PHOENIXでは曲作りからコンセプト立てまで一人でやっている。

曲によって参加者は異なるが、
本作でメンバーとして他にクレジットされているのは以下の4人。

まずはMOGWAIのベーシストのドミニク・アイチソン。
リーダーのスチュアート・ブレイスウェイトにインタヴューした時の話によれば、
MOGWAIはメンバー全員がSLAYERの音の大ファンだが、
特にドミニクはヘヴィ・ロック好きでMOGWAIのゴリゴリの曲は彼のアイデアによるところが大きいという。

さらにドゥーム・メタル・バンドのPANTHEISTでも弾いているKostas Panagiotou、
ソロやGONGAでの活動でも知られるシンガーのJoe Volk、
PORTISHEADのアルバムでもチェロを弾くCharlotte Nicholsが中核メンバーだ。

リリース元は今回もPORTISHEADのジェフ・バーロウも設立者の一人であるInvada Recordsからで、
前作に引き続き本作でもジェフは少しだけプロデュースに携わっている。
レコーディングは主にブリストルで行なわれ、
さらにMOGWAIの拠点のグラスゴー、
そしてアメリカでも少々録音された。


実のところ『The Resurrectionists & Night Raider』は、
今春発表した11曲入りのセカンド・アルバム『200 Tons of Bad Luck』の拡大版だ。
『200 Tons of Bad Luck』にしか入ってない曲も1曲あるようだが、
本作は19曲収録でトータル約120分の2枚のCDと48ページのブックレットが小箱に入っている。
映画でいうところのディレクターズ・カット版とフル・ヴァージョンという感じだが、
むろん『The Resurrectionists & Night Raider』のみ入っている曲も決して場つなぎ的なものではない。

内容自体も落ち着いた映像の映画みたいである。
大半の曲は激烈なリフ云々でというサウンドではない。
ギター、ベース、ドラムス、ヴォーカル以外に、
チェロ、ピアノ、メロトロン、ハモンド・オルガン、アコーディオン、フルート、トランペット、バンジョーなど、
実に多彩な楽器が使われている。
ジャスティンもアコースティック/エレクトリック・ギターをはじめとする弦楽器などをたくさんプレイし、
他の演奏者にドラムのパートをまかせている曲も多い。

ポスト・ロック的な作りではなく、
どちらかというとプログレッシヴ・ロックに近い。
70年代までのPINK FLOYDを70年代前半のBLACK SABBATHのエッジで補強し、
Nick Cave & the BAD SEEDSや最近のEARTH、
英国や東欧や中近東の民謡、
さらにBEATLESをブレンドしたようなサウンド。
ステージでも後方からメンバー全体を見わたすドラマーが仕切るバンドならではの、
壮大な構成力に引き込まれていく。
むろん他の土地の音楽からの影響も強いが、
60年代から脈々と連なる“ブリティッシュ・ロック”の流れを、
2009年のモダンな感覚で体現した如き音像だ。

ブックレットを含めて時間をかけて向き合うだけのものがある。
楽曲から“シナリオ”からパッケージに至るまで、
音楽がお手軽なものに終わってほしくないという願いも込められているかのようだ。


●CRIPPLED BLACK PHOENIX『The Resurrectionists & Night Raider』(INVADA INV075)2CD

この11月には、
SEPULTURAが『Chaos A.D.』でカヴァーしたことでも知られる“武骨ポスト・パンク・バンド”、
NEW MODEL ARMYと英国ツアーを敢行。
“裏ブリティッシュ”の歴史の流れを感じさせる渋い共演でいいなぁ…と思う。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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