なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『レイトオータム』

繝。繧、繝ウ_convert_20120120181126


米国シアトルで繰り広げられる
中国人女性と韓国人男性のラヴ・ストーリー。
ほぼ3日足らずの物語である。

66年に公開された韓国映画『晩秋』以来これまでに4度製作されている作品で、
その『晩秋』にインスパイアされた斉藤耕一監督が72年に
岸恵子と萩原健一の共演映画『約束』を発表している。

今回は69年生まれの韓国のキム・テヨン監督・脚本による映画だ。
『ラスト・コーション』で映画デビューしたタン・ウエイが主演女優で、
ドラマ『シークレットガーデン』でも人気で現在兵役中のヒョンビンが相手役を務めている。
クールで物静かながらも凛としたアンナ役の前者も、
“宇崎竜童 meets TOKIO長瀬”なヴィジュアルのフシ役の後者も、
熱くもぬるくも冷たくもない程良い体温の好演だ。

アジアの人間たちならではの妖しいムードに覆われつつ、
アメリカを舞台にしているだけに不思議な異国情緒も漂う映画である。
ほとんどの会話は英語で、
ホスト役のヒョンビンは撮影の数ヶ月前から英会話の特訓を受けたと言われるが、
その多少たどたどしくも聞き取りやすい発音が逆にアメリカで生活する異国人のイメージを強めている。

繧オ繝厄シ岨_convert_20120121183629

ダンナに不満を抱いていた中国人のアンナ。
以前の恋人から駆け落ちを持ちかけられたことを察したダンナから暴力を受け、
逆に誤って死なせてしまったことで刑務所に入れられる。
収監されて7年経ったある日母親の訃報の連絡を受け、
模範囚だったためにアンナは3日間の外出が許可される。

葬儀に向かうシアトル行きのバスの座席にアンナが着いて出発しかかったとき、
韓国人ホストのフシが強引に乗り込んでくる。
同じアジア系だから声を掛けやすかったのか「バス運賃を貸してほしい」とフシに頼まれ、
渋々アンナは金を出す。
馴れ馴れしく調子のいいフシのキャラは
塀の中の生活が長くて男性と接してないアンナの防衛本能を強めたが、
そこから“縁”が始まる。
フシもホストの常連客から駆け落ちを迫られ、
それを察したダンナから追われている身だったのである。

以上の流れは序盤だが、
物語性も大切な映画だからネタバレを避けるためにストーリーの話はここまでにしておく。

繧オ繝厄シ短_convert_20120121183828

“きょうだい”をはじめとする母親の葬儀の場で久々に会った旧交の人たちは、
“犯罪者”になってしまった自分に対しても昔と変わらず好意的に接してくれる。
だがアンナが違和感と孤独感を覚えたように見えるのはぼくだけではないだろう。
そんな葬儀の場にも勝手に参列するほど図々しいフシが、
浮き世(憂き世)のわずらわしさからアンナを解き放っていったみたいにも見える。
ほとんど表情を変えないアンナから気持ちを読み取るのは難しいが、
おくゆかしいアンナの佇まいこそが『レイトオータム』の見どころ。
単純明快な心理描写をあえて避けているかのようで、
だからこそ“カウントダウン”していく終盤が静かなる興奮を生んでいる。

短い時間の中で、
静かに、
静かに、
話は進み、
いつのまにか
どちらからともなく
深い
長い
口づけを交わしていた。


ストーリーもさることながら、
落ち着いたムードを醸し出す淡い色合いの映像力が素晴らしい。
曇り空に見える薄く霧がかったシアトルの風景は
しっとりしたたそがれの空気感に覆われており、
まさに『レイトオータム』の肝である。
映画もまずは映像そのものの力が大切だとも再認識させられる。
シアトル拠点のバンドにたとえると、
MUDHONEYではなく
NIRVANAやEARTHをイメージする空漠の雰囲気なのだ。


3日足らずの時間だけで一生分の濃密なロマンス。
静かなる
だが深い余韻を残す映画である。


★映画『レイトオータム』
2010年/113分/カラー/韓国・香港・アメリカ合作/英題“Late Autumn”
2012年2月4日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、他にて公開。
http://www.sumomo.co.jp/
©2009 Boram Entertainment Inc. All Right Reserved


スポンサーサイト

コメント

映画ベスト10

こんにちは。
舐川さんの映画ベスト10を教えて下さい。
どこかの雑誌で映画ベスト10を掲載する予定はありますか?

空手家さん、書き込みありがとうございます。
ここ以外に映画のことを書くことはほとんどないので雑誌でベスト10を発表することはないです。無責任なことは言いたくないので、機会があったらやってみる、ということにしておいてください。でもここで書いたものばかりになると思います。

行川和彦さま はじめまして。表題のレイトオータームの検索ワードでたどり着きました。透明感の高いアジア映画で韓国作品とか、中国作品とか国境を越えて、信頼と愛を訴える名作だと思います。

行川和彦氏のさりげない映画評論、なんとなく使っていらっしゃるスチール写真にとても共感を得ました。

Tony寛斎さん、書き込みありがとうございます。
うれしい言葉に元気づけられます。透明感が映像からも伝わってくる作品というのを思い出しました。写真は宣伝の方から提供していただいた中から映画の空気感が伝わるものを選んで使ってます。
欧米産と一味違う時間感覚で、アジア映画は染み入る作品が多いと最近よく思います。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/658-e75c5fd5

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (291)
映画 (254)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (47)
PUNK/HARDCORE (413)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (94)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (121)
FEMALE SINGER (42)
POPULAR MUSIC (25)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん