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パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

ALICE COOPER(Alice Cooper)の紙ジャケ・リイシュー(2/4)

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★『Killer』
71年12月リリースの4作目。
いきなり必殺チューンの「Under My Wheels(邦題:俺の回転花火)」で殺られ、
「Be My Lover」で追い討ちのロックンロールの勢いが止まらない。
全体的にはよりアグレッシヴに進み、
たとえまったりした曲でもアタック感の強い音に打たれるのだ。
中でも「Halo Of Flies」は音も曲もヘヴィ・メタルとニアミスした8分半のフリーク・アウト・ナンバーで、
HELMETやTODAY IS THE DAYを世に送り込んだAMPHETAMINE REPTILE Records主宰者、
トム・ヘイゼルマイヤーの“ジャンク・ロックンロール・バンド”HALO OF FLIESの元ネタでもある。
と同時に艶っぽい喉をアリス・クーパーが震わせる「Dead Babies」で女も男も濡らし、
最後はミステリー&サスペンス映画風のアルバム全体を占めるにふさわしい妖しくも戦慄の「Killer」。
もちろんシアトリカルなアーティストだから歌詞の比重も大きいのだが、
曲と音と声そのもので殺る。
響きが怖いのだ。
これまた上昇気流に乗りまくったバンドならではのアルバムである。

1972年のカレンダー付のE式特殊ジャケットで、
WBカンパニー内袋を封入し、
WBモスグリーン・レーベル仕様の8曲入り。


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★『School’s Out』
72年リリースの5作目。
ハード・ブギ・ロックンロール色を強めた大ヒット・シングルの「School’s Out」は問答無用だし、
「Luney Tune」も後期BLACK FLAG風の変態メタリック・テイストで聴いているとおかしくなる。
アルバム全体としてはロック・オペラ的でもあり、
プロデューサーのボブ・エズリンが中心に弾いていると思しきキーボードもポイントで、
時折ホーンらしき音も聞こえてくるが、
ロッキンなストーリー・テラーの仕上がりだ。
政治的には意外と保守派のアリス・クーパーだが、
やっぱりアルバム・タイトル曲「School’s Out」も早すぎたパンク・アンセムと言えるだろう。
その「School’s Out」だけでなくアルバム全体が“永遠の18歳”の妄想スパイスが利いたガキの物語。
ただ初期のSFテイストを隠し味で残して単なる反逆では終わらず、
ナチュラルなダミ声にもなるアリス・クーパーのヴォーカルも飛んでいる。
全米チャート2位にランク・インした。

プラケースCDのパッケージだとわかりにくい本作のデザインの肝が露わになっている
落書きされた教室机型特殊ジャケットを復刻し、
通信簿のミニチュアを封入し、
“LPだったら実際に履けそう・・・”とも妄想させる紙製の白パンティにCDが包まれている。
WBモスグリーン・レーベル仕様の9曲入り。
というわけで手間暇かかったパッケージだから今回のリイシュー盤の中でやや価格高めの一枚だが、
パラノイアなほど緻密な作りだから納得できるのであった。


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★『Billion Dollar Babies』
73年2月リリースの6作目。
アリス・クーパーの音楽キャリアの中で全米チャート1位に輝いた唯一のアルバムで、
実際最高傑作の一枚だし全体の完成度が格別だ。
ヴァラエティに富みながらもヘヴィで厚みがあり、
やはりバンドのALICE COOPERのピークと言える。
と同時にアリス・クーパーのソロ転向につながったかのように、
これまでになく多数の人間がアルバムに携わっている。
キーボードもしっとりと使いつつギンギンのギターのリズムが目立つのは、
バンドのメンバー5人以外にも参加ミュージシャンが多いからにも思える。
この前後にルー・リードの『Berlin』のレコーディングにも参加もした
ディック・ワグナーとスティーヴ・ハンターが演奏しているのも大きい。
ソロ活動以降もアリス・クーパーと付き合いが続くギタリストの二人だ。

ダイナミックなアリス・クーパーの歌唱と面白く痛撃もする歌詞を見ると、
なぜこのアルバムがいい意味で大ヒットしたかもわかる。
「Elected」はTHE 原爆オナニーズが『Primal Rock Therapy』でカヴァー。
「アリスは大統領」という邦題がジャストのシャープな歌詞だ。
「No More Mr. Nice Guy」も疎外感が漂う切ない名曲である。

エンボス加工されたウォレット(財布)型特殊ダブル・ジャケットで、
カスタム袋と10億ドル札を封入し、
WBモスグリーン・レーベル仕様の9曲入り。
これまたジャケットが凝っているから今回のリイシュー盤の中でやや価格高めだが、
職人肌なほど緻密な作りだから納得できるのであった。


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★『Muscle Of Love』
73年12月リリースの7作目。
ALICE COOPERというバンドのラスト・アルバムでもある。
サードの『Love It To Death』以降の流れと空気感が明らかに違うのは、
プロデューサーがボブ・エズリンではないことも大きい。
前作で一部エンジニアを務めたジャック・ダグラスとジャック・リチャードソンがプロデュースしているのだ。
ダグラスはAEROSMITHの70年代の一連のアルバムが代表的な仕事で、
Patti Smith GROUPの『Radio Ethiopia』やCHEAP TRICKの『Cheap Trick』も手がけている。
POINTER SISTERSやロニー・スペクターやライザ・ミネリなどのゲストも参加しているにしろ、
あくまでもギターとベースとドラムが中心で、
よく言えばシンプル、
別な言い方をすれば大味な音作り。
明快とも言える。

バンド・マジックの妖しい趣の替わりに硬質な音作りがプラスされた。
ギター2本のバンドという強みを活かしたハードなロックンロールが目立ち、
ハード・ロックといっても問題ない曲もある。
わかりやすいメジャー感でコーティングされた音同様に、
ニューヨークも舞台と思しき歌詞にも筋肉がついている。
恐ろしく乱暴なたとえをさせてもらえるのならば、
初期がロジャー・コーマンの映画だとすれば
いわゆるハリウッド王道映画みたいなのだ。
今となってみれば現代的だし、
そういう点も含めて80年代以降のアリス・クーパーのソロ作につながった一枚とも言えそう。

特殊ダンボール箱型ジャケットで、
カスタム内袋とブック・カヴァーとプロモ・ステッカー封入。
WBモスグリーン・レーベル仕様の9曲入り。
これまたパッケージが凝っているから今回のリイシュー盤の中でやや価格高めだが、
手が込んでいる作りだから納得できるのであった。


★『キラー』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-14302)SHM-CD
★『スクールズ・アウト』(同 WPCR-14303)SHM-CD
★『ビリオン・ダラー・ベイビーズ』(同 WPCR-14304)SHM-CD
★『マッスル・オブ・ラヴ(愛の筋肉)』(同 WPCR-14305)SHM-CD
いずれも2011年に日本でリマスタリングされたSHM-CDで、
オリジナル盤のLPのパッケージと
発売当時のムードが味わえる日本盤LPの帯のデザインを再現。
歌詞/和訳付で非常に読みやすいブックレット封入。


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コメント

「ベルリン」に2人も参加してるアルバム恥ずかしながら未聴です。SCHOOL'S OUTとKILLERだけで満足してちゃダメですね。ホントこの再発、某レコード店で知ってダイハードしてたんだなぁと思いつつ、今、この復刻をするっていう人の気合いを怖いほど感じました。オリジナル持ってる人も欲しくなる復刻ですね。個人的に行川さんのような音楽と作品に愛を持つ人がレコード会社に居て欲しいです。でも行川さんのライナーはレコード会社の人間より本当の意味で作品に関わったり売り上げに貢献してるのは明らかですね。

かくさん、書き込みありがとうございます。
やはり『Billion Dollar Babies』は特にオススメです(本文中にタイトルが抜けていたので入れておきました)。今回の復刻作業の中心になっているのは丁寧な仕事をしてきている方ですし、レコード会社もそれに応えている感じです。熱い愛に満ちて仕事をして日本のシーンを変えているレコード会社の人もいたりします。
KORNのファーストやSLIPKNOTのファースト~セカンドみたいな例外はありますが、ホメる作品は大体ヒットしないので、ぼくがレコード会社にいたら商売はやばいでしょう。自分のライナーが売り上げに貢献しているかどうかということも、何ともいえません(明日upするアリス・クーパーの一枚で書かせてもらっています)。ただ音楽に対する愛情と、アンダーグラウンド・レベルでヒットしそうなものに対するアンテナは持っているつもりです。

昔、親戚のおじさんから「引っ越すから」とダンボールいっぱいのレコードを貰った中にALICE COOPERのアルバムが何枚か入っており、以降今でも時々針を落とします。特にschools outは何度聴いたことか・・・。
紙ジャケ盤は細部にわたって作り手のこだわりが見える物が多いので少々高値でも紙ジャケの方を買ってしまいますね。アナログ盤持ってるけど紙ジャケ盤も欲しいです。

chumbaさん、書き込みありがとうございます。
いいおじさんがいていいですね。紙ジャケものも様々な作りがありますが、今回のシリーズは紙でリイシューする必然性のある作りです。作品の認識が変わったものもありますし。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)、
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)、
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)<以上リットーミュージック刊>、
『メタルとパンクの相関関係』(2020年~BURRN!の奥野高久編集部員との“共著”)<シンコーミュージック刊>
を発表。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、ギター・マガジン、ヘドバンなどで執筆中。

https://twitter.com/VISIONoDISORDER
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