なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『ピナ・バウシュ 夢の教室』

『ピナ・バウシュ 夢の教室』メイン


世界的な舞踏家ピナ・バウシュのもとに集まった40人のティーンエイジャーたちのドキュメンタリー。
最初のうちはベタな感動ものという底意地が透けて「こりゃだめだ・・・」と思いながら見ていた。
けど出演している女の子と男の子と指導者のパワーと、
芸術と文化のジャーナリスト/評論家アン・リンセル監督のまっすぐなアプローチで、
みるみるうちに引き込まれて目が離せなくなっていった。

ピナ・バウシュは1940年にドイツで生まれで、
演劇とダンスの融合とも言われる独自の舞踏芸術を創造するも
2009年の7月に亡くなっている。
フェデリコ・フェリーニ監督の映画『そして船は行く』(1983年)にも出演し、
ヴィム・ヴェンダースが彼女の死後に作った、
3Dフィルム『Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』でも知られている。

『ピナ・バウシュ 夢の教室』サブ02

そもそもこの企画は2007年の中頃にピナ・バウシュが、
自身の代表的な演目の一つである「コンタクトホーフ」を
14歳ぐらいの子に演じさせようとしているところから始まった。
集まったのは14~17歳の子供たちだが、
ヒップホップ・ダンスが得意な子はいても
こういう“舞踏ダンス”が素人の若い女の子と男の子というのがポイントだ。
子供たちは稽古場でリハーサルを繰り返し、
2008年に本番の舞台へと臨む。

ピナが登場せず彼女の“弟子”みたいな指導者が子供たちをレッスンするシーンも多いが、
タバコをくゆらせながらその様子を見守るピナの姿はこの系統に疎いぼくでも貫禄でビビる。
でも彼女に対する知識がなくても十二分に楽しめる。
そもそもぼくがそうだから。
そもそも子供たちの大半もピナの名前すら知らなかったようだ。
彼女がいなければ成立しない映画ということを承知の上で、
やはり主人公は子供たちである。

『ピナ・バウシュ 夢の教室』サブ04

何不自由ない子供たちにも映るが、
そうでもない。
数人の子が行なった自己紹介によれば、
不慮の事故で父親を亡くした子もいるし、
バルカン半島のコソボ紛争で祖父を亡くした子もいる。
人種もゲルマン民族だけではなく、
ロマの子なども含んでいる。
世界中でつながっていることを日常実感している子供たちだから内向き志向には成り得ず、
なぜこの子たちがパワフルなのか目が生きているのかがわかる。
だがウンザリさせる“不幸自慢”の物語じゃない。

実際、
子供たち一人一人のバックグラウンドは関係なくダンスは進行する。
子供たち一人一人が“個”として輝いてするからだ。
自分を縛るものや所属から解き放たれている。
だから性別問わず、
妙に垢抜けてなかったりするところもひっくるめて、
みんなホントかわいい。
顔の作りがどーのこーのも関係なく打たれるばかりだ。

今さらながら子供がいたら・・・とかも思ってしまったが、
それはともかく見終わったあと目が覚めた。
“ひがみ屋”をすがすがしい気分にさせる映画、タダモノじゃない。

『ピナ・バウシュ 夢の教室』サブ03

とにかく登場する女の子と男の子が異様にチャーミングだ。
いわゆるプロの女優や男優みたいに思えるほど凛々しいが、
演目の『コンタクトホーフ』というダンスシアターを演じてはいても、
映画のためにキャラを演じているというのはないはずである。
何しろみんな大人っぽい。
いわゆる大人でも甘えの裏返しの子供っぽさや幼稚なキャラを売りにする人はウンザリするが、
この子たちは凛々しく自分を磨いているからカッコイイ。
と同時にピュアな精神性を失ってもいない。
異性間の肉体的な絡みも含むダンスだからエロチックですらある。
純情な子が多いだけに最初は照れていたが、
本番に向けて真剣勝負を挑んでいく流れもクールだ。
初々しい子供たちが精神的に自立して研ぎ澄まされていくから覚醒される。

優雅なダンス音楽の挿入も特筆したい。
もちろん激しいビートの音楽ではないが、
映画全体の律動に一役買っていることは間違いない。
そこはかとなく漂うドイツならではの重厚な佇まいも映画全体を引き締めている。

品のアルタイトな服装に身を包んでシャープに“演舞”する女の子と男の子も引き締まっている。
だから美しい。


★映画『ピナ・バウシュ 夢の教室』
2010年/ドイツ/ドイツ語/カラー/89分/HD/ステレオ
3月3日(土)ユーロスペース(渋谷)、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか、全国順次ロードショー。
http://www.pina-yume.com/
©TAG/TRAUM 2010


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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