なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

DIRTY THREE『Toward The Low Sun』

pcd93508_convert_20120224181931.jpg


92年からオーストラリアを拠点に活動しているオルタナティヴ・ロック系のインスト・トリオが
7年半ぶりに出した8作目。
インストとはいっても
無味乾燥なポスト・ロックとは一線を画す悠然とした佇まいにゾクゾクするアルバムだ。


ここ数年の間もメンバーそれぞれDIRTY THREEに縛られない活動をしてきている。
ウォーレン・エリス(vln、kbd)は
昨年活動停止したニック・ケイヴのバンドのGRINDERMANのメンバーでもあり、
DIRTY THREEと共にDVD『オール・トゥモローズ・パーティーズ』で鑑賞できる。
ジム・ホワイト(ds)はPJハーヴェイのアルバム『White Chalk』(07年)に参加し、
キャット・パワーの『Juke Box』(08年)で演奏しバンドの一員として一昨年来日公演も行なった。
ミック・ターナー(g、kbd)もボニー・プリンス・ビリーらと多彩にフィールドを広げている。

そんな活動を経て臨んだ本作は、
90年代からGASTR DEL SOLをはじめとする日本でシカゴ音響系と呼ばれたアーティストとも仕事を行ない、
前作『Cinder』も手がけたケイシー・ライスがミックスと録音を担当。
“人間”が聞こえてくるデリケイトな響きで生々しく、
CDでもこれだけ奥行き豊かな音像ができるというグレイト!なレコーディングの仕上がりである。

『Cinder』はキャット・パワーなどがゲストでヴォーカルも入れていたが、
今回はインスト・ナンバー・オンリーの本来のスタイルで勝負。
ヴァイオリン、ギター、ドラム、オルガン/ピアノの
せめぎ合いと紡ぎ合い。
曲によってヴァイオリンやギターやピアノがリードしたりはするが、
ジャズの手数の多さのドラムを筆頭にメンバー3人が攻めながら曲を編んでいくから、
激しいようで実は楽譜のレールの上をなぞっている“安全な演奏”とは一線を画し、
基本的にまったりした静かな音でありながらもスリリングだ。


ローカルな表現をさせてもらうと、
東京・吉祥寺のライヴ・ハウスのMANDALA Ⅱでのライヴが似合いそうで、
そこを拠点にするアコースティックな日本のバンドみたいなおくゆかしい侘び寂びがこぼれおちる。
つまり小ぢんまりしたスペースでも観たいと思わせるパフォーマンスなのだが、
ゆっくりとダイナミックに音がふくらんでゆく。
全体的にアコースティックな響きを大切にしているが、
曲によってはエレクトリック・ギターが非メタリックなリズムで震えて時空を切り裂き、
ヘヴィな響きも炸裂。
とにかくギターもヴォイオリンも鍵盤楽器もドラムもみんな心から歌っている。

三富仁執筆のライナーでも言及されているように
DIRTY THREEのアルバムはよくロードムーヴィーに例えられるが、
たしかに全体がセリフに頼らない映画みたいだ。
もちろんアメ車で飛ばすみたいなのではなく
ゆっくりした人生のロードムーヴィー。
曲名などに使われている単語から想像すると、
太陽、空、月、埠頭、雨、雪などの叙景であり、
逝った女性に対する叙情の流れにも聞こえる。
本作のアートワークにもなったミック・ターナーの画からイメージできるような、
グロテスクかつファンタジックな風雅のブルースでありエレジーである。
それでも前に進むのだ

トラッド系のプログレを好きな方にもオススメ。


★ダーティ・スリー『トゥウォード・ザ・ロウ・サン』(Pヴァイン PCD-93508)CD
約42分9曲入り。
ミニ・ポスター封入で3月2日(金)発売。


スポンサーサイト

コメント

早速探してみます。「トラッド系プログレ」というところでワクワクしました。フランスのGWENDALなんかに近いのでしょうか、とにかく楽しみです。最近はインスト主体のバンドばかり聴いているので。

chumbaさん、書き込みありがとうございます。
欧州のトラッドとは違いますが、アコースティックな感じでも豪州のロックになっているところも好きです。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/687-dd0b15bb

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (295)
映画 (262)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (44)
METAL/HARDCORE (48)
PUNK/HARDCORE (420)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (99)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (124)
FEMALE SINGER (43)
POPULAR MUSIC (27)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん