なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『コーマン帝国』

コーマンメイン<ロジャー・コーマン本人>a


“B級映画の帝王”とも呼ばれる米国の映画人のロジャー・コーマンを描いたドキュメンタリー。
1926年デトロイト生まれで1954年に映画製作デビューし、
以降監督作50本超でプロデュース作は500本超という製作精力絶倫のフツーの風体の怪物だ。

時と場合によっては会話の中で口にしにくい映画のタイトルである。
そう考える方が変態!と言われようが、
実際ぼくも試写で見た直後に関係者と出会った地下鉄駅構内で話題にする際に
大きめの声で言葉にするのはためらった。
だがやはりANAL CUNT的なキョーレツ極まりないインパクトの邦題を考えた関係者はGJ!である。
そもそも原題も『CORMAN’S WORLD Exploits Of A Hollywood Rebel』なのだ。


むろん主演はロジャー・コーマン。
コーマンの妻(プロデューサーでもある)と弟も出演。
大きくフィーチャーされたジャック・ニコルソンをはじめとして、
ロバート・デ・ニーロ、ピーター・フォンダ、ブルース・ダーン、ポール・バーテルらの俳優も多数出演。
マーティン・スコセッシ(↓の画像)をはじめとして、
クエンティン・タランティーノやペネロープ・スフィーリス(『ザ・デクライン』)などの監督も多数出演。
コーマンのシャープ&スマートな言葉の数々の含蓄はもちろんのこと、
他の人が語り倒すエピソードはその映画を見ていなくても楽しい。
言うまでもなくコーマンが手がけた映画のシーンもたっぷり挿入しまくる。

スコセッシュ繧オ繝厄シ托シ懊せ繧ウ繧サ繝・す・枩convert_20120221210427

“早い! 安い! 旨い!”の三拍子揃った映画人である。
制作時間と予算と内容自体のことを指すが、
その美学はまさにパンク・ロックではないか。
最近ではB級パンクという言葉はあまり使われなくなった気もするが、
そう呼ばれた70年代のパンク・バンドが実はタマラナイ!という感覚に近いロジャー・コーマン。
馬鹿馬鹿しいものとか取るに足らないものとか役立たずなものにスポットライトを当てて
色んな意味での“体制”を挑発する。
まさに形容詞の意味でもプリミティヴなpunkってわけだ。

コーマンが手がけた映画のキーワードは
“hell”“violence”“rock’n’roll”“biker”“alien”“chicks(おねーちゃん)”“abductions(誘拐)”
とされる。
というわけで60年代のバンドは基より
80年代以降のガレージ・パンク/ロックンロールの美学満載である。
“ロジャー・コーマン=ガレージ・パンク”と言い切ってもいいほどだ。
いやその最大のルーツのRAMONESの感覚である。
だからRAMONESの映画『ロックンロール・ハイスクール』(79年)をプロデュースしたのは
必然だった。
コーマンが関わった映画というと色々な意味でパンクなイメージが強い。
アレックス・コックス監督の2007年の映画『サーチャーズ2.0』の
エグゼクティブ・プロデューサーも務めていた。

たとえ題材が暗くて残酷だとしてもコーマンの映画はポップにハジけている。
ただこういう一面もある。
ぼくは見てないので詳しいことは言えないが、
「例外」と付け加えた上でコーマン曰く「(米国)南部における人種差別撤廃を描いた」
『The Intruder』(61/62年)のような映画も作っている。
やっぱり根っこではとことんシリアスで物事をシビアに捉えているのだ。

デスレース繧ウ繝シ繝槭Φ繧オ繝厄シ抵シ懊ョ繧ケ繝ャ繝シ繧ケ・枩convert_20120221210546
<映画『デスレース』の一シーン>

スティーヴン・スピルバーグジョージ・ルーカスなどに対し、
敵意とまではいかないかもしれないが、
脅威を感じたことも告白する。
コーマンが昔から手がけてきたホラーものやSFものを、
色々な意味で大メジャーの手法を使って大ヒットさせたというのが大きいようだ。
『JAWS』や『スターウォーズ』が一例である。

原題のサブ・タイトルの
“Exploits Of A Hollywood Rebel(ハリウッドの反逆者の偉業)”が象徴するように、
“裏ハリウッド映画”を作り続けてきたコーマン。
そのフレーズはコーマンがよく使う自嘲的な言葉の
“exploitation film(“搾取映画”“金儲け映画”、転じて“B級映画”の意味)“を
もじったものだと思われる。
だからこそ反骨心と自主独立アティテュードに貫かれた映画に対するポジティヴな意識に、
見ている人間の意識も開かれていくのである。


本作が初の長編監督作品である女性アレックス・ステイプルトンの手腕も特筆すべきだ。
膨大な数の映画の映像をテンポよくつなぎ合わせたリズム感抜群の編集センスも非常に素晴らしく、
映画全体がロックンロールになっている。
どこもかしこも映像の心臓の中で加速するビートが鳴っているのだ。
政治的な作品も含めてドキュメンタリー映画はある程度の予備知識を必要とするものも多いが、
そういう作品に限って結局は“情宣”のための映画でしかなかったりしてエリート臭を感じるし、
得てして映画館で見ることを前提にしてないこぢんまりした映像作品だったりもする。
けど本作は『コーマン帝国』というタイトルにピン!と来ただけで見に行っても
ワクワクさせられること必至なんである。


それにしても夫婦で佇むシーンも非常に絵になる監督だ。
ほくほくするパワーをもらえるドキュメンタリーの秀作。
いや“秀でた”なんと言葉は“優れた映画”というホメ言葉みたいになってしまって
優劣の価値観とは対極のコーマンにふさわしくない。
ひたすらとんでもない快作である。


★映画『コーマン帝国』
2011年/アメリカ/カラー/91分/ビスタ/デジタル
4月7日(土)より、新宿武蔵野館にてロードショー。他全国順次公開。
http://corman-movie.com/


スポンサーサイト

コメント

コーマン監督の映画は大好きです。
「白昼の幻想」などは初めて観たのが年齢的に早過ぎてさっぱり理解できませんでしたが、ざらついた映像や妙にリアルな登場人物に恐怖映画を観るような感覚で観ていたのを覚えてます。
本作に出演されている俳優や監督さん達はみんな大好きです。これは是非観なければいけないですね。
今回も素晴らしいレビュー有難うございます。
ちなみにデス・レースもコーマン監督の映画だったんですね。知らずに観たのですがまだ無名時代(でしょうか?)のスタローンのマヌケなマッチョ役に結構笑ってしまいました。

chumbaさん、書き込みありがとうございます。
「デス・レース2000年」はプロデューサーみたいですねコーマンは。昔の作品はともかく、最近は監督でというよりプロデューサーとして映画に関わることがほとんどのようで、そのへんのことも語られます。
監督はともかくプロデューサーの名前まで意識して映画を見ないことも多いので、後で調べたらコーマンがプロデューサーだった!というのがいっぱいありそうです。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/688-554578d1

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (291)
映画 (254)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (47)
PUNK/HARDCORE (413)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (94)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (121)
FEMALE SINGER (42)
POPULAR MUSIC (25)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん