なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

SLEEP『Sleep’s Holy Mountain』

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サンフランシスコ周辺を拠点にしていたストーナー・ロック/ドゥーム・メタル・バンド、
SLEEPが93年の3月にリリースしたセカンド・アルバムの新たな再発盤である。


LPで持っているアルバムを新たにCDで買い足す(≠買い直す)ことはあまりないし、
ましてやCDで持っているアルバムを新装版CDで買い足すなんてことは、
欲しいボーナス・トラックでも入ってなければほんどない。
リマスタリング等の“お色直し”程度ではなかなか食指が動かないのだ。
けどこれは遅ればせながら結局やっぱり購入。
ほぼリアル・タイムでトイズファクトリーから発売された日本盤のライナーを書いたということも含めて、
個人的にも思い出深い一枚だからというのもある。

SLEEPの注目度が高まったのは最終作のサード・アルバム『Jerusalem』がリリースされてからだろう。
といってもその頃はバンドが消滅していた。
残念ながら当時『Sleep’s Holy Mountain』は極一部の界隈を除いてあまり話題にならなかった気もするが、
ライナーを読み返すとパンク/ハードコアの流れでライナーを書いていた。
ドゥーム・メタルとかマリファナとかいう観点で語られることも多いし、
歌詞に“stoner”という言葉が出てくるからストーナー・ロックの文脈で語られるのも自然だろう。
けどサンフランシスコ~ベイ・エリアのパンク/ハードコア・シーン周辺をはじめとして、
生まれや育ちなどを体系的に捉えて耳を傾けてみるとまた違った世界が見えてくるはずだ。
実際たとえドゥーム・メタルの意匠をまとっていたとしても速いパートを含んでおり、
パンク/ハードコアのお里は隠せぬやんちゃなサウンドである。


今でもそうだが、あの頃は特にこのサウンドを言葉で表現するのが難しくて当惑したことも思い出す。
当時ストーナー・ロックという言葉はもちろんのこと、
ドゥーム・メタルという言葉もそれほど浸透してなかった。

SLEEPとDISCHARGEをダブらせて考えると
『Sleep’s Holy Mountain』は『Why』、
『Jerusalem』は『Hear Nothing See Nothing Say Nothing』かなと勝手にイメージしている。
それぞれのバンドの後者は最果てにたどり着いてしまった極北のアルバムだし、
ジャンルの枠を超えた革命的な一枚とはいえ、
フォロワー風のバンドも頭に浮かぶ。
でも前者みたいな音楽のバンドはパッと思いつかない。
しいていえば『Sleep’s Holy Mountain』の曲や音はBLACK SABBATH、
あと初期BLUE CHEERが原型として見えてくるが、
極めてユニークなテクスチャーのロックなのだ。


生まれ育ったアンダーグラウンドのパンク/ハードコア・シーンからの中傷を軽くいなすほど、
種々雑多なヘヴィ・ミュージック最前線のバンドを集約して向かうところ敵無しの時代の、
英国EARACHE Recordsならではのリリースであった。
ただEARACHEも今回“デラックス・リイシュー”として発売するのであれば、
CARCASSやCATHEDRALの再発盤みたいにデュアル・ディスクやCD+DVDという形でインタヴュー映像、
もしくはデモやライヴのボーナスCDを付ける手もあっただろうに。
彼らもEARACHEとの関係が良好とは言いがたいからということも想像できるが、
SLEEPの元メンバーたちの気が進まなかったのだろうか。

98年頃にバンドがフェイド・アウトしたあと、
アル・シネロス(vo、b)とクリス・ハキアス(ds)はOMを組み、
マット・パイク(g)はヴォーカルの兼任するようになってHIGH ON FIREを結成。
現在OMからクリスは脱退したが、共に精力的な活動を行なっている。
OMもHIGH ON FIREもSLEEPを凌駕する世界に突き進んでいるから「今さら……」なのかもしれない。


ただ既発表ものとはいえ今回のCDは“ボーナス”もある。

ひとつはBLACK SABBATHの「Snowblind」のカヴァー。
もともとはトイズファクトリーの企画で92年に当初日本のみでリリースされたオムニバス盤、
『Masters Of Misery : BLACK SABBATH An EARACHE Tribute』に提供したテイクだ。
『ブラック・サバスに告ぐ!』という邦題が付けられたこのトリビュート盤は、
当時のEARACHEの“新鋭”たちが好き勝手にBLACK SABBATHをヤっているのだが、
ぼくはこれ以上のサバス・トリビュート・アルバムを知らない。
無理のない値段で発見したら迷わずゲットしていただきたい。

もうひとつのオマケはPCで鑑賞可能な「Dragonaut」のミュージック・ビデオ。
モノクロの秀逸な映像で3人の初々しい姿が堪能できる。
ほとんどクラスティなマット・パイクのヴィジュアルが特にキュートだ。

そして音。
リマスタリングの表記はないが、
少なくてもぼくが持っているトイズファクトリー盤のCDよりは音の立ち上がりが格段にアップしている。
やはり得体の知れぬ怪物アルバムなのである。


●SLEEP『Sleep’s Holy Mountain』(EARACHE MOSH079CDL)CD
オリジナル盤には未使用のメンバーの写真で彩った3面デジパック仕様。

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コメント

ハハハッ、鋭い(笑)。駄目ですね~自分みたいに何も考えないで、音楽聴いてたら。DISCHARGEもSLEEPも大好きだけど、そんなの考えたことなかったです。行川論を当て嵌めるとANTI CIMEXも3rd-7"のフォロワーは多いけど、「RAPED ASS」スタイルのバンドって全然いない気がしますね。これからもブログ楽しみにしてます。

ブロディさん、書き込みありがとうございます。
確かに「RAPED ASS」スタイルのバンドはすぐ思いつかないです。DISCHARGEやSLEEPの例と同様に、いわば完成する前、熟す前の時期の音楽性はマネしにくい気がします。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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