なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

BASTARD NOISE『Skulldozer』

Bastard_Noise.jpg


80年代末から90年代前半にかけてカリフォルニアで起こったパンク/ハードコアのムーヴメントの、
パワー・ヴィオレンス勢の中で最も重く混沌としていたバンドのMAN IS THE BASTARDのリーダーで
“パワー・ヴィオレンス”の命名者だったエリック・ウッド(b、vo)が率いるバンドの新作。
昨年リリーされたものだが、ようやく聴いた。
自由なメンバー構成で続けられており、
このレコーディングは、
元MAN IS THE BASTARDのクリス・コーネルがドラム、
PROGERIAの女性のアーツがヴォーカルとエレクトロニクスを担当したトリオでの録音である。


BASTARD NOISEの初期は歯医者の治療室の音みたいなノイズ主体のユニットで、
MAN IS THE BASTARDの“追っかけ”だったぼくも途中でサジを投げてしまった。
でもいつしかバンド編成でのプレイが中心になり、
このアルバムも2009年の2度目の日本ツアーの路線の流れをくむバンド体制で
ギターレスという編成を含めてMAN IS THE BASTARDが頭をよぎる。
リズム隊の二人が揃っているからそう聞こえるのは当然だが、
もっとずっとストロングになっている。

少なくてもスタジオ・レコーディングにおけるMAN IS THE BASTARDは
周りのパワー・ヴァイオレンス勢に合わせたかのように曲が短かったが、
BASTARD NOISEは長い曲が目立つ。
1曲目から13分強である。
だがゆったりとして唖然とさせたまま一気に聴かせるのだ。
短めの曲はいわゆるハードコア・パンクのスタイルとも接点を持ち、
これまた実はMAN IS THE BASTARDでは封印していた高速ナンバーである。
超尺のアンビエント・チューンには、
やはりMAN IS THE BASTARD時代にはなかったスペーシーな叙情性がトリップしている。

エリック・ウッドは
一時GUNS N’ROSESでギターを弾いていたバケットヘッドのバンドのメンバーだったことがあるほど、
腕が立つベーシストでもあり、
根がプログレの人で70年代のプログレをリアル・タイムで体験している年齢だ。
というわけで“ハードコア以降のプログレ”とも言いたくなるアルバムになるのも必然だが、
強靭なベースと手数の多いウルトラ・パワフルなドラムで
プログレッヴ・ロックの構築性をデストロイ!
超絶的なほど音のうねりに戦慄を覚えずにはいられない。

リード・ヴォーカルをとる女性の発声もかなり強力である。
性別判別不可なほどの悲痛なスクリームは、
どう聴いても本気だ。
立ちふさがるものすべての心臓に風穴を空ける。
そこから希望の光が眼をつぶさんばかりに差し込んでくる。
美しい歌声を活かした研ぎ澄まされた静かな曲にもとろける。
気合満々のエリック・ウッドの“重低音バッキング・ヴォーカル”も覚醒ものだ。


日本盤みたいな帯の裏面に書かれた日本語のコメントによれば、
“イスラエル国防軍に侵攻されるパレスチナ住民を守るために自らの身を投じた
Rachelに曲をささげている”
とのことだが、
12ページのブックレットに綴られた歌詞から察するにテーマは普遍的でもある。
「The Final Days…(Of Our Shit Species)」の曲名と歌に象徴されるように、
基本的には
“すべての生物の中で最も高等とされる霊長類の中でも頭(かしら)とされるヒトという種(しゅ)が、
実は最もサイテー”という
“man is the bastard”のコンセプトは不変。
地鳴りを起こして根源から何もかも震わせる音と相まって
自己保身のためのヒトの驕りとエゴを奥底から震わせる。
ラストはこれまた曲名が象徴的なインストの「Demise By Radiation」。
祈りにも聞こえる。

まさに骨の髄から深々と意識を触発する音楽。
覚悟を決めている。
今さらながら2011年のベスト・アルバムの一つに追加させていただく。


★BASTARD NOISE『Skulldozer』(DEEP SIX #153)CD
日本語で書かれた帯付の56分8曲入り。
6曲入りのLPもリリースされている。


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コメント

以前『thoughtless...』を試してみてピンと来なかったんですが、これは本文読む限り、手数の多いドラムとか生別判別不可なほどの悲痛なスクリーム等そそられる要素満載みたいで手を出すかどうか迷ってしまいます。
愚問かもしれないですが駄目元で試してみるべきですかね?

eristさん、書き込みありがとうございます。
『thoughtless...』はMAN IS THE BASTARDの中で、短い曲で構成した7"EPとは違ってバンドの本質が一番出た作品だと思いますが、そのアルバムの流れをくむともいえます。このアルバムも、もちろんいわゆるパンク/ハードコアやプログレやメタルの音楽スタイルではないです。でもスクリームはMAN IS THE BASTARDや以前のBASTARD NOISEでは聴けなかったもので、曲もこれまでよりいい意味でとっつきやすく身体に攻めてくると思います。試してみることをオススメします。

取るに足らない愚問にわざわざ返答ありがとうございます!

いい意味で取っ付きやすくなってるとのことで安心したので試してみようと思います。
それと『thoughtless...』も合わせて聴き直してみようと思います。

BASTARD NOISE来日するそうですね。楽しみです。

書き込みありがとうございます。
>eristさん
どんな作品でもそうですが、昔ピンとこないものでも数年後に聞きなおすと発見があったりもしますからね。
>低能さん
情報ありがとうございます。エリック・ウッドは最も手紙のやり取りをした外国の人なので再会楽しみです。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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