なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『三重スパイ』

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『クレールの膝』(1970年)や『緑の光線』(1986年)で知られる
エリック・ロメールが『グレースと公爵』(2001年)に続いて監督した2003年の映画。

1930年代のパリで実際に起こったスパイ事件をアレンジした映画で、
痛快活劇の類いとは一線を画す喉越しが苦い作品である。
ナチスが迫り来る第二次世界大戦中のフランスが舞台で、
地政学的に入り組んだ欧州では特に逃れ得ない政治力学の隙間の中で一種の立身を志し、
イデオロギーの交わりの中で“歯車”になった男とその妻の日常や運命をクールに描く。


ロシア帝政軍将校のフョードルは、
ロシア革命後のロシア内戦の後にソ連を担う赤軍(いわゆる共産主義勢力)の攻めに敗走した
白軍(いわゆる反共産主義勢力)の一人で、
パリに亡命して敷地面積の広いアパートに住む。
自室で趣味の油絵を日々たしなむギリシャ人の妻のアルシノエと二人暮らしだ。
そんな二人は二階に引っ越してきた子供を含む3人家族と交流するが、
絵画ではピカソを好む急進的な価値観で共産党員のその夫妻とズレが生じている姿から、
フョードルとアルシノエの“保守的”な方向性が見えてくる。

息が合っているように見えたフョードルとアルシノエの夫婦だが、
事務員の仕事の他にスパイ活動も密かに行なっていただけに不自然なフョードルは“出張”が増える。
そのことに対して不信に思った妻のアルシノエは夫のフョードルに必死で問いただすも、
自分は諜報員だからすべての活動は秘密厳守と答えられてしまう。
そんな最中にフョードルの行動に疑惑を抱く者たちが自宅を訪れて追及され、
病気も患っていた妻を気遣うがゆえに
自分を取り巻く政治状況を読みながら彼は思い切った行動に踏み切る。
だが疑心暗鬼の国際情勢の中の“要人”と化していただけにすんなりと事は進まない。
そうこうしているうちにフョードルが働くロシア軍人協会の会長が行方不明となるのであった。

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意識的にstatic(静的)な映像で貫いた感のある映画だ。
極秘が鉄則の“仕事内容”を思えば、
スパイをキーワードにした映画が派手なものには成りえないことを示唆しているようにも思える。
激しく追いつ追われつみたいなシーンはほとんど見せない。
エキサイティングなシーンは二人で意見を戦わすようなところで、
話している人物を斜め向かいから交互に映すミニマルなカメラ・ワークが妙にリズミカルだ。

大抵のスパイも表向きは一般人と同じような生活を送るわけで、
諜報活動より“その表向き”のシーンが大半なのも特徴だ。
妻や近隣の住人などとの交流を通してスパイの偏執性と苦悩をクールにあぶり出しているようにも見える。
そんな感じだから会話のやり取りの比重が非常に高い。
執拗に会話をクローズアップしているにもかかわらず、
フョードルとアルシノエの夫妻の最もドラマックでハードな時代の描写を“早送り状態”にしたのも、
会話が交わされてない時代だから省いたようにすら思える。
セリフも日常の他愛のない話よりも政治にまつわることがメインで、
議論や言い合いも多い。

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フランスを取り巻く当時の政治的な背景の予備知識があると刺激が倍増することは間違いない。
反ファシズム/反帝国主義のフランスの人民戦線、
ヒトラーとスターリンの時代、
独ソ不可侵条約、
スペイン内戦、
といったキーワードが思い浮かぶ。

政治や国家間の関係はいつの時代も単純ではない。
現代でも国の中で分裂/独立が起こっているわけで、
祖国の名称を簡単に言えない生まれの人は大勢いる。
大半の国が地続きの国境を持つヨーロッパならではの緊張感は、
日本やグレイト・ブリテン(英国の大半)などの島国や
他国の直接の境目が少ない米国のような国には簡単に肌では理解できないことも感じさせられる。
ぼくにとってはヨーロッパの特性や一種の強さについても色々と考えさせられ、
新たに気づかされることも多い映画だ。

むろん“R15+指定”というわけじゃないが、
極端な話、小中学生が見てすんなり飲み込める映画ではない。
ただ諜報員のフョードルが
前述した“白軍”ロシアと“赤軍”ロシア、そしてナチスドイツの三重の駆け引きをしていたことを
頭に入れておけば面白さは伝わってくると思う。
随所に織り込まれる当時のニュース・フィルムも手助けになるし、
迫り来るリアルな危機感に煽られること必至だ。

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会話重視ながらも落ち着いた映像力も密かなポイントで、
まるで“1930年代のカラー映像”みたいな色合いで生々しい。
ややニック・ケイヴ似のフョードル役のセルジュ・レンコも渋い好演だが、
妻のアルシノエ役のカテリーナ・ディダスカロウに惹かれる。
静かなる緊張感に貫かれていてセクシャルな要素が薄い映画だけに、
余計目立つアルシノエの胸元は
“胸重視派”でなくても吸い寄せられる微妙な色香で感覚に刻み込まれる。
品がよく慎ましやかな彼女が登場するとホッとするのは男性だけではないだろう。
だからこそ彼女の終盤の運命は、
静かに
しかし深く胸に響く。


★映画『三重スパイ』
2003年/115分/カラー/フランス語題『Triple Agent』/英語題『Triple Agent』
“映画の國 名作選Ⅴ フランス映画未公開傑作選”
『刑事ベラミー』『ある秘密』『三重スパイ』
4月21日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムにて3作品同時公開。
公式サイト http://www.eiganokuni.com/meisaku5-france/


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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