なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

CANNIBAL CORPSE『Torture』

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デス・メタルの帝王の座はとりあえずMORBID ANGELだが、
デス・メタルの王道は米国ニューヨーク州郊外バッファロー出身のCANNIBAL CORPSEである。
第一世代からわずかに遅れてスタートした強みで音楽的にもコンセプト的にもあまりブレがなく、
コンスタントなツアーとリリースも相まって確固たるポジションを築いている。
そんなCANNIBAL CORPSEの3年ぶりの12作目がリリースされた。
これまたトータルで“R15+指定”の快作である。


引き続き本作もプロデュースと録音とミックスは、
名師エリック・ルータン(元MORBID ANGEL、現HATE ETERNAL)。
全パートがよく聞こえる音作りで抜けが良く
喉越しスッキリで爽快ドライなアメリカン・デス・メタルの真髄をたたえている。
音が入り組むデス・メタルのレコーディングでは
やり方によっては音域の関係で音を相殺して“全滅”になりかねないが、
楽器のバランス感が素晴らしくスピーカーから全身に浴びているだけでひたすら気持ちいい。
理屈を粉砕するサウンドを皮膚で感じるのだ

現在の5人のメンバーのCANNIBAL COPRSEは、
ヴォーカリスト以外の4人が曲ごとに作詞や作曲を個々に担当するソングライティング体制である。
リーダーのアレックス・ウェブスター(b)が作った曲が多かった前作『Evisceration Plague』よりも、
他のメンバーが関与した曲が多い。
いわばAC/DCやMOTORHEADタイプで進化より深化のバンドだから、
ブラスト・ビートを多用するデス・メタルのスタイルは不変だ。
殺るまで殺られるまでのストーリーのテンポは千差万別ゆえに、
今回は比較的多めのミディアム~スロー・テンポのパートも絶妙に絡ませて作品全体に広がりがある。
それでいてアルバム全体の加速度が格別でアレンジもさりげなく凝っている。
曲の判別がデス・メタル・バンドの中でも「全曲に個性とクライマックス」を心がけ、
“俺は! 俺が!”のゴリ押しではなくじっくりとリスナーのツボを突いて心の動脈を確実にブッた切る

タイトすぎないドラムも素敵だ。
TERRORIZERのピート・サンドヴァルのようにメタルとして最高のパワー・ヒッターではないかもしれないが、
80年前後のMOTORHEADのドラマーのフィル・アニマル・テイラー的なパンク・フィーリングを感じる。
高速ジャズ・フィーリングの演奏もスリリングで痺れるアレックスのベースと共に、
一度も離脱してないオリジナル・メンバーとしてCANNIBAL COPRSEの格になっている。
デス・メタル界随一のライヴ・パフォーマンスを繰り広げるバンドの核のリズム隊も元気なのだ。

むろんヴォーカルはデス・ヴォイスであることは間違いないが、
ルーズな垂れ流しとは違ってリズミカルで楽器と同化。
歌詞はファンタジーなんかじゃない。
これは現実だ。
冤罪による刑死の悲劇をテーマにした曲もある一方、
CANNIBAL COPRSEが“人権屋”ではない姿勢も臓物から湧き出てき蛆の如く表れている。
その両方を同時に題材にするのは現実に真正面から向き合っているからに他ならない。
CANNIBAL COPRSEはよく「ホラー映画のような感じで楽しんでもらえたらいい」と言うが、
実際は必ずしも絵空事を描いているわけではないのだ。
ホラー映画の多くがリアリズムに則って制作されているのと同じである。

メンバー全員が斧とスコップとチェーンソーとロープを手にした不敵なスナップ写真を含む
12ページのブックレットもCD盤面も抜かり無し。
トータル・パッケージで情熱を注いだ表現なのである。


個人的に1年ほど前から気分はずっとデス・メタルだから本作も非常にしっくりくる。
オススメ。


★カンニバル・コープス『トーチャー』(ハウリング・ブル HWCY-1305)CD
日本盤はライヴ・テイクを2曲追加した約52分14曲入りで、
本編の歌詞の和訳封入。
彼らは医学用語などの難解な言葉を多用するバンドではないが、
非日常的なデス・メタル特有の残虐表現の嵐で和訳するのに多少骨が折れるから対訳はありがたい。
人によっては嘔吐ものの“本ジャケット”の一部だけが見られるようにくりぬかれた紙ケース付だが、
プラケースが簡単に紙ケースから出せなかった。
子供が簡単に点火できないようにした100円ライターのごとく
簡単にエグい“中身”を見られないようにしたみたいに固かったから、
お子さんのいる家庭でも安心なのであった。


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コメント

購入して何とか出し抜いて見てみます(笑)

ぶち抜いてしまったらもう一枚小遣い貯めて買い直します...。

喉越しスッキリなデスメタル聴きたいです。個人的にスコットバーンズ的な音が好きじゃないので、これイケそうです。テロライザーとナパームデスの新作も気持ち良かったです。ぼく昔からDEMILICHが好きでジャケはダメダメなんですがあの透き通っているような感覚が怖いですね。あとデスじゃないんですが、全く話題にならなかったガールスクールの2ndの30周年再録バージョンは気合いが入っていて相変わらずパンキッシュで良かったです。ジャケはトレイの所でしょうか?日本のアナーキーが再結成ライブ盤でそれやってましたね。

書き込みありがとうございます。
>ITOさん
すんなり取り出せるものもあるかもしれませんが、ぼくは紙ケースの糊付けの部分を丁寧にはがして、ゆるめに作り直してみます。
>かくさん
スコット・バーンズはNAPALM DEATHのサードもやっていましたが、90年前後のフロリダ勢のレコーディングの中心でしたね。ガールスクールのセカンドの再録音、よかったですか!? チェックしてみます。ガールスクールは女性のみのバンドとして継続していて、ぼくもフォローしきっているわけではないですが、過小評価されていますね。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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