なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

MARS VOLTA『Noctourniquet』

MARS VOLTA


米国テキサス州エル・パソ出身の“プログレッシヴ・ヘヴィ・ロック・バンド”の
約3年ぶり6作目のフル・アルバム。
ビッグ・ネームになってからも守りに入らずまたまた挑戦的で素晴らしい。
前作を出してからまもなく制作に取り掛かって2年かけ、
リリースまで多少寝かすことになったという。

リーダーのオマー・ロドリゲス・ロペス(g他)が
MARS VOLTAにとって本作が最後のアルバムとも解釈できるような発言をしているし、
彼がセドリック・ビクスラー・ヅヴォラ(vo)とやっていたAT THE DRIVE-INが再編するということで、
今後予断を許さない状況ではある。
ただバンドも一般の人間関係と同じく、
周囲からは解散(≒分裂~崩壊~絶交)に見えても、
中の人間は“進退”について深く考えてなくて単なるお休みだったりするケースも多い。
基本的にオマーとセドリックのバンドだから彼らの裁量次第なわけで、
MARS VOLTAもそうだと思いたい。


ドラマーの席にはデーントニ・パークスが完全復帰。
オマーのソロ作やオマーのグループのレコーディングではお馴染みとはいえ、
MARS VOLTAのアルバムではこれが初めてということになる。
ジャズのスイング感が裏で鳴る実にイイ太鼓だ。
それはともかく大人数が当たり前だったそれまでに比べれば前作『Octahedron』も少なかったが、
今回はMARS VOLTAのアルバム史上最少の5人だけでのプレイ。
オリジナル・メンバーだったアイザイア・アイキー・オーウェンズもいないし、
ジョン・フルシアンテも不参加だ。
ギター、キーボード/シンセサイザー、ベース、ドラム以外の音はほとんど聞こえてこない。
伝統的な意味で最もバンドらしい編成でのレコーディングのシンプルな音なのである。

前作以上に彼らにしては短めのシンプルな曲が多く、
本編13曲の中で6分以上の曲が2曲しかない。
ただし前作が本編50分だったのに対して今回は約64分30秒だから4作目以前並みの長さ。
例によって曲間はほとんどなくトータルでまろやかに巨大スケールの“人間宇宙”を描く。
ラテンやダブは以前のアルバムほど目立つ形ではなく、
緻密なリズムで練られた響きと響きがつながるところにダシとして利いている。
物語性に富む歌詞と相まって音楽にしか成し得ない“魔法”が生まれており、
いまだかつて届き得ず足を踏み入れられないところまで飛び立たせるのだ。
疲れ切った精神に説教はいらない。
○や×で割り切れないところを突き抜けるべくロックは轟く。

それにしも艶っぽい音である。
ますます濡れたヴォーカルのエロティシズムに男でもとろける。
歌のメロディ・ラインを軸に据えたようなソングライティングでコンパクトながら、
言うまでもなく深い楽曲とマジカルなサウンド・コスモス。
ラテン・テイストのブレンドという点も含めて、
『Station To Station』前後のデイヴィッド・ボウイのようなヘヴィネスも感じる

KING CRIMSONの「Epitaph」や「Starless」みたいな旋律が
ときおり彗星のように走って琴線に触れる。
というわけでそう言われてみれば、
研ぎ澄まされているだけに“締めくくり作”のようなムードが漂っている気もするが、
最期でないことは確かなアルバム。
なぜなら先に続く意志が鳴っているから。

これまたヘヴィ・ローテーションになりそうな一枚。


★ザ・マーズ・ヴォルタ『ノクターニキット』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-14440)CD
日本盤は本編にも入っている「The Malkin Jewel」のライヴ・テイクを追加した約70分14曲入りで、
味のある紙質の三つ折りジャケットに読みにくく書かれた歌詞の和訳付。
3月28日(水)発売。


スポンサーサイト

コメント

これはこれで充分気になるリリースなんですが、正直それよりA.T.D.I.再編の方が気になって仕方無いです。
Mars VoltaやSparta等を経てどんな音を届けてくれるのか今から楽しみでなりません。

eristさん、書き込みありがとうございます。
A.T.D.I.と似ているわけではないですが、この新作を聴いてオマーはシンプルなバンド・サウンドを今やりたくてA.T.D.I.を再編したのかとも想像しました。A.T.D.I.で新作をレコーディングするとしたら、やっぱりMARS VOLTAと対極のソリッドなポスト・ハードコアになるのかなとも思ったりします。

mars voltaは大好きなのでもし活動止まったら残念です。あの複雑で難解な音がクセになり、一時mars voltaばかり聞いてましたが。今回はこれまでよりシンプルな音とのことですがどんな感じなのか楽しみです。

chumbaさん、書き込みありがとうございます。
今夏ドキュメンタリー映画が公開される灰野敬二(特に90年代)みたいに、オマーも同時期に色々なことを試みたいミュージシャンです。ソロなどでの超多作ぶりでも明らかなように、オマーはやりたいことありまくりのミュージシャンですから、その一つとしてAT THE DRIVE-INも動かすのかなとも思います。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/717-9fb2c9a0

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (294)
映画 (262)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (48)
PUNK/HARDCORE (420)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (99)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (124)
FEMALE SINGER (43)
POPULAR MUSIC (27)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん