なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『すべての若き野郎ども/モット・ザ・フープル』

メイン
© Start Productions

英国のグラム系ロックンロール・バンドのドキュメンタリー映画。
LAのサイケデリック・ロック・バンドのLOVEとそのシンガーのアーサー・リーの映画『Love Story』に続く、
クリス・ホールとマイク・ケリーの監督作品第二弾だ。

映画の邦題は、
72年の出世作の大ヒット曲「All The Young Dudes」の邦題“すべての若き野郎ども”からの引用だが、
原題は73年の6作目『Mott』収録曲のタイトルでもある“Ballad Of Mott The Hoople”。
必ずしも華麗なるバンド・ヒストリーではなかったMOTT THE HOOPLEの歴史を象徴する、
なんとも苦いフレーズである。

MOTT THE HOOPLEファンの方々は数々のエピソードに狂喜すること必至だが、
もちろんグラム・ロックのファンも楽しめる映画だ。
パンク・ムーヴメント以前の“ブリティッシュ・ロックンロール”に関心を持つ方もイケるはずだし、
70年代の英国のパンク・ロックが好きな方も源流の一つを感じ取れる。
MOTT THE HOOPLEをあまり知らなくても、
バンドを続けることの“タフ”なドキュメンタリーとして興味深く見ることもできるだろう。

サブ2
© Start Productions

メンバーをはじめとする関係者のインタヴューを軸に昔の写真やライヴ映像を織り交ぜた構成で、
バンド・ヒストリー映画のオーソドックスな作りだ。
インタヴューにはイアン・ハンター(vo他)やミック・ラルフス(g)らのオリジナル・メンバーの他、
後期のメンバーのモーガン・フィッシャー(kbd)やルーサー・グロヴナー(g、元SPOOKY TOOTH)、
さらに末期のメンバーのミック・ロンソン(g)の生前に行なわれた会見も含まれている。
他に「自分たちが唯一前座を務めたバンド」と言うロジャー・テイラー(QUEEN)や、
コアなファンだったことがわかる発言を連発するミック・ジョーンズ(CLASH)も随時顔を出す。

サブ1
© Start Productions

大ざっぱに前期と後期に分けられるバンドである。

68年の結成前から71年までの前期は、
クレイジーなプロデューサーとして有名なガイ・スティーヴンスが仕切っていた時代。
MOTT THE HOOPLEというバンドの産みの親でもあるとはいえガイをかなりクローズアップしていて、
バンドの成り立ちとガイの果たした役割にも時間を割いている。
ライヴのお客さんは増えてもアルバムの売り上げで悪戦苦闘し、
ガイの意向も働いてレコーディングも試行錯誤。
カントリーっぽいサード・アルバム『Wildlife』(71年)は
メンバーの間からも「『Wildlife』じゃなく『Mildlife』」と自嘲の声も上がっている。
この前期の当時のメンバーの姿は映像よりも写真が中心で見せているが、
グラム・ロックと言い切れないこの時代の“下積み”があったからこそ後期に華麗な花が開いた。

「女装した職人」という彼らのルックスに対しての言い得て妙な発言も映画中で飛び出すが、
MOTT THE HOOPLEは
後期と言える72~74年の間のグラム・ロックなイメージで語られることが多い。
活動が頭打ちになって解散しようとしていたところでストップ!をかけたのが、
デイヴィッド・ボウイであった。
ボウイはMOTT THE HOOPLEに珠玉の名曲「All The Young Dudes」を書き下ろして提供し、
大ヒット。
映画の中にはボウイと同じステージに立ったライヴ・シーンも盛り込まれている。
メンバーも曲作りのツボみたいなものを会得してオリジナル曲も冴えわたりバンドは勢いづくが、
単純に言えばバンド内の音楽的な方向性の違いとソングライターとしての“才能格差”などで溝ができ、
徐々に分裂。
当時ボウイのバンドで大活躍中だったミック・ロンソンが加入してツアーをするもバンド内は不協和音で、
解散を選ぶことになる。

サブ3
©Constance Van Beek

前期プロデューサーのガイ・スティーヴンスの“クレイジー伝説”はたっぷりだが、
MOTT THE HOOPLE自身に関しては
“セックス、ドラッグ&ロックンロール”といったスキャンダラスな話題がほとんど出てこない。
だがこういう映画につきものの過去の”不良自慢”には辟易するし、
そういうバンドやミュージシャンに限って
“俺たちだって~ワルじゃないんだぜ、イイ人なんだぜ~”とばかりに“更正自慢”をしていたりもする。
けどそれって“変節”以外の何ものでもない。
MOTT THE HOOPLEは変わる必要がなかった。
なぜなら本物だから。

彼らのライフスタイルが品行方正なだったとも思わないが、
軋轢の話題も含めてメンバーの述懐はひたすらクールだ。
「ロック・スターっぽくなくフレンドリー」「純粋に音楽を愛していた」
という誰かが発した言葉が的を射ている。
二日酔いの朝でもバンド史の本を書き綴った恐持てのヴィジュアルのイアン・ハンター(vo他)をはじめ、
真面目さが伝わってくる。
メジャー・フィールドでの活動だったにもかかわらず突き抜け切れなかった理由も見えてくるが、
ギミックも能書きもなく音楽だけで判断してくれ!ってなバンドのキャラそのままの
正直でストレートな映画に仕上がっているのだ。

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© Start Productions

やや話はそれるが、
MOTT THE HOOPLE自体を描いた作品ゆえに映画はあまり言及されてないバンド周辺のことを、
色々な方面と接点を求めるべく以下に書いてみた。
少しでも映画に興味をもっていただけたらさいわいである。

バンドのメイン・ソングライターだったイアン・ハンターは
ぼくが聴いたアルバムで確認する限り基本的にMOTT THE HOOPLEとあまり変わらず、
コンスタントにソロ活動を展開。
MOTT THE HOOPLEの脱退後にミック・ラルフス(g)は、
元FREEのポール・ロジャース(g)とサイモン・カーク(ds)、元KING CRIMSONのボズ・バレル(b)と、
一種のスーパー・グループのBAD COMPANYを結成して一世を風靡する。
73年に加入したモーガン・フィッシャー(kbd)はユニークなアーティスト活動を続けて日本でも馴染み深い。

ずっとメンバーだった一人のデイル・グリフィン(ds)は80年代に入ってからプロデューサーに転進し、
BBCの“ジョン・ピール・セッション”でも仕事を行ない、
NAPALM DEATHをはじめとして80年代後半のUKハードコア勢も軒並みプロデュースした
(STRANGE FRUIT Recordsなどが発売したレコードやCDで聴ける)。
MOTT THE HOOPLEのメンバーの中でハードコア・パンク・ファンに馴染があるのは実はこの人。
“ジョン・ピール・セッション”のUKハードコアものにしっかりクレジットされているのだ。

初期のプロデューサーのガイ・スティーヴンスは他界する2年前に、
CLASHの代表作『London Calling』(79年)もプロデュース。
そのアルバムの“レガシー・エディション”のDVDなどで、
ガイのクレイジーな“プロデュース現場”も体験できる。
ちなみにCLASHはセカンド・アルバム『Give 'Em Enough Rope』(78年)で、
「All the Young Punks (New Boots and Contracts)」という曲をやっていた。
タイトルがモロ「All The Young Dudes」ではないか。

パンク・ロックとの接点でいくとミック・ロンソン(g)は、
元SEX PISTOLSのグレン・マトロックが結成した
RICH KIDSの唯一のアルバム『Ghost Of Princes In Towers』(78年)をプロデュースしている。

というわけでメンバーや関係者は各々MOTT THE HOOPLEの後も、
幅広い意味での“ブリティッシュ・ロック”をずっと支えてきた。
というわけで実にイギリス臭い映画でもある。

サブ5繧オ繝厄シ廟convert_20120331015217
© Start Productions

あらためて映画を振り返ると、
イアン・ハンターのヴィジュアルの変わらなさも見どころだ。
それってとても大切なことなのである。


★映画『すべての若き野郎ども/モット・ザ・フープル』
2011年/イギリス/101分/デジタル(BD)上映
5月12日(土)-6月8日(金)シアターN渋谷にて4週間限定モーニング&レイトショー。
他、全国順次公開
http://www.mott-movie.com/


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コメント

歴史に残る映画でしょうね!!


是非とも見てみたいです(^O^)


作品化にも期待したいです!!

ITOさん、書き込みありがとうございます。
再結成ライヴの模様も織り込まれていますからファンの方でしたら楽しめると思います。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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