なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

HIGH ON FIRE『De Vermis Mysteriis』

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カリフォルニアのベイエリア/オークランド出身の“エクストリーム・ヘヴィ・ロック・トリオ”、
HIGH ON FIREが『Snakes For The Divine』以来2年ぶりにリリースした6作目。

アルバムのたびにプロデューサーやエンジニアを変えるバンドで、
CONVERGEのカート・バルーが今回の録音とミックスを手がけている
(2曲でギターも弾いているが“プロデュース”のクレジットは無し)。
カートは本ブログでも登場回数が非常に多い売れっ子だが、
自分の色を持っている人だけにバンド側が飲み込まれてしまったような作品もある。

だがHIGH ON FIREはそういう強烈な“録音技師”としかアルバムを作らないし、
そういう“仕事人”とタイマンを張るレコーディングに喜びを覚えるバンドだ。
“パンク/ハードコア/ヘヴィ・ロックのネクスト・レベル”に挑む者同士の組み合わせ。
悪かろうはずがない。
精神的にも両者が完全に共振した恐ろしい音像である。
ひたすら肉体と精神の全体に浴びれば体制と反体制の両方の呪縛や束縛から解き放たれるし、
プリミティヴで未来志向の仕上がりにひたすら感動するのみだ。
グレイト!の言葉すら軽くなるほどの破格の作品なのである。


いらん知識でぶくぶく脳みそも肉も太った連中を尻目に、
甘ったれた贅肉を殺ぎ落として引き締まったサウンド。
いわゆるニューヨーク・ハードコア系のメタリックなバンドからすればまったくマッチョではないし、
むしろそういう思想性とは対極に位置するバンドだが、
ストイックな筋肉に貫かれていてひたすらカッコイイ。

潔癖症のエコな音楽が抹殺するような
人間自体が“排泄するノイズ”も心の軋みもすべて刻み込んでいる。
葛藤も煩悩もない表現は死んでいることを意味する。
だがこのアルバムは生命力にあふれている。

初めて3作連続同じメンバーでレコーディングしたアルバムでもある。
マット・パイク(vo、g)と手数の多いデス・ケンセル(ds)のコンビネーションはむろん最高だが、
後から加入したジェフ・マッツ(b)の音があちこちで突っ込んできてリズム・パターンがますます拡大。
HIGH ON FIREならではの加速度で突き進む曲から豪腕ドゥーム・チューンまで、
ハードコア以降のサイケデリック・テイストをねじ込んでドラマチックにふくらませていく。
ハードコアとストーナーをメタルの音感でブレンドしたサウンドとも言えるが、
クラストとベイエリアのパンク・シーンをゆっくりと駆け抜けてきた、
マット・パイクが率いるバンドならではの濃厚な味わいに全身が痺れて血管までが酔う。

マット・パイクの歌声も、
“もういいかげんにしろ!”って言いたいほど怠慢で単細胞な
米国産に多いメタル/ハードコアの力まかせヴォーカルとは次元が違う表現力。
歌心たんまりの獰猛な喉にも磨きがかかり、
現実のシールドに神話をブチこんでマーシャルのアンプで増幅させたかの如き深遠な歌詞も
音と同じく甘えがない。
想像力にケリを入れるべく加速する強靭な言葉を拾いながら耳を傾けるとますます目頭が熱くなる。

連帯なんて求めない。
そもそも共犯者を求める“ぼくたち”の類いの一人称複数形の人称代名詞が入り込む余地はない。
音楽に対しても厳格に向き合っているから孤高の言葉しか出てこない。
生ぬるさのカケラも聞こえてこない。
狭いところしか見てなくて免罪符を求めるためのチマチマした薄っぺらなメッセージなんかいらない。
ウソがない。
ここの歌は世界そして宇宙とつながっている。

ただ何度も目を通させるディープな歌詞であることを踏まえた上で、
やはりHIGH ON FIREはまず音そのものがメッセージである。

いつでも世界は非常時だ。
言い訳無しで生死を懸けた絶対的な音楽こそが奥底からすべてを揺るがす。
HIGH ON FIREは愛だの平和だのやさしさだのを説きはしない。
だが音楽に対する彼らの底知れぬ熱情がそういったすべての陳腐なスローガンを凌駕するし、
音楽自体が意識を拡大して善悪を超えたところに息づく涅槃が見えてくる。

神々しいほど覚悟を決めた轟きに、
メタルとかを超えてロックのあるべき姿を見る。
こういうバンドと同時代に生きていることに底知れぬ喜びも覚える。
まだまだ突き抜けられることも知る。

“我は我”の響きに感動を禁じえない。


★HIGH ON FIRE『De Vermis Mysteriis』(E ONE EOM-CD-2166)CD
約52分10曲入り。


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コメント

HIGH ON FIRE×カート!これは絶対にスルー出来ない組み合わせですね。それにジャケットもクールで手元に置いておきたくなりました。
どんなリアルな音が込められているのか…期待して待とうと思います。

安定感

いつも楽しみに拝見させていただいております。
またまた前作をも凌ぐ作品を発信してくれた彼らに感動しっ放しです。
幸運にも大震災の一日前に大阪でライブを体験した時のあの音の塊にただただ平伏すのみだった事が昨日の事のように想い出されます。これからも末長く付き合いたいバンドです。
継続は力なり…ですね。

書き込みありがとうございます。
>eristさん
ある意味この系統のバンドにとって売れっ子のカートと組むことは危険とも思いますが、これはカートにとってもベストの仕事になっています。一見別々のシーンのようで90年代から最も刺激的なシーンをリードしてきた両者の必然的な結びつき、ぼくもうれしいです。
>今島一徳さん
毎回前作を超えているのもすばらしいですね。バンドとしてもそうですが、自分の同じようなパンク/ハードコア/メタル価値観ということを抜きにしても、マット・パイクはカリスマ性もありますしミュージシャンとしてもっと評価されてしかるべきなのが、非常にもどかしいです。個人的には、35年ロックを聴いてきてまだ心の底から感動できて興奮させる作品に出会えた喜びを毎回味わわせてくれるバンドでもあります。本文では控えめに書きましたが、このアルバムも1万字でも2万字でも語れるほど深いですし、現代最強のバンドと再認識しました。
去年の東京公演は中止になりましたが、この編成でのライヴも早く見たいです。

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Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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