なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

IMPERIAL STATE ELECTRIC『Pop War』

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元ENTOMBED~HELLACOPTERSのニッケ・アンダーソン(vo、g、per)率いる
スウェーデン拠点のロックンロール・バンドが、
約2年ぶりにリリースしたセカンド。

もともとIMPERIAL STATE ELECTRICはニッケのソロ・プロジェクトとしてスタートし、
デビュー・アルバムの『Imperial State Electric』では基本的にギター以外のパートも演奏している。
だがツアーをするにあたってメンバーを固めていき、
本作は4人編成のバンドとしてレコーディングした。
他のメンバーは、
OBJECTSのトビアス・エッジ(g、バッキング・ヴォーカル)、
DATSUNSのドルフ・デ・ボースト(b、バッキング・ヴォーカル)、
CAPTAIN MURPHYのトーマス・エリクソン(ds、バッキング・ヴォーカル)。
大半の曲はニッケが一人で書いているとはいえドルフも3曲ソングライティングに参加し、
ニッケのプロデュースとはいえトビアスとドルフもアシスタント・エンジニアとなり、
まさにバンドで取り組んだ快作である。


やはり後期HELLACOPTERSの流れにあるアルバムだが、
ピアノは2曲でも挿入されるのみ。
2本のギターとベースとドラムが基本のシンプルなサウンドで、
HELLACOPTERSよりも70年代のパワー・ポップ・テイストが強く、
さりげなくR&Bのテイストも溶け込んでいる。
音のすき間を活かした音作りだが、
ニッケの身体を貫くパンク/ハードコアやデス・メタルの芯は燃え続けて熱く、
適度に粗くて意外と重いのがポイント。
曲を尊重しつつベースもドラムも自己主張が強くてパワフルだ。

コーラスを多用して
“RICH KIDS meets CHEAP TRICK”という感じでポップにハジけながらも、
ハードコア以降のハード・ロックの頑丈なニュアンスが光る。
ラスト・ナンバーにはストリングスが入っており、
70年代のELECTRIC LIGHT ORCHESTRA(ELO)がパンク・ロックがかったような音になっているのは、
“electric”つながりで必然だろう。

切ないヴォーカルが歌う言葉は、
ロックンロールによくあるベタなラヴソングとは一味違い、
HELLACOPTERS時代よりもメッセージ性を秘めている。
ニヒリスティックなニュアンスも感じられるし、
シニカルなアルバム・タイトルも象徴的なのだ。


さらに日本盤には昨年リリースした6曲入りのカヴァーEP『In Concert』の全曲が追加された。
美味しいカヴァー一杯のこういうボーナス・トラックが一番うれしいわけで、
しかもIMPERIAL STATE ELECTRICの音楽的な背景を知る上で非常に興味深い選曲になっている。
『In Concert』というタイトルは米国のいにしえのテレビ音楽番組から引用したのかもしれないが、
ライヴ・テイクではなくスタジオ録音である。

ニッケは現在進行形のロックンロールも愛するミュージシャンだが、
今回カヴァーしたアーティストは70年代までの以下の心憎いロックンロール・セレクションである。
●リトル・ウィリー・ジョン
●RUNAWAYS
●BEATLES
●RASPBERRIES
●EASYBEATS
●チャック・ベリー
ロックンロールをキーワードにして、
ブルースとR&Bとパワー・ポップを一つの流れでブレンドしたかのようなとろける6曲だ。

リトル・ウィリー・ジョンの「Leave My Kitten Alone」はBEATLESもカヴァーした曲で、
特にジョン・レノンが好きだったようだ。
RUNAWAYSの「Is It Day Or Night?」もプロデューサーのキム・フォーリーが書いた渋い曲だが、
これまたブルージーである。
BEATLESの「You Can´t Do That」に続いて、
米国クリ―ヴランドのパワー・ポップ/ロックンロール・キングである、
RASPBERRIESの「I Don´t Know What I Want」のというのもナイスな流れ。
AC/DCの初期のプロデューサーでそのメンバーのヤング兄弟の兄である
ジョージ・ヤングも在籍したオーストラリアのバンドのEASYBEATSの「Rock And Roll Boogie」も鋭い。
最後に「Sweet Little Sixteen」をカヴァーしたチャック・ベリーはロックンロールの基本中の基本だから、
ニッケにとっても基本中の基本。
ニッケはチャック・ベリーの血が入っているかどうかが好みの音楽の基準の一つだ。

要はロックンロールのテクスチャーやフォーマットをふくらませているか否かということだが、
ニッケに言わせればSLAYERもロックンロールである。
というわけでパワー・ポップ・マニアに巣食う選民意識はさらさらない。
潔癖症みたいなジャンルの“ピューリタン”のエリート根性はパンクの対極だ。
開かれた独自の感性でロックンロールを掘り下げて開拓するからこそ、
IMPERIAL STATE ELECTRICは伝統的でありながらもロックンロールの最新型なのである。

ロックンロールに対する誠意が疾走する愛のこもった一枚。


★インペリアル・ステイト・エレクトリック『ポップ・ウォー』(トゥルーパー・エンタテインメント QATE-10022)CD
四つ折りポスター・ジャケット/歌詞カード仕様。
日本盤は前述の6曲を追加した約51分16曲入りで本編の曲の歌詞の和訳付。
ボーナス・トラックが始まるまで数秒空けた配慮もうれしい。


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コメント

知り合いも聴いていて気になっていたので、チェックしてみます。


勿論、ボーナス目当てで国内盤にします♪♪

ITOさん、書き込みありがとうございます。
ボーナス・トラックがアンコールみたいな感じで続くありがたい日本盤の作りです。

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元ENTOMBED~HELLACOPTERSのニッケ・アンダーソン(vo、g、per)率いるスウェーデン拠点のロックンロール・バンドが、約2年ぶりにリリースしたセカンド。もともとIMPERIAL STATE ELECTRICはニッケのソロ・プロジェクトとしてスタートし、デビュー・アルバムの『Imperial ...

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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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