なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

FEAR FACTORY『The Industrialist』

Fear Factory_The Industrialist_cover-LR


LA出身のインダストリアル・メタル・バンドの約2年ぶりの8作目。
フォロワーがほぼ皆無のオリジナルのサウンドに磨きをかけ、
前作『Mechanize』より激烈なメタル度を高めつつフック十分の佳作である。


80年代以降のインダストリアル音楽の肝である冷たいプログラミング音をメタルの金属音にブレンドし、
咆哮と歌唱で滑らかに感情のギアを入れ替えるヴォーカルとともに織り成す唯一無比の音像。
共に“インダストリアル(・メタル)”と括られつつもともと別物と言えばそれまだが、
根がオルタナなMINISTRYやMARILYN MANSONらと違って
FEAR FACTORYは根がメタルだからブレることなくずっと鋼鉄だ。
ぼくが結局ここいらで今もよく聴くバンドはFEAR FACTORYだけである。
緻密なリズムがカラダに馴染んで気持ちいいから。
頭デッカチではなくサイバー感覚が加速する音を肉体でやっているから。
メカニカルで非人間的な音のようでヒューマンな響きだから。
誠心誠意込めて作れば打ち込み使っていようが心が宿る。
それこそがFEAR FACTORYのテーマだ。


“ドラムを持った渡り鳥”ということで怪物ジーン・ホグランはアルバム1枚のみで抜け、
今回は正式ドラマー不在のままレコーディングに突入したようである。
FEAR FACTORYのメンバーとしてクレジットされているのは、
唯一ずっとメンバーでバンドを引っ張ってきたバートン・C・ベル(vo)と
2000年代半ばは離れていたとはいえ同じくオリジナル・メンバーのディーノ・カザレス(g)のみ。
だが問題無しである。

ドラムの音のパートはディーノらが作ったプログラミングで、
生ドラムとデジタルがミックスしたような質感のビートだ。
といってもこういう感触のビートは今までFEAR FACTORYが超人的な生ドラムでやってきたことで、
それが全面打ち込みになっただけである。
といってもやっぱり今までにないリズム・パターンも使われていて刺激的。
今回ブラスト・ビートは未使用だが、
AGORAPHOBIC NOSEBLEEDも想起する弾力性のビートが
ディーノが出していると思しきベースの音と絡み、
特に中低域のグロテスクな音のうねりはフリークスの生命体の蠢きみたいである。
スラッシー/デス・メタリックな高速ギター・リフが重いのも特徴で、
前ほどビートとユニゾンしてないことの影響も大きいと思われ、
よりエクストリーム・メタル的だ。

ヴォーカルも気合が入っている。
90年代のアルバムのヴォーカルはスマートなところも魅力だったが、
背水の陣の如く以前より声も重い。
とはいえ“FEAR FACTORY節”のヴォーカル・ラインも健在である。
NAPALM DEATHの新作『Utilitarian』にもそういうパートの曲があってビックリしたが、
FEAR FACTORYも極初期はグラインド・コア・シーンに片足突っ込んでいたわけだから、
通じ合う“エクストリーム・スピリット”があるに違いない。

リフで押すパートはデス・ヴォイス系の咆哮でサビにメロディアスな歌が入る“FEAR FACTORY節”は、
KILLSWITCH ENGAGE以降の米国産メタルコアの曲に受け継がれている気もする。
ただFEAR FACTORYのメロディアス・パートはドリーミーで流麗だし、
さらにその15年前のスタイルをキープしつつマンネリに陥らず、
新たな時代の近未来的なメロディを放射している。
しっかりしたソングライティングも特筆すべきだ。

それにしても今まで以上にベタなアルバム・タイトルである。
今回もプロデュースやマニピュレーションをしたライス・フルバー参加の初のオリジナル・アルバムだった、
サードの『Obsolete』(98年)以来のコンセプト・アルバムらしい。
というわけでサウンドとともにコンセプトのアップデートもポイントなのだ。

未来社会の寓話の中に存在する自由意志を持つautomatonのインダストリアリストが、
世界と対峙して人間以上に人間らしくなっていくコンセプトとも言える。
Automatonとは“自動機械”“自動装置”“ロボット”“機械的に[考えずに]行動する人”のこと。
政治/社会的なニュアンスも含むが、
言うまでもなく自国アメリカだけの内向き志向の話とは次元が違うスケールの大きい作品だ。
本編ラストが9分のインダストリアル・アンビエント・チューン”で余韻を持って終わるのもSF映画っぽい。
日本盤はバートンによる『ジ・インダストリアリスト』の長文コンセプト・ストーリーの和訳付で、
脚本みたいに緻密に書かれているストーリーを読むと、
ますます『ジ・インダストリアリスト』の映画も望みたくなる。

ツアーではベーシストとドラマーを加えて演奏するようだから
(元CHIMAIRAのマット・デヴリーズがベーシストとして正式加入したという説もあり)、
ステージ映えする曲が続くからこのアルバムの再現ライヴも観てみたいものだ。


★フィア・ファクトリー『ジ・インダストリアリスト』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-14465)CD
日本盤は2曲のボーナス・トラックに加え
(うち一曲は『Obsolete』収録曲の続編のアコースティックな歌もの「Timelessness Ⅱ」で約57分12曲入り)、
12ページのオリジナル・ブックレットに載った歌詞の和訳だけでなく、
『ジ・インダストリアリスト』の長文コンセプト・ストーリーの和訳が読みやすく掲載された、
日本のみのブックレットも封入。
日本盤としてうれしい作りだ。
5月30日(水)発売。


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コメント

新作出るね
来日してくれると良いが

Re: タイトルなし

通りすがりさん、書き込みありがとうございます。
紆余曲折ありましたが、しぶとく活動を続けているのが何よりです。根がエクストリーム・メタルのバンドは根性あります。

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LA出身のインダストリアル・メタル・バンドの約2年ぶりの8作目。フォロワーがほぼ皆無のオリジナルのサウンドに磨きをかけ、前作『Mechanize』より激烈なメタル度を高めつつフック十分の佳作である。80年代以降のインダストリアル音楽の肝である冷たいプログラミング音?...

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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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