なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『スープ ~生まれ変わりの物語~』

スープメイン


『首領の一族』(2007年)や『Girls Life』(2009年)も手掛けた大塚祐吉が監督/脚本の映画。

実質的な主演は『ごくせん』『TRICK』『サラリーマンNEO』でも知られる生瀬勝久で、
生瀬とはドラマ『きらきら研修医』での共演経験がある小西真奈美がキーパーソンを演じる。
他にも刈谷友衣子や松方弘樹などの“主役級”の俳優が次々と登場。
思い切りのいい展開と歯切れもいいテンポのメジャー作ならではの仕上がりでありながら示唆に富み、
現世と来世をトリップしながら家族の問題を絡めて一人一人が人生を見つめ直す流れで、
ちょっと泣けてしまった。

スープサブ

渋谷健一(生瀬勝久)は50歳の営業職のサラリーマン。
うだつがあがらず仕事がなかなか取れないから社内でのポジションは微妙で、
家庭でも2年前の離婚から二人暮らしの娘の美加(刈谷友衣子)とギクシャクしている。
そんな美加の15歳の誕生日にバラを15本プレゼントしようと
フラワーショップでラッピングしてもらっている時に、
“娘が万引きした”と携帯に電話。
実際は友人がメインで事を進めたにもかかわらず、
「何でこんな時だけ恰好つけてるの? お母さんに逃げられたくせに」と言われた渋谷は
カッ!となって娘をビンタしてしまう。
翌日、仕事ができない渋谷を日ごろから馬鹿にする強気の上司の綾瀬由美(小西真奈美)との帰宅途中、
共に落雷が直撃。
気が付いたら二人は死後の世界に立っていた。

スープ6

死んだからこそ何も気にせずに楽しめる涅槃の空気の中で渋谷たちは解き放たれたが、
“飲めば来世に別人として生まれ変わることができる代わり前世の記憶は失われる”という
伝説のスープの存在を知る。
渋谷の取引先の社長で事業の成功者だったオチャメな石田努(松方弘樹)と出会って手ほどきを受け、
紆余曲折を経ながらスープが飲める場所に到着。
生きている時は部下と上司の犬猿の仲で死んでから親密になった渋谷と綾瀬は長蛇の列に並ぶ。
“生きている時から死人同然で自分を押し殺してきた過去の自分を否定したい・・・
だが記憶を消したらもう一度会いたい娘の存在も頭からすべてなくなってしまう・・・。”
そんな渋谷は自分にスープを飲む順番が回ってくる直前まで葛藤した末に突き抜ける。
そして話は16年後にワープ。
そこで“生まれ変わった”渋谷をはじめとして一人一人が様々な形で再会する。

サブ4

実のところ最初のうちは“笑っておしまいの荒唐無稽のドラマ・・・”と思っていたが、
あっというまにぐいぐい引き込まれてしまった。
とにかくまずみんなキャラが勃っている。
一人一人の演技力の賜物だし、
まさに“役者揃い”ってやつだ。
あまり普段そう思うことはないだけに、
「映画は俳優で決まる」と言う人の気持ちがわかった次第。
たとえば個人的な好みとして小西真奈美はストライク・ゾーンから外れる人だったが、
そんな男も惚れさせるシャープな演技が素晴らしい。

サブ2

その小西が演じる渋谷の上司の綾瀬は自称“できる女”ながら、
やはりワケありの人生。
過去の記憶をすべて消したい女性だ。
渋谷に「冷めてるね」と言われながらも、
「過去にしがみつかない」
「前に進むことだけが人生と思っているから」
という哲学で生きてきた。
映画を見ていく中でぼくも知らず知らずのうちの自分の人生を見つめ直してしまったが、
彼女のその言葉がいたく心に響いてきた。
しがみつきたい過去がなければ前に進むことしかない。

サブ7

ただぼくも主人公の渋谷みたいに過去の記憶を残したい部分もゼロではないとも思った。
子供はいないから
“娘がいたら当然だろうなぁ”とジェラシーの炎が燃え盛る終盤みたいなことは考えようもないが、
20年前に亡くなった父のことを思った。
内田裕也とマラドーナがケンカしているみたいなヴァイオレントな独断専行キャラで、
愚痴を垂れず不平不満を溜めこんでいたがゆえに暴発が絶えなかったから反面教師の一人だったが、
最近そうなった理由も見えてくるようになってきた。
映画の中で父親を嫌悪していた渋谷の娘(刈谷友衣子)の気持ちの変化と行動もぼくの心に触れた。
旅客機にも新幹線にも乗るような機会もなく
運転していたダンプカーと油まみれになりながら心中したみたいな勤勉人生を思うと、
松方弘樹が演じる男と同じ死因の糖尿病が関係なくなった来世で飲みに行きたい・・・・とか、
映画を見ながら色々なことが頭をよぎってしまった。

サブ3

様々な人間の人生を映す映画であると同時に、
否応無しに“家族”のことに思いをはせる映画とも言える。
だが単純に“家族”の大切さを説く映画ではない。
そんなもん見たくもない。
もはや陳腐な言葉になってしまった“絆”もひとつひとつ違うのにみんな同じにされてしまっている。
ポジティヴな意味合いに解釈される“絆”は、
実際は拘束的な意味がメインである。
だからやはり家族に一番しっくりくる言葉だ。
時として良くも悪くもなる断ち切れない絆は人を最期まで苦しめる。
と同時に解き放たれた時には大切な人を思う真心を解放もする。

サブ5

個人的にはとてもとてもヘヴィな映画だが、
シリアスとコミカルが背中合わせだからこそ泣ける映画だ
女性を体験した別々の人物が放つ
「男と女、(今度は)どっちに生まれたい?」「いやなことも多いけど、やっぱり女」
「ぶっちゃけ女の方が気持ちいいから」
という言葉も何気に意味深なのであった。

家族で見るも良し、一人で見るも良し。
ぼくももう一度見たくなった。

映画の中で父と子の間を何度も結ぶバラの花がまぶしい。


★映画『スープ ~生まれ変わりの物語~』
2012年/カラー/シネマスコープ/118分  
生瀬勝久、小西真奈美
刈谷友衣子、野村周平、広瀬アリス、橋本愛、大後寿々花、入江雅人、堀内敬子、凛華せら、堀部圭亮、池田鉄洋、谷村美月。山口紗弥加、伊藤歩、羽野晶紀、古田新太、松方弘樹
2012年7月7日(土)より、有楽町スバル座他にて全国ロードショー。
©2012「スープ」製作委員会
© 2011「生まれ変わりの村」原作 森田健(河出書房新社)
公式 サイト  www.soup-movie.jp


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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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