なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

RUSH『Clockwork Angels』

ClockworkAngels_DC.jpg


カナダの“プログレッシヴ・ハード・ロック・トリオ”の先駆者が
ライヴ盤『Time Machine 2011: Live In Cleveland』に続いて出した作品。
スタジオ録音のオリジナル・アルバムとしては約5年ぶりで20作目となる。
RUSHとプロデュースしたのは前作に引き続きニック・ラスキュリネッツで、
FOO FIGHTERSも手掛けたポピュラリティを引きだす手腕が冴えわたっている。

RUSHはブログレッシヴ・ヘヴィ・メタルとも呼ばれてきているが、
DREAM THEATERほどメタリックなエッジが立っているわけではなく、
メタルというより70年代のハード・ロックのニュアンスをアップデートしたサウンドである。
LED ZEPPELINからブルースを抜いたような趣だが、
長めの曲でも聴き手のツボを心得たコンパクトなソングライティングが今回も冴えている。

小技を利かせながらベースとリズムがシンプルで歯切れがよく、
プログレっぽいといっても音のハジケ方はポップとすら言える。
各国でポピュラーなポジションをキープしている一因だが、
それでも下世話にならず優雅な佇まいも不変なところがRUSHのRUSHたるゆえんである。
アコースティック・ギターやキーボードに加えてゲストによるストリングスも適宜織り込み、
包容力とヴァラエティに富むアルバムだ。
これまでのRUSHの有名曲の数々とリンクさせたように聞こえるところにもニヤリとさせられる。

アルバム・デビュー38年目のベテランにもかかわらず
失われるどころかロマンが加速している。
RUSHは出世作の4作目『2012』(76年)をはじめとしてコンセプト・アルバムが真骨頂だが、
今回はスチームパンク風のコンセプト・アルバムだという。
伊藤政則執筆のライナーによれば
スチームパンクとは19世紀の科学ロマンスに影響を受けたSFのサブジャンルの一つで、
過去と未来を渾然一体化させたレトロフューチャーな世界観を特徴としている。
本作のサウンドそのものである。

LED ZEPPELINも4作目で使った12のルーン文字も絡めた12曲で構成され、
まさにこれは“スチームパンク映画”だ。
自ら弾くベースの音と共振しながらゲディ・リーが舞い解き放つ言葉は小説のようでもあるが、
実際RUSHファンのケヴィン・J・アンダーソンと小説化することが決まっているという。
ただし今までのアルバムと同様にまったく頭デッカチでない。
そもそも上っ面の言葉のメッセージに頼っているようでは音楽である必要性はない。

まごころから生まれた音楽でしか成しえない表現で彩られた誠実な一枚。
聴いていてホッとする。


★ラッシュ『クロックワーク・エンジェルズ』(ワーナーミュージック・ジャパン WPCR-14471)CD
28ページのオリジナル・ブックレットに加え、
日本盤はニール・パート(ds)による長文の作品解説と歌詞の和訳が
読みやすくレイアウトされたブックレット封入の、
デジパック仕様の約66分12曲入り。
6月13日(水)発売。


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コメント

もう5年になりますか

もう昔ほど逐一チェック入れてなかったので「え?もうでるの」という感じでした、自分にとっては70`sハード、プログレにズブズブハマっていく入門編的バンドでした(まさか底なし沼だったとは・・・)

ZITADAさん、書き込みありがとうございます。
若いバンドも次々と出てきて様々なバンドが新作を出していってチェックしていると、昔から追っているバンドのチェックも抜けてしまったりします。RUSHに対してぼくも80年代前半までの頃ほど熱心ではないのが正直なところですが、その頃を思い出させる音楽性のアルバムでもあります。
RUSHは色々な方面への橋渡しになるバンドでもありますね。中庸の精神がたのもしいです。

いつも拝見しています

Rush、聴きました。「聴いていてホッとする」とは文字面だけとればロック・バンドのアルバム評としては余りいい意味じゃないようにもとれますが、しかしこのアルバムについてはまさにその通りで、ベテランの誠実な表現にすがすがしくなるというか...的確なレヴューになっていると思いました。
別記事ですが、灰野さんの映画の記事の件にしても、関係者の方を批判するつもりは毛頭ないのですが、映画にしても音楽にしても文章で語り尽くせないからこそのその表現形態なわけで...行川さんの記事は、映画にしても音楽にしてもその魅力を可能な限り誠実に言葉で伝えようとしながら、「原典」に対する敬意を忘れず、読む者に「原典」を見てみよう、聴いてみようと思わせるものになっていると思います。
これからもジャンルにとらわれず埋もれがちな映画や音楽を紹介してください。

Fripperさん、書き込みありがとうございます。
ぼくがメインで聴いている音楽がエクストリームだから聴いていてホッとするというのもあるのかもしれません。でもこういう音楽も必要ですし、何より表現に対して誠実であることがポイントですね。それがすべて、それは響きに表れています。音楽も言葉も正直です。
聴いてみたい、見てみたい、と思わせるというのは意識しています、確かに。逆に言えば、そう感じないものはそういう文章になっているでしょう・・・・気持ちが顔に出るみたいなもんで批判してなくても気持ちが文章に出ますね。
細かく書くのは自分が大げさな喧伝文ではなくどういう曲、どういう映像があるかの文章を求めているからでもあります。ただ音楽でも映画でも、グレイトな表現だとぼくの中から言葉を引き出しくれるというのも大きくて、今日のCRASSの本もどんどん言葉が出てきて長くなってスイマセン。
埋もれがちなものに焦点を当てたいのは常にそうで、音楽とかに限らず「多数派」につぶされる少数派をフォローしたいです。

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カナダの“プログレッシヴ・ハード・ロック・トリオ”の先駆者がライヴ盤『Time Machine 2011: Live In Cleveland』に続いて出した作品。スタジオ録音のオリジナル・アルバムとしては約5年ぶりで20作目となる。RUSHとプロデュースしたのは前作に引き続きニック・ラスキュ?...

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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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