なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

BURZUM『Umskiptar』

BURZUM『Umskiptar』


コンスタントなリリースが続くノルウェーのブラック・メタルのカリスマ、
BURZUMの1年ぶりの新作。


例によってヴォーカルも楽器も独演の“一人バンド”レコーディングで、
獄中録音だった一連のアンビエント作品とは趣が異なり、
BURZUMの主軸のブラック・メタル・スタイルのアルバムとも言える。
だが、うなり声はあれどスクリームはほぼ封印してブラスト・ビートも一掃。
BURZUMはアンビエントもメタルも“心の中で鳴り止まぬもの”として響いているから
融合したとも様相でもあるが、
歌ものとすら言える曲も増えている。

凶暴かつ狂暴なサウンドから遠く遠く離れて、
いや突き抜けて善悪の彼岸の彼方に行き着いた音楽である。
速いパートがなくリフがあってもスローで、
たそがれた切ない綴れ織りがギターとベースとドラムと鍵盤楽器で行われる。
民謡みたいなメロディの曲も多く、
“エレクトリック・アシッド・フォーク”に昇華している。
80年代末以降のSWANSやそのリーダーのマイケル・ジーラのソロ・プロジェクトも思わせるが、
もっとずっと涅槃の鼓動が近づいている。

まるで出獄とともに出家したかの如き虚脱ぶりが怖い。
復活してからのヴォーカリゼイションを推し進め、
邪悪な声のヒリヒリした語りにも磨きをかけ、
まろやかな歌唱も増えている。
悪魔云々ではなく本質的な意味での魔術的な歌心に溢れ、
何かを悼む歌やエレジーにすら聞こえる。
歌詞は母国語と思われるので意味を取るのは難儀だが
ノルウェー語(たぶん)の響きがフランス語っぽくもあるから優雅で不気味だ。

「ぼくたちひとつになりましょう!」みたいな押しつけがましい歌や無神経なお祭り音楽は
「死ね!」と言っているようなものにもなり得る。
そっちの方がよっぽどファッショだ。

BURZUMは確かにリアル・ファシストでもあったが、
我は我。
集団で強制する音楽にはなりえない。
楽しむも自由、去るも自由、自殺するも自由。
そんなとてつもない包容力のアルバムである。
慈しみ悲しみ絞殺しそうなほど抱擁する。

陰鬱と呼ぶには純粋だ。
めまいがするほど美しい。
刻み続けられてきた深手に染み入るヒーリング・ミュージック。
またヘヴィ・ローテーションになりそうな精神安定音楽である。


★BURZUM『Umskiptar』(BYELOBOG PRODUCTOINS BYE010CDS)
約64分11曲入りで12ページのブックレット付。


スポンサーサイト

コメント

精神安定音楽。


考えたこともない言葉でした。


このバンドは初期の数枚所有していて、聴いてはいますが精神安定音楽ではありませんでした...。


落ち着く音楽でしたら私はパンクを外します。


ストーンズにAC/DC、NWOBHM、女性vo関係が一番しっくりきて、精神安定音楽(落ち着く音楽)かも知れません。



VIVISICKやGAUZEにGRIFFIN、ヒスパニック系を聴く時はいつも必死で汗かいてます(笑)

ITOさん、書き込みありがとうございます。
“精神安定剤”みたいなものですね。初期は“精神不安定音楽”です。ぼくにとってはどちらも必要なもので人間自体がどちらの要素も内包していると思っています。
落ち着く音楽だったら、いわゆるプログレが多いですね。

プログレですか。

渋いです。


そして何か解る気がします。


ジャンル、幅広く入ってくれる耳に感謝ですね(笑)
生きてきて、固定観念ある耳じゃなくて良かったです(笑)

ITOさん、書き込みありがとうございます。
スタイルではなく意識を“傾聴”すればフォーク・ミュージックもエクストリーム・メタルも一緒に楽しめます。そもそもデス・メタルやブラック・メタルにアコースティックな曲が入っているのも自然な状況ですからね。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/787-da784478

まとめtyaiました【BURZUM『Umskiptar』】

コンスタントなリリースが続くノルウェーのブラック・メタルのカリスマ、BURZUMの1年ぶりの新作。例によってヴォーカルも楽器も独演の“一人バンド”レコーディングで、獄中録音だっ...

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (241)
JOB/WORK (295)
映画 (262)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (43)
METAL/HARDCORE (48)
PUNK/HARDCORE (420)
EXTREME METAL (129)
UNDERGROUND? (99)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (124)
FEMALE SINGER (43)
POPULAR MUSIC (27)
ROCK (83)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん