なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

NILE『At The Gate Of Sethu』

NILE1.jpg


古代エジプトをはじめとした中近東に対する偏執狂的な思いに突き動かされ続けている
米国南部サウス・カロライナのデス・メタル・バンドが、
『Those Whom The Gods Detest』から3年ぶりにリリースした7作目のフル・アルバム。


今回もプロデュースはNILEのレコーディングの片腕として付き合いの長いニール・カーノン。
米国“モダン・ポップ・デュオ”Hall & Oatesの80年代初頭の大ヒット3作を手がけた人というのは、
世の中なにがどうつながっていくのかわからないことの一例である。
NILEみたいなデス・メタルは音を整理して収めないと曲や演奏の良さが殺された形になるが、
アメリカンな抜けの良さと中東のイメージの乾いた感触の音で
全部しっかり聞こえるバッチリ仕上げのアルバムだ。

ブラスト・ビートを多用しつつスロー・ナンバーも織り込む凝ったアルバム制作は、
やはりMORBID ANGEL直系ではある。
ただ確かにカリスマ性ではまだ及ばないかもれないが、
ブレのない音楽性でデス・メタルを代表するバンドとして揺るぎない地位を築いている。

初期は展開が強引すぎて覚えにくい楽曲もあったが、
聴かせどころを設けるソングライティングもますます冴えわたる。
中近東のダシもすっかり音楽の中に溶け込み、
中東っぽいフレーズを“トッピング”するに留まらず民俗音楽を消化したインスト・ナンバーも
アルバムの中でのいいアクセントだ。
リーダーのカール・サンダース(vo、g)は、
エジプトやシリアなどの中東でポピュラーな楽器ウードに近い音が出るグリッセンターや
トルコ周辺の民族楽器のバーラマ・サズも弾いている。

ツイン・ヴォーカルも生々しさがどんどん増していてうれしい。
頭デッカチではなくよりテーマが肉体化していることの証しだ。

連鎖的な中東の政変が勃発してからの初のアルバムでもある。
NILEのモチーフは儀式や風習も含めて残虐行為が多々行われていた古代がメインだが、
昨今のシリアをはじめとして現代でも根は変わらない。
NILEのテーマの“メイン舞台”と言えるエジプトも依然として混迷が続くが
古今東西、必ずしも権力者とか政治の問題ではないことをあらためて思わされる。
むろんNILEはポリティカルなバンドではないし、
彼らの目と耳は他の地域まで広がる一方だ。

ブックレットには今回も熱意に満ちた膨大な字数の詳細な曲解説と歌詞が載っている。
通常使わない言葉も用いられているとはいえ文体自体は平易で
思わず読み進めてしまうほど文化や文明全般に対する深い考察のセルフ・ライナーと示唆的な歌詞も、
獰猛な神秘性に裏打ちされたサウンドと相まって意識に働きかける。
『チベット死者の書』からインスピレーションを受けた2曲も含めて、
ナイル川のような大河の如き壮大なブルータル絵巻で
手垢にまみれた陳腐なヒューマニズムを塗り替える。
世間から差別され続けるデス・メタルだからこそ埋もれたテーマを説得力十分で表現し得ているし、
デス・メタルが音楽的な面に留まらず歌詞においてもロックを激化させたものだとも再認識するのだ。

聴き応えたっぷり喉越しスッキリ。
実にクールなデス・メタル・アルバムである。


“Stay Brutal”by NILE


★NILE『At The Gate Of Sethu』(NUCLEAR BLAST LOVECD199)CD
NILE2.jpg
↑が表紙の24ページのブックレット付だが、
大っぴらに出しにくい危険なデザインだからか
一番上の画像のジャケット紙一枚で隠された仕様になっている。
本編の曲のインスト・ヴァージョン2曲含む約57分13曲入り。



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古代エジプトをはじめとした中近東に対する偏執狂的な思いに突き動かされ続けている米国南部サウス・カロライナのデス・メタル・バンドが、『Those Whom The Gods Detest』から3年ぶりにリ

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プロフィール

行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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