なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

映画『神弓 KAMIYUMI』

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2011年の韓国映画。
“神弓”は韓国の地対空ミサイルの名称でもあるが、
原題の日本語直訳は“最終兵器 弓”である。
これまた最初にうちは一種の時代劇/チャンバラ映画/ヒーロー・アクションものかと高をくくっていたが、
まもなくまったく目が離せなくなった。

家族の“絆”の強さを訴えているのかもしれないが、
命を賭して放って心臓を射抜く矢で絆を強めるギリギリの緊張感に貫かれ、
シンプル&ストレートかつベタなストーリーでも持っていかれる。
映像的にも物語的にも山あり谷ありの加速度で、
能書き無しの映画だからこそ殺られた。

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時は1636年。
清が李氏朝鮮(朝鮮)を侵略して制圧した丙子の乱が舞台で、
清軍は50万人の朝鮮人を捕虜として強制連行し、
当時の盛京の奴隷市場で売買したとされる。
最初から最後までその激戦の渦中の映画である。
大ざっぱにストーリーを書いておく。

国家反逆罪で捕えられ父を幼いころに目の前で処刑された兄妹のナミとジャインは、
どうにか追っ手から逃げて父の友人にかくまわれる。
兄のナミが生きている理由は「妹ジャインを守れ」という父の最後の願いを全うすることだったが、
13年の歳月が流れて、
二人を育てた父の友人の息子のソグンが妹ジャインと結婚することになった。
しかし外で行われていた妹の結婚式に清の軍が乱入。
殺された参列者も少なくない中、
ジャインとソグンは引き離された二人をはじめとして多数の村人が連れ去られてしまう。
ナミは父の形見である下方の<神弓>を手に取り、
妹を助け出すための旅に出る。

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清の軍の行軍は残酷で妹のダンナのソグンは立ち上がる。
一方で妹のジャインは清の王子に気に入られるが、
幼少時からの気丈な性格ゆえに大胆な行動に出る。
三人が三人とも勇気と知恵で道を切り開き、
再会と離別を行ないながら前に進んでいく。
兄ナミは旧知の人間2人と再会して活動を共にして戦いを続けるも、
やがて一人になってしまう。
崖をクリアしながらもナミは追いつめられるが、
勇気が運を呼び込んで突破。
だが最後の最後までどうなるかわからない。
「恐怖心あれば(それに)向き合うのみ」の気持ちで思い切って討つだけなのだ。

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まずストロングな脚本もさることながら俳優の力も大きい。
ナミ役のパク・ヘイルと妹ジャイン役のムン・チェウォンはもちろんのこと、
特に敵役の方の面々も強烈だ。
なかでも清の“猛将”を演じるリュ・スンリョンは存在自体が不気味な表現である。
それぞれの声も力を持っていて強くパーカッシヴ
敵の清の人間が使う言葉は満州語になっており、
そのセリフの部分には日本語と一緒にハングルの字幕が出る点もポイントだ。

戦士のヴィジュアルも特筆したいところだ。
とりわけ敵の鎧がカッコよく、
ヘアスタイルが日本の派手なハードコア・パンク・バンドみたいなのも興味深い。
ヒューマニズムに裏打ちされない“正義”に駆り立てられて
プリミティヴで気合満々の真剣勝負を展開する彼らにふさわしいのである。

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このでは当時まだあまり出回ってなかったからか火薬の武器での殺し合いはない。
刃物の類いは使われるが、
本作のメインの武器は弓矢だ。
原始的な飛び道具で原始的な味わい。
肉体をフルに使って殺るしかない真の死闘。
だから傷も生々しい。
スプラッターなホラー映画ほど露骨に血や死体が目立つシーンは物語の要所のみだが、
重厚なリアリティが凄い。

手抜き一切無し。
戦(いくさ)のシーンのリアリティにも圧倒される。
明らかにフェイクであることをセールス・ポイントにしている映画はそれはそれでありだが、
ヘタレなのはシラケる。
CG未使用なのもポイントだ。
CGの面白さを認めつつ妙な使い方をしている映画は幼稚に見えてしまうことがある。
やはりナマが一番だ。
だから街中、荒野、森、竹林、崖、川などでの死闘も漫画ちっく劇画ちっくに陥らず、
徹底的にリアリズムを追求している。
それは現実に起こった史実に基づいているからだろう。

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全体にスピード感があってテンポがよく息をつかせぬリズムも見事。
こういう系統の映画で笑いをとって一呼吸つかせるためか“ズッコケ・シーン”を入れるものもあるが、
たいてい中途半端は全体のリズムを台無しにするだけだ。
この映画は全編覚悟を決めた人間の行為のみで成り立っている。
たるいところがない。
ゆるむ部分がほとんどないところも含めてハードコア。
夫婦愛の甘いシーンもあるが、
“兄妹愛”も含めて甘えがない真剣勝負なのだ。

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“敵は10万人。愛するものを守るため、たった1人で挑んだ名もなき弓士がいた”
というキャッチ・コピーに偽り無しである。
「その女(妹)を助けるために生きてきたのか」と敵将に言われるほど、
いつのまにか主人公は一人で多勢に立ち向かうようになる。

かたや敵の猛将は王子に仕えて部下を気遣うなど、
清の側では普遍的かつ不変的な人間関係が見て取れて示唆的な映画だ。
客観的に見れば明らかに清の方が非道極まりないが、
部隊が色々と分かれていて自分たちが全体の中でどういうポジションなのはわからないと思われる。
“個”を抹殺する“集団”の怖さは今も変わらないが、
そういったことは頭になく命を懸ける男たちは敵でも凄い。
食うか食われるか。
生きるか死ぬか。
アフリカ、南米、東南アジア、中央アジア、朝鮮半島の“内戦”などで今も続いているわけだが、
正邪を超えてほんとうの死闘は神々しくすらある。

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シンプル&ストレートかつベタな展開だからこそベタな音楽が活きている。
大仰な部分は大仰に、切ない部分は切なく、
うるさすぎないオーケストラ演奏などで守り立てる。

エキサイティングなエンタテインメント大作である。


★映画『神弓 KAMIYUMI』
2011年/韓国/カラー/スコープサイズ/SRD/2時間2分/原題:최종병기 활[最終兵器 弓]
8月25日(土)、
シネマート新宿、シネマート六本木、 ヒューマントラストシネマ有楽町、シネマート心斎橋ほか
全国ロードショー。
© 2011 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved
http://kamiyumi.jp/


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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