なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

SHADOWS FALL『Fire From The Sky』

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アメリカン・メタルコアの代表的なバンドの一つとされるが、
“ニュー・ウェイヴ・オブ・アメリカン・ヘヴィ・メタル”と呼びたいマサチューセッツ州出身の5人組が
『Retribution』以来約3年ぶりに出した7作目のオリジナル・アルバム。
米国などでは5月にリリースした作品で、
すっかり私的ヘヴィ・ローテーションになっている。


プロデュースは悪友いや盟友のアダム・デュトキエヴィッチ(KILLSWITCH ENGAGE)。
97年のデビュー作『Somber Eyes To The Sky』も手掛けたが、
SHADOWS FALLのアルバムを全面的にプロデュース&録音したのは初めてだ。
バランス感覚に長けているアダムの起用も功を奏し、
方向性は不変ながらも微妙に作風の幅が広がっていて聴き応えありありだ。

ミディアム・テンポを上手く使いながらヘヴィ&メロディアス&ラフwithキャッチーで
たまにスラッシーな“SHADOWS FALL節”に磨きをかけ、
全体的に硬質かつ重くアタック感の強いサウンドに仕上がっている。
イントロが長くてインスト・ナンバーと勘違いする曲やスロー・パートが目立つ曲など、
意表を突く展開の曲や今までにないタイプの曲もけっこう入っている。
珍しくちょろりとブラスト・ビートを入れたり
いかにものデス・メタリックなリフをちょろりと混ぜたりするなど、
一ひねりしたアレンジも楽しめる。
本編10曲すべてフック十分の楽曲クオリティも非常に高い。

17年活動しているにもかかわらず洗練されすぎないところもチャーミングだ。
簡潔に泣くギター・ソロはレコーディングにおいては進歩しているが、
SHADOWS FALLはいい意味でgrow upしない。
成長し切らずにほとんどガキのまんま。
やっぱりメンバーが自嘲もした“white trash(貧乏白人)”な[バンドとしての]育ちの悪さが、
イイ意味で出ている荒っぽさがたまらない。
きちんとプロデュースされたレコーディングにおいてもそれが隠せないところも素晴らしいのだ。

メンバーが以前やっていたバンドのAFTERSHOCKやOVERCASTは
どちらかと言えばニュースクール・ハードコアのフィールドで活動していた。
けどSHADOWS FALLは大酒飲みのメンバーが多いし、
ウルトラ・ロング・ドレッド・ヘアーが示すようにブライアン・フェア(vo)は
歌詞も含めてラスタから影響を受けている。
そういった“ゆるさ”こそがSHADOWS FALLの肝だと本作のサウンドを聴いて再認識した。
ある意味OBITUARYと同じく色々な面で根っこがロックンロールなのである。

独特の入り方をするバッキング・ヴォーカルも冴えわたる。
本作でもそれを担当しているマット・バックハンド(g)はナチュラル・ヴォイスも多いが、
アメリカン・メタルコア・スタイルのバンドがこぞってやるクリーンな歌唱を
いい意味でリード・ヴォーカリストがあまりやらない(やれない説も有力)ところもSHADOWS FALLの魅力だ。
その張本人のブライアン・フェアは、
メロディアスに歌うパートでもパンク・バンド以上に強引に歌い倒す歌唱が相変わらずで嬉しい。
たとえほとんどラフな力技になろうが、
またまたイイ意味でまったく威圧的ではないところにもブライアンの本質が表れている。
音と同じくメタルに多いタイトなヴォーカリゼイションとは一線を画し、
不揃いであることが人間の感情表現として自然なのだ。

ジャケットをはじめとして12ページのブックレットのアートワークはいつになくメッセージ性を感じさせるが、
歌詞も同様である。
ストレートにポリティカルな歌を叩きつける言葉とは違うし何かを糾弾するわけでもない。
SHADOWS FALLは物事が複雑に絡まっていることを肉体でわかっている。
だから人間そのものの内面も見る。
むろんエゴ丸出しで自分の国のことだけを歌っているわけではなく普遍的。
外向き志向でサウンドとともに閉塞感を突き抜ける。

示唆に富むいいこと歌っている点もひっくるめて惚れ直す一枚。


★SHADOWS FALL『Fire From The Sky』(SPINEFARM SPINE707439)CD
ボーナス・トラックのスタジオ録音の2曲(本編の曲のデモやリミックス等ではない別曲)と
ライヴ・テイクの2曲を含む約59分14曲入り。
ますます浮世離れしたブライアンをはじめとして、
メンバー5人中4人が長髪でカタギには見えないパッケージ裏の写真のルックスもナイス!である。


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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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