なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

BARONESS『Yellow & Green』

BARONESS_convert_20120811122908.jpg


米国南部ジョージア州を拠点とする“新世代ヘヴィ・ロック・バンド”による
約3年ぶりの3作目のオリジナル・フル・アルバム。

METALLICAのマネージメントのQプライムと契約を交わしたとはいえ、
7月半ばにリリースされた本国アメリカの総合チャートの“ビルボード200”で30位まで上昇したのは
BARONESS自身の力にほかならない。
レヴューを書く時ぼくもよく引き合いに出すバンドの一つになっているように影響力が大きいバンドで、
メタル云々以前にロック最前線のバンドと言い切れる。


『Red Album』(2007年)、『Blue Record』(2009年)に続くアルバムのタイトルが『Yellow & Green』とは、
ワイルドでありながらアーティスティックなセンスも内包したBARONESSならではだ。
ディスク1が約40分9曲入りで
ディスク2が約36分9曲入り。
トータル・タイム75分強だから1枚のCDにも収まるヴォリュームだが、
BARONESSとしては“yellow”と“green”とで盤を分けたかったのだろう。
たやすく一枚に収めるなんてしたくない気持ちが伝わってくる大作である。

ベーシスト不在のまま3人でのレコーディングになったが(現在は新ベーシスト加入)、
まったく問題無しである。
BARONESSと共にプロデュースしたのは前作に引き続きジョン・コングルトン。
オルタナティヴ・ロック系のバンドのPAPER CHASEの中心メンバーだったことでも知られるが、
BLACK MOUNTAINも手掛けている。

たおやかなオーガニック・サイケデリック感覚に薄っすらと覆われている。
まろやかですらある音の艶が潤いを増しながら光沢を放ち、
ずっしりとはらわたに響くダイナミックなビートが体内を浄化し、
ほとんどツイン・ヴォーカルでハーモニーも絶妙のナチュラルな歌唱が言霊を呼び起こす。
即効性で一気に押し倒す作品ではない。
正直ぼくも最初は“アレッ・・・・”と思ったのだが、
じっくりとじっくりとじっくりとじっくりと涙腺をゆるませていく恐るべきアルバムである。
ある意味“同志”のMASTODONの昨年のアルバム『The Hunter』以上に歌も目立つ作りだが、
開かれた感覚がさらに広がった“ロック・コスモス”のサウンドスケープに酔いしれるしかない。

もともとメタル!メタル!した音のバンドではなかったとはいえ、
今回は特にエッジの尖ったメタリックな音はあまり聞こえてこない。
メランコリックなロマンあふれる作風に磨きをかけ、
土の香りの美しい音色に痺れるばかりだ。
まったりしたトーンながらも四つ打ちを絡めたポップな曲やゆっくりと疾走する曲も含めて、
ゆっくりと空間の揺るがすうねりに身をまかせたくなる。

既成の細かいジャンルに括りにくい
BARONESS流の“ヘヴィ・ミュージック進化形”のサウンドを推し進めながら、
伝統的なアメリカン・ロックの鉱脈を掘り下げたかのようなアルバムでもある。
QUICKSILVER MESSENGER SERVICEから始まり、
それこそEAGLESやDOOBIE BROTHERS、ALLMAN BROTHERS BAND、LYNYRD SKYNYRDすら
チラリと頭をかすめる。
いわゆるアメリカのルーツ・ミュージックがエクストリーム・メタルを通過した後…みたいな響きも呈し、
とりわけブルースの軋みが研ぎ澄まされた風を切るツイン・ギターの音色がたまらない。

歌心が溢れ出る楽器も泣けるほどリリカルで、
4曲のインスト・ナンバーもしっかりと“歌って”いる。
楽器と共振してヴォーカルもたいへんデリケイトである。
“人間は業を背負った生き物”みたいなニュアンスも聞こえてきて、
特に“有徳と不道徳の間のラインを歩く”と歌う曲「The Line Between」の言葉が心に響く。
もうどいつもこいつもカッコよすぎる歌詞なのだ。
むろん24ページのブックレットとスリップケースのアートワーク画は
様々なバンドのジャケットで大活躍のジョン・ペイズリー(vo、g、b他)によるもの。
リアリズムがファンタジーでふくらんだ重厚な味わいの世界観を濃厚に高めている。

伝統を踏まえながらアメリカン・ロックを2012年に再定義して塗り替えた
壮大なるヘヴィ・ロック抒情詩。
音楽に耳を傾けることのよろこびと、
ロックに浸ることのしあわせを感じる。
じっくり向き合いたいアルバムであり、
未来に突き抜けるこの作品に感動を覚えずにはいられない。


★バロネス『イエロー・アンド・グリーン』(リラプス・ジャパン YSCY-1242)2CD
華麗なるデザインのエンボス加工のスリップケース付(ちなみに↑の画像はブックレットの表紙)。
日本盤は歌詞の和訳付で値段はリラプス・ジャパンの通常の1枚ものCDと同じだ。


スポンサーサイト

コメント

先日購入してヘビーローテーションで聴いてます。
このアルバム、個人的にはHR/HMの歴史に残るような名作だと思っています。
メンバーは先日イギリスでバス事故に遭ったようですが、早く元気になってライブを日本で演っていただきたいですね。

Korokuさん、書き込みありがとうございます。
一般のロック・ファンにも十分アピールするアルバムだと思いますが、一部を除く日本での黙殺ぶりに対して毎度のことながら激怒の嵐です。
こういうアルバムを出した直後だけに事故はショックですが、ひとまずメンバー生存ということでホッとしました。早く再起できることを心から祈ります。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL
http://hardasarock.blog54.fc2.com/tb.php/817-61d26ba6

 | HOME | 

文字サイズの変更

プロフィール

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (9)
HEAVY ROCK (237)
JOB/WORK (285)
映画 (235)
PUNK ROCK/HARDCORE (0)
METAL (41)
METAL/HARDCORE (47)
PUNK/HARDCORE (395)
EXTREME METAL (127)
UNDERGROUND? (84)
ALTERNATIVE ROCK/NEW WAVE (117)
FEMALE SINGER (41)
POPULAR MUSIC (24)
ROCK (76)
本 (9)

FC2カウンター

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード

FC2Ad

Template by たけやん