なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

CAN『The Lost Tapes』

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ドイツのクラウト・ロックを代表するバンドの68~77年レコーディングの未発表音源30曲をまとめた
CD3枚組のボックス・セット。

ディスク1が約68分9曲入り、
ディスク2が約60分10曲入り、
ディスク3が約69分11曲入りだ。
録音時期によってアバウトに
マルコム・ムーニーのヴォーカルがたっぷりの“初期”
ダモ・スズキのヴォーカルが聴ける“中期”
インスト・パートが主体の“後期”
を3枚のCDに分けた作りである。


これまでも未発表ものが何度もリリースされてきたバンドだが、
“まだこんなに眠っていたのか!”と思わずにはいられないお宝の連続だ。
ぼくにとっては昔からオリジナル・アルバムよりも発掘ものの方がエキサイティングなバンドだったが、
今回もその期待を裏切らないグレイトな作り。
マスタリングがいいのか鳴らしている楽器の輪郭までが見えてくる音質もグレイトである。
ダモ・スズキがシンガーの時代のライヴ音源も臨場感抜群だ。

CANから影響を受けたポスト・ロック勢との接点も見えてくるミニマルな曲が続くが、
炭酸が抜けたノンアルコール・ビールみたいな味気ないやつじゃない。
“如才ありあり”の臭みに嗅覚からトリップできる。
肉体的でありながら頓智も利いている。
うわべだけ拝借して命を抜いて無臭で仕上げた潔癖症のやつは聴いてらんなくなる。
ゆるゆるだが締めるところは締めてビシッ!としている。
パーティなんか知ったこっちゃない。
ただ一人で何昼夜も踊り狂うデリケイトなサウンドに心身が覚醒される。

英語の歌詞ながらも同時代の和製ロックのテイストを注射したダモ・スズキが歌うテイクもいいが、
初代シンガーの黒人マルコム・ムーニー在籍時の68~69年の音源が1/3を占めるのも嬉しい。
徹頭徹尾とにかく妖しいワイルドな歌唱で後のCANよりサイケデリックでありロックしているのだ。
いきなり69年の“CAN流”のサーフ・ロックでもう大気圏外に飛べる。
匂いからなにから伝統的なブルース~ロックンロールを踏まえ、
そこに現代音楽から何からブレンドして無限大にふくらませ、
「Sister Ray」をはじめとして
VELVET UNDERGROUNDの同時代の反復チューンと共振していたこともよくわかる。
ディスク3で目立つ洒落たファンクや透き通ったサイケデリック・ナンバー、
さらにインストのアシッド・フォーク・チューンは、
いわゆるシスコ・サウンドなどの同時代のカリフォルニア勢への返答にも聞こえる。

後のロックのネタの宝庫でもある。
もちろん本作の曲は未発表だからパクられたわけではない。
でもたとえば、
昔ベスト盤『Cannibalism』のライナーをリーダーのピート・シェリーが書いたBUZZCOCKSが、
キャッチーなシングルとは別に初期のアルバムに必ず入れていた反復ナンバーを思い出す。
今回の音源はCANがポスト・パンクの原型であることもはっきりと示している。
特にマルコム・ムーニーが在籍した初期の野放図な曲の数々は、
初期のPiLやファースト・アルバム『Y』の頃のThe POP GROUPもさることながら、
JOY DIVISION~NEW ORDERの曲のヒントがたくさん鳴っている。
JOY DIVISIONのシンガーだった故イアン・カーティスが“CAN狂”だったことも納得できるのだ。


10”レコードが収納されているのか?と錯覚させる約25センチ四方の箱には
味のある紙質で箱と同サイズの28ページの豪華ブックレットも封入。
英語とドイツでライナーが書かれているが、
少なくても前者は平易な言葉で綴られていて読みやすい。
そんな至れり尽くせりの作りも含めて問答無用でファン必携である。


★CAN『The Lost Tapes』(SPOON CDSPOON55)3CD


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コメント

同じくまだあるのかっていう感じでしたね(笑)。しかも内容が良いのが驚きです。ここ数年の(CANとは別名義ですが)発掘音源では1番だと思います。ピートシェリーが書いたライナー懐かしいです。デパートが中古レコードを昔売ってて、外回り中でしたがカニバリズムを300円で買ったのがスタートでした。ピートシェリーが風呂場で"YOU DOO RIGHT」を朝まで聴いたっていうのが印象深いです。バズコックスの反復ナンバーもかなり好きです。

かくさん、書き込みありがとうございます。
通常のCDケース大のパッケージかと思っていたらオープンリール大でビックリです。ぼくも大昔最初に中古レコードを買ったのはデパートの特売で、中古レコードの存在をそこで初めて知りました。
カニバリズム300円はお買い得でしたね。ぼくは新品で、確かキング・レコードのLPです。当時ピート・シェリーが文章書いていてビックリしました。LIBERTY Recordsのレーベル・メイトという縁で書いたというのもあったのかもしれません。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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