なめブログ

パンク/ハードコア/ロックをはじめとする音楽のほか映画などにも触れてゆくナメの実験室

奇形児『奇形児』『Plastic Scandal』

現在進行形で活動中のパンク・バンド奇形児の最初の2枚がレコードでリイシューされている。
当時The STALINのギタリスト/ソングライターだったタムが主宰したADK Recordsからのリリースで、
昨年他界したタムに対する奇形児の追悼の思いも込められた再発のようである。


ADK-00E-350.jpg
★奇形児『奇形児』(ADK ADK-00E)7”EP
当時はソノシートでリリースされた3曲入りのデビュー盤。

83年の1月26日の録音だから、
2回ライヴをやっただけで早くもレコーディングに突入したことになる。
その約2週間後の2月11日に東京・立川の38AVENUEでやった3回目のライヴはぼくも観ている。
38AVENUEは確か今の立川のダイエーのあたりにあった狭いライヴ・ハウスで、
当日のメイン・アクトのThe STALINで歌っていた遠藤ミチロウによれば
あの吉本隆明も観に来ていたという。
それはともかくライヴで衝撃を受けて
翌月ADK Records第一弾としてリリースされたこの盤が楽しみだったにもかかわらず、
即完売で買えなくてぼくも持ってないから現物との比較はできないが、
ソノシートではなくレコードである他はアートワークも含めてオリジナル盤に忠実な作りのようだ。

リマスタリングされた編集盤CDほど高音域はあまり出てないが、
ゴツゴツした生肉の塊みたいな質感の音がレコードでリイシューすることの必然性を告げている。
STRANGLERS直系のベースを核にすさまじい音だ。
問答無用の名曲「迷信」、
奇形児流の「I Wanna Be Your Dog」解釈とも言える「奴隷志願」、
カオティック・パンク・ロック・チューン「憤懣(Live)」という、
歌詞も含めて情念がトグロを巻く奇形児を象徴する3曲である。

三つ折りジャケットの硬めの紙質も当時の日本の自主制作パンク・レコードっぽい。
もう一つ、レコード盤自体も気になった。
重さや厚さなどレコード盤にも様々な種類があるわけだが、
今回の『奇形児』のリイシュー・レコードには薄く柔らかめの盤が使われている。
オリジナル盤のソノシートに近い質感のvinylということを意識したかのようで、
まさにこだわりのリイシューなのだ。


ADK-06E-300.jpg
★奇形児『Plastic Scandal』(同 ADK-06E)7”EP
83年の9月にリリースされた2枚目。

手作り感覚を残しつつイイ意味でレコーディング技術が向上したことにより、
奇形児が内包する多彩な音楽性が浮き彫りになった作品だ。
粗削りながらも楽器の分離が良くなって、
レコードならではの奥行きと“歯ごたえ”のある音で剥き身の奇形児が味わえる。

“スカ・ハード・パンク”とも言いたくなる「Plastic Scandal」、
ポゴ・ダンス必至の「1983」、
歯切れのいい音作りが光る「煩悶」、
静かな円舞曲「孤独のワルツ」といった具合に、
ヴァラエティに富む楽曲は今聴いてもシャープで瑞々しい。
奇形児というとドロドロしたイメージも強いし実際そういう歌詞も多いわけだが、
彼らの中でも比較的ポップでメロディアスな曲を収めており、
ヘヴィであるにもかかわらず抜けのいいサウンドがたまらない。
奇形児流の“ラヴソング”にふさわしい曲と音なのである。

こちらのレコードは輸入盤も含めて日本でも7"盤でよく流通していると思しき厚さと重さの盤が使われている。
アートワーク等もオリジナル盤を復刻し、
たくさんのメンバー写真で彩ったインナーバッグ(レコード袋)と
ファースト同様に優しいトーンの手書き書体の歌詞カードも封入の作りだ。


2枚ともADKの主宰者だったタムがレコーディング・プロデュース、ミックスを手がけた点も特筆したい。
CRASS Recordsのレコーディングのほとんどをジョン・ローダーが手掛けたのと同じような感じで、
ADK Recordsの作品のナマな音質の一貫性はタム自身が録音したことも大きい
(『Plastic Scandal』の方はヒロシ(g)もエンジニアを務めている)。
レコーディング・データがしっかりクレジットされているところにも
当時のタムのこだわりが見え隠れしていて興味深い。


★奇形児『奇形児』(ADK ADK-00E)7”EP
★同上『Plastic Scandal』(同 ADK-06E)7”EP


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コメント

良い作品が再発されたと思っています!

リアルタイムではない私には涙物です。


どんどん色々なバンドが再発をして、少しでも「レア盤」が無くなれば何て思いました。

ITOさん、書き込みありがとうございます。
今のインターネット状況だと曲を聞くだけならどうにかなったりしますが、こういう<音そのものが奇形児そのもの>(特にファースト)みたいなテイストは、現物でないと味わえません。五感で感じるのです。
CDなどでまとめてというのも悪くないですが、作品そのもの、一曲一曲にしっかり向き合う時間も大切にしたいです。小難しい言葉を使っている作品ではないですし。真正面からしっかり向き合うことはことは物事の基本です。

今1番至近距離にあるのがこの2枚です。それだけ針を落としてます。ぼくは色んな事情でこの2枚を売ってしまいました。宝物が手元に戻ってきた感覚です。1stを聴いていてシバさんのオカズがカッコイイなとか、憤懣は当時は何やってんのかほとんどわからなかった(ソノシートっていうのもありましたが、ヤスさんのヴォーカルやメンバーの気合いは充分に伝わってました)所がクッキリしていたり。2ndは曲のクレジットやアートワークを見ても4人のバンドっていう所を大切にしてるんだなぁと当時は思っていましたが、改めて奇形児には代表曲が多いと感じてます。ファンですし。3rdのライナーによると、この2ndのリリースをタムさんは誇りに思っていたようですね。それは内容だけでなくジャケやアートワーク、歌詞カードを見ればよくわかります。レコードでこうやって聴くほうが感じますね。他のバンドの再発にはそれほど感じない事です。日曜のライブも楽しみにしています。

かくさん、書き込みありがとうございます。
ファーストは長年テープで聴いていたので音質に関してはどうこう言えませんが、ソノシートとレコードとではやはりかなり違うでしょう。そういえばサードにはライナーがついていましたね。特にセカンドはトータルで日本のインディ・レコードを代表する一枚とも言えますからタムの思いもうなずけます。曲をしっかり作り丁寧にレコーディングしていたことが伝わってきます。
日曜のライヴってなんですか? 最近ほんと情報が追いついていけなくて・・・いずれにしろ行けないですが。

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行川和彦

Author:行川和彦
                                             Hard as a Rockを座右の銘とする、
音楽文士&パンクの弁護人。

『パンク・ロック/ハードコア・ディスク・ガイド 1975-2003』(2004年~監修本)
『パンク・ロック/ハードコア史』(2007年)
『パンク・ロック/ハードコアの名盤100』(2010年)
を発表<いずれもリットーミュージック刊>。

ミュージック・マガジン、レコード・コレクターズ、CDジャーナル、プレイヤー、ギター・マガジン、ベース・マガジン、クロスビート、EL ZINEなどで執筆中。
                                

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